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働け、魔法少女!  作者: 螺子
第一章「宝石王子と魔法少女」編
22/26

20.英雄の友人?

「ご、ごめんなさい……私、上から目線で、その、そういうことじゃなくて、悪気はないの。私、サヤさんにいつも元気を貰っているから、お礼を、」

「えへへっ、どういたしまして、なんて。……何だろう、自信が、ちょっとだけついたかもしれません。リリアーネさんの為にも、私、頑張ります!」


拳を握って私が意気込むと、リリアーネさんはほっとしたように胸元で手を握って笑顔になった。


「良かった………その、リリアーネ、で良いのだけれど、……ううん、えと、気にしないで。呼び方はなんでもいい、ただ……………敬われるのも距離を置かれるのも、少し、」

「あっ、…じゃっ、じゃあ、友達………になりません?ヒーロー女子会ってこと、で………………あ、ええええとその嫌なら忘れて欲しいんですけどっ、!!」


寂しそうな顔をしたその人を見て、その表情を仕舞ってほしいな、と少し思った。

言葉が口を突いて出てきて、後からかなり失礼なのでは?と気付く。


……ひ、ヒーローさんを友達扱いとか、五秒前の私、豪胆すぎない?というか相手は大人なのに、クラスメイトみたいなノリで………………


「……ありがとう、サヤさん。ふふっ、」

「あっえっ、…どういたしまして、?」

「とても、嬉しい……………その、少し、自分の話になってしまうのだけれど、」

「はいっ、大丈夫です」

「うん、……私、此処に………プラントに来て、ヒーローになるまでの事、その以前を殆ど覚えていなくて。記憶喪失、なのだと思う……………それで、家族も、友達も居なくて。それに、私は此処から出る時もいつもヒーローとして、医者として活動するから………知り合いは沢山できて、とても嬉しいのだけれど、……仕事柄、おおよそ友人という関係に、慣れていなかった。………………でも、ヨムも居てくれるし、彼の友達も、他のヒーローたちも、とても優しくて……だから、私は恵まれているなと思ったの。サヤさんの言葉、少しだけヨムに似ていて、思い出して、幸せなの」

「……………そう、なんですか」


リリアーネさんの笑顔を見ながら、私は考える。


……この人は、やっぱり強いなぁ。記憶が無くっても、仕事が大変でも、恵まれてるって言えるの、すごいや。


「だから、……その、」


リリアーネさんは、手袋を外してその白い手を差し出してくる。

私はそれをぎゅっ、と握って、顔を見合わせて笑った。


「宜しくお願いしま……、んん、………宜しくね、リリアーネさん!」

「……、!……………うん、宜しく、有り難う、サヤさん」



その後、リリアーネさんは待ち合わせがあるとかなんとかで、丁寧に挨拶をしたあと去っていった。

何から何までお嬢様のようにおしとやかで上品な人である。


……リリアーネさんのお陰でヒーロー頑張れるよ!確かプラント常駐ヒーローだよね、うん。此処に来たら会えるっていうのは嬉しいなぁ。


「なーんか忘れてる気がするなぁ……うーん、なんだっけ?」

「"コレ"じゃないの?」


後ろからまたもやいきなり声を掛けられ、私は飛び跳ねる。


「みぎゃぁっ、な、なななななんです?どれです??それです???」

「翻訳魔法が壊れたのかな、凄く阿呆みたいな言葉が聞こえてきたんだけど。……落とし物、ついでだから持ってきたけど、別に君の為じゃないからね」

「へ、」


そこでようやく私は振り返る。

見ると、手で白いふわふわの物体を掴んだ少年……そう、先程此処に来る前にばったり衝突してしまったあの天使みたいなそうじゃない子がこちらを呆れるように見ていた。


「ぅがぁぁぁぁああ……」

「ほら、これ。君の使い魔じゃないの、管理はしっかりしなよ。あと此奴五月蠅い、主人の五月蠅さが感染ったんじゃないの?」

「えっ、ヒュー?………今は大人しいほうだと思いますけどねえ、普通他人に体触らせないから」


その天使っぽい子からヒューを受け取りつつ、頬をむにむにと突いてみる。

「どうしたのヒュー、元気ないんじゃない?何かあった?」

「……、別にぃ~…、ちょっと疲れただけだって。なんせずーっとサヤを探し回ってたんだもん」


ヒューは何か言いにくそうに口籠った後、顔を洗う仕草をしつつ言った。


……こういう時のヒューは隠し事してるし絶対教えてくれないやつだ。まぁ良いけど、誰だって隠してることの一つや二つあるし。


「えっと、ありがとうございます!届けてくれて……あー、」

「……………、…………………サンドラ。名前でしょ」

「あっはい、…ありがとうございます、サンドラさん」

「君たちの為じゃないって言ったでしょ、いいよ。……あと、この猫の独り言が多すぎて鬱陶しかったんだよね」

「あー、ええと、ごめんなさい?」


その子ははぁ、とまたため息をつくと、肩を竦めながら言った。


「因みに今からの僕の言葉も独り言ね、……多分、君が悩んでることは案外近くに答えがある。灯台元暗し、って知らない?一人でやれとは言われてないんでしょ」

「え、…………あ、確かに」


……盲点だった!


すっかり頭から抜けかけていたが、この少年は私の今の状況に対してアドバイスをくれているのである。

そうだ、セレスティアル学園に来たばかりの私より、長年学園で生活している殿下や、生徒会の人達…例えばニイル先輩とか…のほうが、歓迎会のことも、多少なら盤上遊戯(ボードゲーム)クラブのことも知っているはずである。


……利用するようでちょっと躊躇っちゃうけど、殿下は私を生徒会に入れたいみたいだし、協力してくれるかもしれないよね?それにニイル先輩も、書類整理頑張るって条件つければいける…気がする!


「独り言に返事するの、君?」

「あっあ、ごめんなさい」

「別に。何も君に向けて言ってないし、……渡したから帰るよ」

「は、はい……………あの、本当にありがとうございました!!」


私は深く頭を下げた。

天使くんはフッ、と子供なのに妙に大人びた笑みを浮かべてから、手を軽く振って去っていった。

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