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魔王の愛した料理人  作者: 仙葉康大
第三章 ~ミノタウロスの牛肉カレー~
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別れ

 広場に戻り、バジリスクの死体に縮小魔法をかけ、革袋にしまう。あとは戻るだけだ。


 帰路は気楽なものだった。バジリスクを倒して気が大きくなっていたのだろう。魔獣に遭遇しても緊張感は生まれなかった。むしろ、ベルゼとシンはおしゃべりを楽しんでいるようだった。


「シンはこれからも冒険者を続けていくのか?」

「そのつもりです。ベルたちは?」

「ぼくらは、そうだな」


 ベルゼが言葉を濁したのは、シンからパーティーを組まないか提案されるのを恐れてのことだろう。それを察知してリンリは口を挟んだ。


「バジリスクという大物を倒せましたし、報酬もたくさんいただけるので、しばらくは休暇を取ってのんびりしようと思います」


「それはうらやましい。ゆっくり体を休めてください」


 遺跡を出ると、太陽がまぶしかった。


 昇降台に乗り、大穴の上まで魔法で揚げてもらう。シンもベルも言葉が少なくなっていた。それは別れが近いことを意味していた。


 冒険者ギルドの建物の前で、シンが立ち止まった。


「私はギルドに依頼完了の報告をしてきます。お二人は?」

「私たちはギルドからの依頼ではなく、個人から依頼を受けたので、その方のもとに向かいます」

「では、ここでお別れですね」


 シンはロスの頭を撫で、ベルゼの手を握り、最後にリンリの手を握り、首を深く垂れた。


「ありがとうございました。あなた方のおかげで死なずにすみました」

「いやいや礼を言うのはこっちだ。ロスをバジリスクから守ってくれてありがとう。感謝するぞ」

「いつかまたどこかでお会いできるといいのですが」


 シンの言葉にリンリは心の中で首をふった。私たちは魔族で、シンは人間だ。再会などすべきではない。


「そうですね。いつか、また、どこかで」

「うむ。縁があったらまた会おう」


 手を振り、別れ、リンリたちは遺跡の街から立ち去った。バジリスクの亡骸とともに。


**************************************************************


 数日後、冒険者たちがバジリスクの不在に気づき、誰かが王蛇を討伐したのだという噂が流れ始める。帝国もギルドも調査に乗り出したが、どれだけ聞きまわっても、バジリスクを殺した者についての情報は、一切、出てこなかった。

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