12.初登校日から連行です
次の日、私は朝、先生に連れられて教室に入った。
転入生なので、新しく入るクラスの生徒に自己紹介をしなければならないらしい。
「では、どうぞ」
「ぁ……あ、はい、」
生徒の視線が私に集中する。
物珍しそうな顔、どうでも良さそうな顔、警戒するような顔……
何処を見ても人の顔だ。
……あぁ、嫌だ。昔っから苦手なんだよな、大勢の人の視線って……
ヒーローになってからは多少慣れたが、それでも一対一、二以外では本当に気分が悪くなるほど人の視線は好きではない。
「…………、さ、サヤベル・スメットです……、宜しくお願い、します」
私はそう言うと、そそくさと空いている私の席と思われる場所に座った。
バックを机の横に掛けながら周りの視線を避けるように俯く。
……あぁぁ、貴族らしく堂々と……とか、無理だって!!!!へるぷみー、フランチェスカ!!!
勿論フランチェスカは一年生のクラスなので、こちらに来ることはない。
私は気まずい雰囲気を気にしないようにしながら、先生の朝の報告を聞き流した。
◆
「……ぇ、貴女。……サヤベル・スメットさん!!」
「ひぶっっ!?!?」
下を向いてノートに落描きをしていた私は、ガタッ、と音を立てて立ち上がる。
そろそろと声のした方を見ると、呆れたような顔をした、キツめの顔立ちだが美しい女の子が仁王立ちをして私を見ていた。
「もう、スメットさん、私三回も呼んだのよ?生徒会の人が貴女を連れてこいって」
「あ、ごめんなさい……」
「謝罪はいいわ。早く行ってらっしゃい、生徒会役員に呼ばれるなんて……貴女、何をやらかしたの?」
その少女はツン、と顔を逸しつつ言って、戸口の方を指差す。
一人の男性が、こちらを射殺さんばかりの視線で睨みつけているのが目に入り、私は思わず「ひぇぇぇえ」と悲鳴を上げて女の子の後ろに隠れた。
「……ちょっ、なんで私を盾にするのよ!さっさと行かないと、退学にされても知らないわよ!?」
「いやぁぁぁあだってあの人絶対私を殺す気ですよッッ!!??殺気を感じるんですぅぅぅぅうう」
「ッ………サヤベル・スメット、さっさと此方に来い…………!!!」
その男性は低く脅すような声を出したかと思うと、硬直する私と少女をよそに教室にずかずかと侵入し、そのまま私の腕をぐい、と掴んだ。
「うぎゃああああッ、人さらい、誘拐犯、変態ぃぃぃいいい!?」
「五月蝿い、その喧しい口を閉じろ!何時まで喚いているつもりだ」
透けるような白い髪に赤い瞳を持った彼は、怒りが最高潮に達したようで額に青筋を浮かべながら私の手首を引っ張る。
いやいやと首を振っていると、ガチャン、と音がして、手に重さが掛かった。
……え、嘘、は…??????
恐る恐る視線を戻すと、手首には……何故か手錠がはまっていて。
驚きや恐怖を通り越して呆然とする私を見つつ、その人は疲れたように溜息を付いた。
「……やっと大人しくなったな、この愚兎少女が……行くぞ」
「は……行くって、は………??」
「もう貴様は何も言わなくて結構」
彼は私の手首をぐいぐいと引っ張りつつ教室を出た。
またもやクラス中の視線が私に刃のように刺さる。
……ひぃぃ、五月蝿くしてごめんなさい!騒がしくてごめんなさい!でも、でも……手錠を付けて連行するような人はやっぱり怖いんですーー!!!!
という絶叫は、心の中だけに留めておいた。




