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働け、魔法少女!  作者: 螺子
第一章「宝石王子と魔法少女」編
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2.ヒュー先生の貴族講座

貴族の名前って……難しいですね……


なおこの爵位やら貴族ルール的なものは大体ファンタジーです。

貴族の爵位は時代や国によって扱いが違います。

ひんひんと鼻を押さえながら空中で転げ回っているヒューを横目に、私はこれからの計画を考える。



「うーん、持ってくものとか分かんないんだけど……どうしようかなぁ、」

「……ねえ、遠足じゃないんだよ?あのね、王子の護衛を、本人にバレないように、貴族の学校に通うんだよサヤ??マナーとかルールとか分かってる?????」

「何よ、おしとやかにおほほほって笑えば良いんでしょ?」

「駄目だ分かってない」



ヒューは頭を抱えるような仕草をした後、私にずずいっと近づいて、びしいと指さして来た。

そして彼にしては珍しく真面目な声色で言う。



「あのね、これは失敗が許されないんだよ?クビになれるとかそういう問題じゃない………ヒーローの信用がかかってるんだ。……ヒーローってのは、一種の職業で、会社なんだから。……若いサヤに任せるのは、上も心配してた、だから俺が言うことをしっかり覚えて欲しい。サヤの為だよ、分かってるよね?」



何時になく真剣なその言葉に、唾をごくりと飲む。


……そっか、そうだよね。護衛ってことは、その王子様は命を狙われてるんだ……だったら、私も本気でその人を守らないといけないんだ。



私はウキウキとした気分を少し収めて、コクリと頷いた。



「……分かってる、私、頑張るから。……えっと、それで、守る人はどんな人なの?」

「はいはいちょっと待ってね……」


ヒューは人間でいうとこめかみの辺り(猫だと耳の下)を暫く押さえて考えるような仕草をし始めた。

器用だなぁと思いつつ見ていると、ヒューが顔を上げてハキハキと喋りだす。



「まず基本情報だね。護衛対象はノイエンアール王国の国王の第二王子、第三夫人であり側室の子だけど、王様候補だね。ノイエンアール王国には3人の王子がいて、第一王子と第三王子は正室の子、だけど第三王子は生まれたのが少し遅くて幼い。既に第二夫人が産んだ子である第一王子と、第三夫人が産んだ子である第二王子が王位を巡って争ってる最中に第三王子が生まれたから、このまま臣下として育てられるのかなぁ……ああ、第三夫人が産んだ庶子にも関わらず王様候補なのは、第二王子の背後にノイエンアール王国の大貴族、フロイツハイム公爵を祖父に持ってるからだってさ」


「ちょっと待ってね全然分かんない。呪文……??」



ヒューは豆鉄砲を食らったような顔をすると、恐る恐るといった感じで聞いてきた。

「………サヤ、貴族の爵位は上から言える?」

「……えっと、侯爵、伯爵、男爵、公爵……?」


私が目を泳がせつつ言うと、ヒューは「馬鹿…」とナチュラルに罵って来た。この生意気猫が……

「何ひとつ合ってないんだけど??なんで頭良いのにそういうのポンコツな訳……?」

「うぅ、だって教科書に出てこないんだもん!」

「教科書に出てくることだけを覚えてちゃただの記憶力良い馬鹿だよ……もうちょっとこう……ああもう良いや俺が教える。ほらそこになおれ」

「え、待って授業は?もうすぐでチャイム鳴ると思うけど、」


私は慌ててヒューに言った。

ご飯を食べるのがただでさえ少し遅かったのに、此処まで話し込むなんて予想外だ。

恐らくあと3、4分で、学校中にチャイムが鳴り響くだろう。



「あ、それは大丈夫。サヤは早退した事になったから」

「……へ?」

「ついでにもう休学申請出した。直に受理されると思う」

「仕事が早いよ……」

「出発は明日だからね。ワープするから一瞬」

「え、ちょ、ちょ、展開が早い。持っていく物とかは……?」

「ん?サヤは何も持っていかなくて良いよ。周囲には理由付けて怪しまれないようにするし、ノイエンアール王国で君が通う学校は貴族の育成学校、まぁ日本で言うとこの大学だから。でも厳しいから、スマホとか無いよ」

「……嘘でしょ……??」



私は愕然とした。現代人にスマホ無しで長く過ごせと?

……と、思ったけど、どうせ暇でも適当な動画か友達の投稿見てるだけだったな……まぁ、後で見れるものではあるしそこまで大事じゃないか。



「はい話逸らさない。サヤに貴族の常識叩き込むからね今から、一回で覚えてよ?」

「ヒュー先生……鬼畜……」




「これだけ覚えてよ……ノイエンアール王国の爵位は、上から順に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。準貴族っていうのも居るけど覚えなくて良い。………それでね、公爵は基本的に王族の血縁者で、伯爵以上は土地を持ってるから、ファミリーネームじゃなくて領地の名前で呼ばれるんだよ」

「ほうほう成程……そう言えば、私貴族の学校に行くんだよね?まるきし平民だけど大丈夫?」

「そりゃあ勿論大丈夫じゃないんだよ。王子に近づきつつこっそり護衛するなんて平民じゃ警戒されて近づけないだろうし。……だからサヤ、君は伯爵令嬢だ」

「…………ナンデ……???」

「そのなんで、は令嬢の部分に聞いてる?………ええっとねえ、なんかね、協力者が居るらしいよ。ヒーローって事を知りながらサヤの身分を保証してくれる人……ヘッセン伯爵だってさ」

「ヘッセン伯爵……ええと、その人のお名前は?ヘッセンって領地の領主なのよね、」

「うむ、よく覚えているようで宜しい。ロナルト・スメットさんだね、一人の妻と娘がいる。今から二人になるんだけどね……………君は、サヤベル・スメットだ」

「サヤベル………スメット、か、」



私はヒューが言った、"私の名前"を復唱する。

慣れない響きに違和感を感じる。呼ばれても反応出来無さそうだが、慣れるしか無いだろう。


頭の中で、「サヤベル、サヤベル・スメット、私はサヤベル・スメット……」と、何度か繰り返し呟いた。

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