ドラゴ料理長の課題
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黒煙が吹き荒れてる噴火口に竜が倒れている。切断された片翼がマグマに飲み込まれていく。
煤にまみれ、傷から血を流し、肩で息をするリンリとバハム。どちらも格段に背が高くなり、立派な青年と女性になっている。
「よしっ。よーしっ。邪竜を討ち取ったぞっ。ガハハハ」
「バハム、竜を噴火口から引き揚げます、手伝ってください」
二人で邪竜の尾を引っ張り、少しずつ引きずって噴火口を登る。
「それにしても、ドラゴ料理長も厳しい課題を出すものだ。邪竜は魔王でもてこずる相手なのに、それを狩ってこいなどと」
「食材の調達も料理人の仕事のうちですから。それに料理長は私が死なないようにちゃんと配慮してくれました」
「その配慮が俺というわけか」
噴火口から出た竜の体を切り分け、縄で縛り、保存用の革袋にしまっていくリンリ。一部の肉は、串刺しにし、炎にあぶる。
「バハム、これを」
串刺し肉に特製のたれをかけ、バハムに渡す。
「おおっ、いただこう」
串にかぶりつき、肉を引き抜き、食らうバハム。リンリも同じように串刺し肉を食べる。すると、傷口から流れ出ていた血が凝固した。
「今回ばかりはあなたがいてくれて助かりました。ありがとう」
「何だ? お前が素直に礼を言うとは珍しいな。らしくないじゃないか」
リンリは串刺し肉を口から離し、ぽつりと言った。
「最近、料理長の様子が、おかしいのです」
「ほう?」
「私やティアに課題を出したり、味見をしたりするばかりで、本人はあまり料理を作っていません。それに、厨房から出て短い休憩をたくさん取っています。以前ならこんなことはありませんでした。あの方は、誰よりも長く厨房に立ち、誰よりも多くの料理を作っていました」
「お前たちが成長したから仕事を任しているだけのことではないのか?」
「そうだといいのですが」
リンリは口を開きかけて、閉じ、また開いた。
「そう心配するな」
バハムがリンリの肩に手を置いて言う。
「ドラゴは強い男だ。なにせ魔王城筆頭料理人だからな」
「ええ」
そう答えたリンリの声音は少し明るさを帯びていた。
「そうだ、帰りにキレイラ魔王領に寄って帰ろう。勝利の祝杯をあげるワインを買って帰ろうではないか」
「そんなお金あるのですか?」
「ない。だから邪竜の肉と交換といこう」
「あとで料理長に怒られても知りませんからね」
「ガハハ。そのときはそのときだ」
肉を詰め込んだ大きな革袋を背負って、二人は火煙山を下りて行った。
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