料理長が不在のときは
厨房に戻り、迷いの森に出張することを告げると、ティアが「はいはいはい」と手をあげ、飛び跳ねた。
「それ、私も一緒に行きたいです」
リンリはティアをにらむ。しかし、ティアはまったくひるまない。
「迷いの森でしか取れない木の実や植物を採取するチャンスじゃないですか。それに、私、ロスちゃんに乗ったことないんです。お願いします、リンリ料理長。私も同行させてください」
「ダメです」
「そんなー。なんでですか? ベルゼ様は、同行者は二人までならいいっておっしゃったんですよね?」
「ティア・オーシャンテリア。あなたはこの城の副料理長です。その意味をまるでわかっていないようですね?」
「わかってますよ。つまり、私は、リンリ料理長に次ぐ料理人だということです」
「違います」
「ぷぷっ。違うって言われてやんの」
ジャンが口に手を当てて笑う。それをミレイが「笑わないの」と小声でたしなめる。
「料理長が不在のときは、副料理長であるあなたが、料理長に代わり、バアル城及び魔王ベルゼ・バアル領全域の食を守らないといけないのです」
「じゃ、じゃあ、リンリ料理長が城に残って私が行くっていうのは?」
「料理長がベル坊とのお出かけを他の奴にゆずるわけねえだろ」
要らぬことを言うガウスにリンリはきつい目線を送る。微笑とも苦笑ともとれない表情のアイーラが発言する。
「お戻りはいつ頃になるでしょうか?」
「迷いの森の魔女の依頼内容次第ですが、即日でこなせるような依頼ではないでしょうね」
「二日後の食材の買い出し、もしリンリ長が不在の場合は、ティ、ティア副料理長が財布を握るだか?」
ブルゴが青ざめて言った。
「そうなります。ただし、そうなった場合は、アイーラとブルゴが必ず同行し、無駄遣いをしないか見張ること」
「ちょ、ちょっと、料理長もブルゴも私を何だと思っているんですか。無駄遣いなんかしませんよ。あ、でも、ちょっと気になってるフライパンとか大鍋とかあったりなかったり。まあ、おいしい料理を作るためなら必要経費ですよね?」
「現在、バアル城は財政難です。無駄遣いは許されません」
「がーん」
口を大げさに開き、がっかりするティアに正対し、リンリは言う。
「私が不在の間、頼みましたよ、ティア副料理長」
ティアはまぶたを下ろしつつ、息を吐き、それから、胸を張りつつ両目をかっぴらいた。
「お任せくださいっ、リンリ料理長」
リンリはうなずくと、ジャン、ミレイ、ブルゴ、ノン、ガウス、アイーラにもティアを補佐するよう伝え、旅の支度を整えるために食糧庫へと向かった。




