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働け、魔法少女!  作者: 螺子
第一章「宝石王子と魔法少女」編
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【閑話】定期報告、中間管理職の豚

「ぬ、ぬぬぬぬ…………」


私は、唸っていた。それはもう唸っていた、乙女らしからぬと自覚しつつそうせざるを得なかったのだ。

屋根裏部屋、中々に広いが天井は低いその中の書斎机。そこに、私は肘をついて一枚の紙とにらめっこをしていた。

課題ではない……いや、ある意味課題なのだが、それは学園の宿題などではなく。私がヒーローであるが故にやらなければならない、"仕事"である。


「………………バイオネット様、出来る限り早めにしてもらえると嬉しいです……」


小さく私に声を掛けて、ふよふよ、とこちらに浮きつつやって来たのは、小さな翼の生えた一匹の小豚。ヒューと同じ、動物に羽が付いた生き物、それはヒーローを補助する使い魔であることを表しているのだ。

そのくりっとした目に似合わない、苦労人の雰囲気を口調からも漂わせていて………恐らくそれは、この子の主人、つまりヒーローが原因だろう……と、名前を聞いた時に容易に想像出来た。

この小豚さんの名前はポーキー、と言う。

あろうことか、私に仕事を押し付け、今ここにいる原因を作ったあのヒーロー、〈参謀〉ガーディナーことイアンさんが、ポーキーの主人様であった。

……絶対に私を都合良く使ってるよあの人!そのくせ定期連絡まで義務だとかなんとか………いや、報連相は大事なのは分かるけど!!

きっと、個性の強いヒーロー達の中でもご多分に漏れずどころかかなり癖の強いイアンさんに振り回されている苦労人………いや、苦労豚さんなのだろう。というかポーキーという名前、失礼ではあるがポークをもじって付けられていないか?

私もたまにヒュー に意趣返しのつもりで「猫の剥製にするわよ」などと言ったりするが、ポーキーさんなどは冗談でなく食べられそうになっているのかもしれない。あのイアンさんなら十分にあり得るので馬鹿にならないのだ、私をビルから突き落としたあの人なら。

がりがり、とボールペンの音を鳴らしつつ、行動を思い返しながら報告書を書いていく。


「木の机だし、下敷きでも買った方がいいかしら」

「え~、寝心地がちょっと。プラスチックだと俺寝られないんだよねぇ」


人が必死になって文をしたためている近くで、窓枠に座った子猫、ヒューが文句を言う。


「あんたねぇ…………飼って貰ってる分際でよくもまあ、本当に口が回る猫だわ」

「そっちこそ、ヒーローなんて使い魔が居なきゃただの脳筋集団だぜ?敬えお猫様を、そして働けヒーロー共」

「………あ、あのぉ……お二人とも、あまり喧嘩は、その」

「「喧嘩じゃない」」

「すっ、ずみません…………差し出がましい真似を…、」


ポーキーさんは、そう言うと俯いてしまった。途端に哀れな雰囲気が漂い、私はとてつもなく申し訳なく思った。


「ポーキーさんはいいのよ、この猫のお口が大きいだけ」

「あんまり落ち込まないでよ~、日常茶飯事だし。あっそうだサヤ、煮干しちょ~だい?」

「嫌よ、あんた寝ちゃうんだもの。報告書終わってからね」

「そんな事言って、四分の一も進んでないし…………夜になっちゃうよ~?」


私は、窓際でこちらを煽るように笑っていたヒューを掴み上げ机の上に腹を出して寝転がせ、思い切りくすぐった。


「うひゃひゃひゃひゃっ、いぎゃっ、やめっ…………あばばばばっば!!」

「……………そのぉ~……………な、なんでもないです」


ポーキーさんが、諦めたように耳を垂れさせた。

私の報告書が書き終わる時はやってくる、のだろうか?

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