エピローグ ある日の藤倉咲那
ショートストーリー1
この私、藤倉咲那は、合コンというものに参加しているのでありました。
「ウェエエェーイ! 咲那ちゃん飲んでるぅ?」
会っていきなり名前呼びするウェイな男たちと一緒なのですが。
正直言って、このノリは苦手です。
「いえ、お酒弱いので」
間違って酔うと何されるか分からないので、ここは飲めないことにする一択ですよね。
「咲那ちゃん、ノリ悪いよお! ほら、一気!」
「だから飲めませんって」
「飲もうよお! 飲めば分かるさ、行くぞぉおおお!」
「うっわ……」
ノリだけで全てを持っていこうとするウェイ系男を無視して視線をズラすと、反対側の席に座っている友人の茉奈美が手を合わせて『ごめん』とやっている。
そうです。この合コンを企画したのは茉奈美なのです。まさかこんな事態になるとは思わなかったのですが。
(はぁ……疲れる。新しい恋を見つけようと合コンに出てみれば、まさか犬飼先輩の良さを再発見してしまうだなんて。あの安心感は他の男では味わえないっての)
そんなことを考えていても仕方がないのですが、やっぱり先輩を忘れられないのです。
(よし、決めた! 今日も先輩の部屋で飲み直そ!)
私は二次会に誘う男たちを掻き分け、真っ直ぐに先輩の部屋に向かうのでした。
◆ ◇ ◆
ピンポーン! ピンポンピンポーン!
「せんぱぁーい! 来ちゃいました」
いつものように先輩の部屋に突撃しました。
これまたいつものように、先輩は少しだけ困った顔で私を入れてくれるのですが。
「おい、藤倉……」
「せんぱぁい、飲みましょうよぉ」
「またか。てか藤倉って酒弱いだろ」
「先輩なら安心安全です♡」
本当に先輩は誠実で安心な男なんですよね。
でも、先輩が珠美ちゃんとイチャコラしているかと思うと、ちょっとだけ邪魔しちゃいたい気もあるのですけど。
「こんばんはー!」
「わふっ! 咲那ちゃん」
部屋に入ると珠美ちゃんが笑顔で迎えてくれます。嫉妬心が無いわけじゃないのに、珠美ちゃんの顔を見ると心が浄化しちゃうんですよね。
先輩の相手が珠美ちゃんならしょうがないかって。
「ふえーん、珠美ちゃん聞いてよぉ」
「どうしたの?」
「合コン相手の男が最悪でね。それでね」
「わふわふ」
珠美ちゃんに抱きついて話を聞いてもらうと、何故だかとっても心地よくてスッキリしちゃうのです。
「――――てな訳なのぉ!」
「咲那ちゃん、大変だったね」
「やっぱり珠美ちゃん好きぃ♡」
「わふっ、タマミも咲那ちゃん好きぃ♡」
「「ぎゅぅぅぅぅ~っ!」」
二人で抱っこし合う。珠美ちゃんとは仲良しだ。
それを先輩は少しあきれた表情で見つめている。
「先輩、私、決めました!」
「何だ藤倉」
「私、珠美ちゃんと結婚するぅ」
「は?」
「それでこの部屋にお邪魔になりまーす」
「おいこら」
こんな調子で今日も先輩の家に入り浸るのでした。新しい恋を見つけるのは、まだ当分先の話になりそうです。




