別れ
広場に戻り、バジリスクの死体に縮小魔法をかけ、革袋にしまう。あとは戻るだけだ。
帰路は気楽なものだった。バジリスクを倒して気が大きくなっていたのだろう。魔獣に遭遇しても緊張感は生まれなかった。むしろ、ベルゼとシンはおしゃべりを楽しんでいるようだった。
「シンはこれからも冒険者を続けていくのか?」
「そのつもりです。ベルたちは?」
「ぼくらは、そうだな」
ベルゼが言葉を濁したのは、シンからパーティーを組まないか提案されるのを恐れてのことだろう。それを察知してリンリは口を挟んだ。
「バジリスクという大物を倒せましたし、報酬もたくさんいただけるので、しばらくは休暇を取ってのんびりしようと思います」
「それはうらやましい。ゆっくり体を休めてください」
遺跡を出ると、太陽がまぶしかった。
昇降台に乗り、大穴の上まで魔法で揚げてもらう。シンもベルも言葉が少なくなっていた。それは別れが近いことを意味していた。
冒険者ギルドの建物の前で、シンが立ち止まった。
「私はギルドに依頼完了の報告をしてきます。お二人は?」
「私たちはギルドからの依頼ではなく、個人から依頼を受けたので、その方のもとに向かいます」
「では、ここでお別れですね」
シンはロスの頭を撫で、ベルゼの手を握り、最後にリンリの手を握り、首を深く垂れた。
「ありがとうございました。あなた方のおかげで死なずにすみました」
「いやいや礼を言うのはこっちだ。ロスをバジリスクから守ってくれてありがとう。感謝するぞ」
「いつかまたどこかでお会いできるといいのですが」
シンの言葉にリンリは心の中で首をふった。私たちは魔族で、シンは人間だ。再会などすべきではない。
「そうですね。いつか、また、どこかで」
「うむ。縁があったらまた会おう」
手を振り、別れ、リンリたちは遺跡の街から立ち去った。バジリスクの亡骸とともに。
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数日後、冒険者たちがバジリスクの不在に気づき、誰かが王蛇を討伐したのだという噂が流れ始める。帝国もギルドも調査に乗り出したが、どれだけ聞きまわっても、バジリスクを殺した者についての情報は、一切、出てこなかった。




