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燃えよ!命よ、異世界よ!~俺だけチートスキルないけど頑張って魔王倒します~  作者: ユユノムラ
プロローグ・第一章:憧れに手を伸ばして
1/10

異世界転移は突然に

どう略せばいいのか分からない作品ができてしまった……。初作品です、ぜひ楽しんでいってください。

 1998年、6月23日、突如、都内の高校生三十名ほどが、失踪した。教師の証言によれば、別の部屋に置いてきてしまった授業に必要な道具を取りに行った、およそ十分ほどの時間で忽然と消えてしまったとのこと。

 不思議なのは、痕跡が全くないことだ。教科書なども机に出しっぱなし、脱走の痕跡も見当たらなかった。半ば学級崩壊していたそのクラスで、ただ生徒だけが消えてしまっていた。

 それからおよそ5年周期で、こういった事件が起きていった。ある教室にいた全員が突如として消えてしまう、そんな事件に警察はさじを投げ、迷宮入りの事件として世間では都市伝説のようなものになっていった。





        ***


 昨今流行っている「なろう系」、もっと言えば「異世界転生チートハーレム系」の小説というのは、変身願望の権化ともいえる。

 作者側はこのほうが人気出るから、という理由だとしても、読者側はその小説たちに大きな感情をぶつけている。「違う環境で生きたい」、「特別な長所を持ちたい」、「他よりできる人になりたい」、「女子にモテたい」。

そういった感情はコンプレックスを持ち、周りとの関係を作れなかったりしたいわゆる陰キャたちにとって当たり前のもとなる。現代日本はそう言った人が(昔に比べ)多い。よって人気が出る。

 なぜこんなことを考えているのか、それはもちろん俺自身が陰キャ(そう)だからだ。こんな感じに理知的に考えていないと、時代遅れにオタクを馬鹿にする陽キャたちに馬鹿にされたり、友達が一人もいないという事実に自分では気にしてないと思いつつもメンタルがやられてしまう。

 現在は昼休み。俺が通っている高校は公立高校のくせしてきれいな中庭があったり、購買が充実してたり、屋上が開放していたりするので、昼休みに教室に残る生徒は少ない。それでもうちのクラスは教室愛好家が多いのか、他のクラスに比べて教室いる人は多い、ざっと十五、六人はいる。

 まあたいていの奴の名前は知らんし、相手のほうも俺の名前を覚えている奴はほとんどいないだろう。俺の交友関係はこの程度なのだ。もともと話し上手ではないし、人といるのは……正直言ってあまり楽しいとは思えない性分なのだ。

 いや、壮絶な過去とかは別にない。強いて言えば、幼いころから「周りと仲良くすることを大事にしなさい」と教えられてきたため、仲良くするために周りに合わせまくった結果、そのリバウンドが今の自分に来ているということなのだろう。

 箸をいったん置き、すぐ隣にある窓を見る。校舎の三階というそれなりに高い場所にある窓からは、街並みを一望できる。

 なんてことはない。程よく人口が多い、都市へのアクセスがしやすいだけしか特筆すべき特徴がない普通の住宅街だ。そしてこの学校も、妙に設備が充実していると言えど、普通の学校だ。超実力主義だったり、未来の希望となりえるスーパー高校生を集めているわけでもない。

 そして俺自身も、だ。だからこそ、チートスキルに憧れ、ハーレムに憧れる、陰キャの一人となったのだ。

 俺がチートスキルを持ったら何をしよう。いっそ悪いことに使ってみるか。力で脅迫?王国制服?貸しを積みまくって、間接的に掌握するのもいいかも。やっぱり、こういう想像は楽しいな。

 


 発光、地面が、魔法陣みたいに。それしか認識できなかった。次の瞬間、俺が見ていた場所は教室ではなく、何もない白い空間。いや、一人だけ()()

 白いパーティドレスに、薄い羽衣を着た金髪の女性。容姿は顔も身体も完璧なバランスだ。まさしく天使か女神と言える女性だった。

 その女性は、少し不機嫌な顔で俺に話しかけてきた。


「初めまして、北島彼方(キタジマカナタ)さま。私は≪サーバリオ≫で信仰されている、女神アルテーレです。早速ですが、あなたに頼みたいことがあるのです」


 え、これは……ラノベで何度も見た、異世界転生する前の神様との会合シーンだ!いや、俺は死んでないだろうから転移か。

 それにしても本当にこんなことがあるのか。だがそんな疑問も次のアルテーレの言葉よって消し飛んだ。


「あなた様に魔王を討伐してほしいのです。ほかにも召喚した方は複数名います、そして、召喚した方には、我々の世界の特殊能力≪スキル≫、その強力なもの、チートスキルをお渡しすることになっているのです」


 きたああああ!!

 そう心の中で叫ぶ。興奮度はマックス、リアリティなんて気にならない。チートスキル、俺があこがれ続けたもの、俺のコンプレックスを帳消しにしてなお、おつりがくるレベルの人間としてのアドバンテージ。それが手に入る……。


「が」


 女神がそう続けた。なんだよ。ほかに何かあるのか?



「あなたにチートはありません!」


 は……。

 はああああああああああああああああ!?

 俺の異世界冒険記、その始まりを告げる絶叫だった。




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