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『覇王の畑 ―だいすけべな原情と金金坩堝―』  作者: 沼口ちるの


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1/3

導入部

「……ふぅ。これで今日のノルマは終わりか」


34歳の覇王――いや、今は「異世界のはずれの森」に住むただの青年、ケンジは、額の汗を拭いながら愛用の鍬を地面に立てた。灼熱の太陽が、彼が切り開いた黄金色の畑に容赦なく照りつける。


かつて、彼は世界を掌中に収めるほどの力を持っていた。前世で「伝説のシステムデバッガー」として、この世界のシステムをたった13秒でハックし、最強の魔法も剣技も手に入れた男。その力で世界征服すら容易かったはずだ。しかし、彼が選んだのは、美少女エルフの嫁たちと一緒に、土を愛で、水をやり、静かに暮らす「農業」という道だった。


ケンジの目の前には、見渡す限りの黄金色の畑が広がっていた。そこには、地球ではありえないほどの糖度を誇る、つややかな「爆乳トマト」がたわわに実っている。その名の通り、今にも弾けそうなほど丸々と膨らんだ果実は、みずみずしい赤色を湛え、陽光を反射して輝いていた。隣には、煮込むとトロトロに溶けて食べる者を昇天させるという「だいすけべ大根」が、真っ白な肌を土から覗かせている。その豊満な姿は、ケンジがこの土に注ぎ込んだ惜しみない愛情を雄弁に物語っていた。


この奇妙な作物たちは、ケンジがこの世界で初めて耕した畑で育ったものだ。彼の力によって「調整」された土壌は、生命の原初の力を呼び覚ます。そう、この世界における「だいすけべ」とは、単なる卑猥な言葉ではない。それは、生命が持つ根源的な豊かさ、際限なきエネルギー、そして触れる者を魅了してやまない「摂理そのもの」を指す、ケンジ独自の隠語だった。


「ケンジ様ぁ! 今日のお昼は、獲れたての聖なるジャガイモのポテトサラダですよぉ!」


キッチンから弾むような声が聞こえ、一人の少女が駆け寄ってきた。この村の看板娘、フェリスだ。彼女の揺れるエプロン。太陽の光を浴びて輝く金色の髪。健康的な笑顔が、周囲の風景に溶け込むように眩しい。その姿に、ケンジの胸の奥で、静かに燻っていた「農情」が、再び熱く13秒で反応する。


血生臭い戦いなど、もういらない。 世界を征服する力など、ただの虚飾に過ぎなかった。 ここにあるのは、穏やかな陽光と、自分を慕う温かい手。 そして、自分が育てた生命を噛みしめる喜び。


ケンジはフェリスに優しく微笑みかけた。


「ああ、今行くよ、フェリス。……やっぱり、異世界の土は、命の味がして最高だな」


彼は心からそう感じていた。その瞳には、もはや世界征服の野望などない。 ただ、明日もこの美しい村で、誰よりも豊かに、誰よりもこの「だいすけべなスローライフ」を満喫するという、揺るぎない確信だけが宿っていた。


彼の傍らにそっと立つフェリスもまた、ケンジと同じように、黄金色の畑を見つめていた。 彼女の眼差しもまた、この大地が持つ「豊かさ」に魅せられているようだった。 しかし、その瞳の奥底には、まだ誰も知らない、ケンジにだけ向けられた、秘めたる「だいすけべ」な想いが隠されていることを、ケンジはまだ知る由もなかった。

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