表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
働け、魔法少女!  作者: 螺子
第一章「宝石王子と魔法少女」編
12/26

11.ついつい身体が動きました

ノイエンアール王国には、ちゃんと四季がある。

勿論日本のようにはっきりとはしていないし、時期も微妙にズレがある。

何よりヨーロッパの方なので時差が酷い。最初は時差ボケに悩まされた、今はすっかり慣れてしまったが。


……此処は日本にもあるお花が多いなぁ〜、良いね。あの人に会うとちょっと気まずいだろうけど、出来れば此処を根城、っていうかお気に入りの場所にしたいな。


知っている花、知らない花が混在する花壇をふんふんと順番に見ていると、不意に強い風が吹いた。

私の二つに括った髪が揺れ、前髪が攫われる。

そして、件のイケメンさんの「あ、」という呟き声も私に届いた。

思わずそちらを見ると、彼の持っていた書類が風に飛ばされ、木の枝に引っかかっていく様子が丁度目に入った。

同時に目が合うと、困ったように小さく笑って肩を竦める。


「……少し気を抜いてしまったね。用務員さんでも呼ぶとしようか……」

「え、あれぐらいなら私届きますよ?わざわざ呼ぶのも気が引けますし、取ってきますね」

「……本当かい?それだと助かるけど……まさか木に登って?」

「あ〜、ちょっと違いますね。見てて下さい」


私はそう言うと、立ち上がって目標を見定める。

ヒーロー生活で鍛えた筋肉と運動神経があれば、あれぐらいは届く筈だ。

白い紙が引っかかっている木から数メートル離れて、助走をつけ、一気に跳躍する。

幹からほんの少し出っ張っている節を蹴って足がかりにして、指先で書類を捉えた。

地面に着地したと同時に受け身をとってくるりと一回転。つま先の衝撃を和らげて、すたっと着地した。


「……ほら、ジャンプしたら意外と届くもんですよ。どうぞ、」


そうして、呆けた顔をしているその人に書類を手渡す。

暫く瞬きを繰り返していたイケメンさんは、我に返ったように受け取った。


「……驚いたな。君は一体……?」


……あ。つい何時ものクセで助けちゃったけど、…………今活心してないし極秘任務中だった!!??どどどどどっっどうしよ!?!?!?


「あ〜ぇえとえとそのあの、し、新体操です!!」

「……新体操、?」


怪訝そうに復唱される。誤魔化しきれていないのだろうか。


「そそそそうです、前の学校では新体操クラブに入っててですね!!得意なんですよ身体を動かすの!!」


大嘘である。私はバスケットボール部だ。


「……それは……、いや、なんでもない。中々美しい動きで惚れ惚れしてしまったよ。有り難ううさぎさん、跳躍力も優れているなんて流石だね」

「どういう褒め方です?てか褒めてますそれ?」

「褒めているよ、勿論。……あぁそうだ、お礼と言っては何だが……」


イケメンさんはそう言うと、自分が座っていたベンチに置いてある小さな袋を持ってきた。


「野菜の入ったクッキーだよ、これをどうぞ。お口に合うと良いけどね」

「ほへ〜、貴族様ってお菓子もやっぱりちょっと意識高い系の……いえ、なんでもないです。有り難く貰っておきますね!」


人助けをしたらお菓子がついてきた。ヒーローの世界より全然優しい。

私はにっこり笑って、これ以上の追求を避けるために早々と立ち去った。

最後に彼の呟いた言葉なんて、耳にも入らなかった。


「……中々飼い甲斐が有りそうなうさぎさんだな……………サヤベル、スメット嬢」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ