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『第六章~イザナギ・ザ・ガンスリンガー』

 ――ファーストアタック。

 ゴゴン! と重なった爆裂音が響き、巨大なマズルブラストが二つ、目の前に光り、銀色の腕にある片側七箇所ずつのヒートスリットが全て真っ赤に光った。

「ダブルヒット! カーネル、ダブルクラッシュ! シーカームーブ! ターゲット、エイト! レンジ、ナイン! ダブルロック! トリガー!」

 残弾は十発で、敵は八匹、距離は九百メートル。


 ――セカンドアタック。

 イザナギの「トリガー」コールで、再び二挺のベッセルが吼えた。二つの大きなマズルフラッシュでヒビだらけのビルの壁が見えた。強烈なリコイルを全て吸収した両腕の、真っ赤なヒートスリットから熱風が吹き出す。

「ダブルヒット! カーネル、ダブルクラッシュ! シーカームーヴ! ターゲット、シックス! レンジ、ナイン!」

 残弾は八発で、敵は六匹。

 テンガロンハットを被り直したコルトが、ベッセルのマズルフラッシュで見えたビルに向けて走り出した。

「右腕さん? 残り六匹だな? 俺はセンターマンだ。右から進むから背中を頼むぜ……あばよ!」

 黒いウエスタンブーツと黒いレザーパンツと、テンガロンハットにポンチョと黒いサングラスのコルトが、腰のガンベルトに収まった二挺のシングルアクションアーミーと共に黒い闇に向かい、リッパーもブーツでハイウェイを蹴った。

「ヤー! スカルマン! ハリアップ! ゴーゴー!」


 ――サードアタック。

「シーカームーヴ! ターゲット、シックス! レンジ、エイト! ダブルロック! トリガー!」

 イザナギが「トリガー」をコールするのと同時に、二挺のベッセルが火を吹いた。爆裂音でベッセルのマズルブラストが輝き、風圧でリッパーの銀髪がオールバックになった。

「ダブルヒット! カーネル、ダブルクラッシュ! シーカームーブ! ターゲット、フォー! レンジ、セブンファイブ! ダブルロック! トリガー!」

 残弾は六発で、敵は四匹、距離は七百五十メートル。

 三発シリンダーから、倍の六発シリンダーに姿を変えた二挺のベッセル。

 四回目のトリガーはリッパーにとって、事実上のファーストアタックでもあった。いつもなら、ここでリロードするか、獲物を持ち替える。

 リッパーは走りながら、暗闇に向けて、四回目のトリガーを一気に引いた。爆音が耳を打ち、周囲が見えた。ヒビだらけのビルの群れだった。

「ダブルヒット! カーネル、ダブルクラッシュ! シーカームーヴ! ターゲット、ツー! レンジ、セブン! ダブルロック! トリガー!」

 リッパーの右腕、アドバンスドFCSのイザナギが「トリガー」をコールして、ベッセルが吼えた。

 残弾は四発で、敵は、ハイブ・ネイキッドが残り二匹、距離は七百メートル。

「警報、カーネル反応。データ照合、ハイブ・ナイフエッジが十。シェルターから出現。三時方向、距離九百五十メートル」

 左腕のイザナミが、敵の増援を捕らえた。走りながらリッパーは、頭で確認する。トリガーは四回で、残弾は四発。

 敵は、ハイブ・ネイキッドが残り二匹と、新たに現れたハイブ・ナイフエッジが十匹、合計十二匹。二挺のベッセルのシリンダーには二発づつ、合計四発のアーマーピアシングが残っている。リッパーはブーツでハイウェイを蹴って走りながら、ビルの壁を見た。夜なので視界は狭いが、出入り口らしき部分が薄っすらと見えた。ドアは床に転がっているらしい。ナイフエッジの姿は見えない。

「イザナギ! カモン!」

「コピー! サーマル・アンド・マグネグラフエイミング! シーカームーヴ! ダブルロック! トリガー!」

 トリガー、マズルフラッシュ。

「ダブルヒット! カーネル、ダブルクラッシュ! シーカームーヴ! ターゲット、ゼロ・アンド・テン! ダブルロック! トリガー!」

 足を止めずにベッセルをビルの壁に向けて、両方のトリガーを引いた。

 ゴゴン! 爆裂音がビルの壁を叩き、両腕のヒートスリットが真っ赤なまま、熱風を吹き出している。

 残弾は左右一発ずつの合計二発で、敵は……。

「ダブルヒット! カーネル、ダブルクラッシュ! シーカームーヴ! ターゲット、エイト! レンジ、スリー!」

 残弾は二発で、敵は八匹で、距離は三百メートル。コンクリート壁を抜いたベッセルの徹甲弾・アーマーピアシングは、ビルの中の二匹のナイフエッジの頭を遮蔽物越しで爆発させた。残ったナイフエッジが真っ黒なビルから出てきた。距離は二百メートル弱。猛速度でリッパーに向かってくる。右手が一メートル半の大きなブレードになっている。お互いが走っているので距離はどんどん縮まる。

「シーカームーブ! レンジ、ワン! ダブルロック! トリガー!」

 イザナギが叫び、ベッセルが吼えた。インドラ・ファイブと同じくらいのマズルフラッシュで、ナイフエッジの白い顔が見えたが、それは粉々になった。頭部を破壊されたナイフエッジは、首から真っ赤な血を噴水のように吹き出しながら走っている。

「ダブルヒット! カーネル、ダブルクラッシュ! シーカームーブ! ターゲット、シックス! レンジ、ツー! ダブルロック! トリガー!」

 イザナギのコールに合わせてリッパーはトリガーを引いた。最後の二発のアーマーピアシングをマズルから叩き出して、ベッセルは二挺とも空になった。

「ダブルヒット! カーネル、ダブルクラッシュ! ダブルベッセル、リロード! ハリアップ!」

 二匹のナイフエッジの頭はハイウェイに飛び散り、残った体はまだ走っている。合計で四匹、頭のないハイブ・ナイフエッジがリッパーに駆け寄ってきた。同じく全速力で走っていたリッパーは、シリンダーを空にしたベッセルのバレル下部の、スタビライザー付きカウンターウエイト底部にある三つの打撃用突起、ショット・プロジェクションで、二匹のナイフエッジの肩関節を殴りつけて破壊してそのまま走る。次の二体のナイフエッジとすれ違う直前、親指でスイッチを押し、グリップ底部から四枚のナイフを飛び出させ、その、ストライクファング・システムと呼ばれる刃物でナイフエッジの胸元を突き刺し、そのまま左右に飛ばした。

 ビルの出入り口前まで一気に走ったリッパーはそこで一旦止まり、ベッセルのシリンダーをスイングアウトさせた。

 両方のマズルを向かい合わせにして、プッシュロッド先端同士をぶつけて、薬莢をシリンダーから弾き出す。シリンダーをスイングアウトさせた状態でベッセルのバレルを肩のガイドレールにぶつけて、小型アームがこれを固定。両手で腰のベルトから片方三発、両方で六発の弾丸を抜いてシリンダーに詰める。同じ動作をもう一度で、二挺のベッセルのシリンダーをライフル弾サイズの徹甲弾・アーマーピアシングで埋めて、再びグリップを握ってアームから外し、両手のベッセルを内側に大きく振る。

 ギン! と音がしてシリンダーは元の位置に納まり、弾丸を再装填したベッセルをビルの入り口に向けた。

 ベッセルの残弾は両方合わせて十二発。

「シーカームーヴ! ターゲット、シックス! レンジ、スリー! ダブルトリプルロック! トリガー!」

 足を止めたままビルの壁に向かって、両方のトリガーを素早く三回引いた。マズルブラストでヒビだらけのビルと入り口が見えた。

「ビンゴ! ダブルトリプルヒット! カーネル、オールクラッシュ! ターゲット、デリート! ヒーハー!」

「警報。カーネル反応六。シェルター開放部より」

「シーカームーヴ! ターゲット、シックス! レンジ、ファイブ! ダブルトリプルロック! トリガー!」

 リッパーは足を止めたまま、再び三回、両方のトリガーを引いた。巨大なマズルフラッシュでそこだけ早朝のようだった。

「ヤー! ダブルトリプルヒット! カーネル、オールクラッシュ! ターゲット、デリート! ダブルベッセル、リロード!」

 イザナギが「リロード」コールしたので、再度、スイングアウトさせた二つシリンダーのプッシュロッドをぶつけて薬莢をはじき出し、二挺を肩で固定してから弾丸を装填し、懐から煙草を抜いて咥えて火を付けてから、グリップを握った。

 両手のベッセルのシリンダーは全て埋まっていて、残弾は合計で十二発。敵は、今の所はナシ。

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