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孤高の英雄  作者: 愚者
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1話


戦い続けた。

最近の行動を一言で表すならば、それだった。



広大な都市の廃墟の中に一人の青年がいた。周囲は元々廃墟だった建物が、何らかの戦闘によってさらに破壊された様子が窺えた。

今、満身創痍の青年の眼前には、大量の悪魔とモンスターの死体が溢れかえっていた。

現在地、アカツキ遺跡。ここは遺跡と呼ばれる旧文明の遺跡だ。








「君は、勇者の足を引っ張っている自覚はあるのか」



3名の悪魔王、ルシファー、ベルゼビュート、アスタロトが支配する悪魔軍の6柱の1人、サタナキアを死闘の末倒し、その祝勝会を領主邸で行った後のことだった。勇者のパーティーの仲間である大魔道士ジェスターに呼び出され、そう言われた。


「、、、急になんだ、ジェスター」


心臓の鼓動が早くなったような気がした。


「君自身も分かっているはずだ、アーロン。君は既に勇者のパーティーの足を引っ張っている。聞くが、サタナキアとの戦いで奴に有効的なダメージを与えられたのか?」


その言葉に俺は動揺し、僅かに硬直した。

俺、アーロン・ノアは英雄の加護という、今まで存在が確認されていない、前例のない加護を持っていた。英雄の加護は身体能力が戦士系統の加護を持つ者より非常に高く、そして魔力量も大魔道士であるジェスターよりも遥かに多い。身体能力と魔力量だけで言うならば、勇者さえも超える。

しかし、その代わりなのかは知らないが、中級以上の魔術や、付与魔術、スキルが一切与えられない。本来なら、戦士の加護を持つものは戦士専用のスキルが、魔術師は中級以上の魔術がレベルの上昇とともに解放可能にされるため、スキルポイントを使用して開放したりするが、英雄の加護に専用スキルはないのだ。

ただ身体能力が高く、魔力量が多いだけで強力なスキルや魔術も使えない英雄の加護は、一撃の攻撃力が低かった。


「、、、確かに俺はまともにダメージを与えられなかった。だがやつの気を引いてエミリアやジェスター、他の皆が攻撃出来るように立ち回ったはずだ」


あの時俺は、サタナキアに異常なまでに狙われ、攻撃することも出来ず、ただ防御に回るしか無かった。とてつもない執念でサタナキアは俺を殺そうとしていた。


「そうだな、だが君は一体何度エミリアに助けられた?君が危機的状況に陥る度に彼女は君を助けようとし、何度も好機を失っていた」


「それは、、、」


何も言い返せないほどにその通りだった。俺が死にかける度にエミリアは攻撃のチャンスをかなぐり捨ててでも俺を助けに来た。それは他のメンバーにも少なからず負担をかけていた。

そして、いつか言われると思っていた言葉がジェスターから放たれた。


「君はこのパーティーから抜けるべきだ」


分かっていた、なんの切り札も持たない英雄の加護では、置いていかれる時が来ると。いつかその時が来るとずっと考え続けてきた。そして、今日がその時だ。


「、、、分かった、だが、どこかに所属している訳では無いとはいえ、力不足で帰ってきましたでは世話になった人達に申し訳が立たない」


仲間に足手まといと言われたのはかなり堪えた。それでも何とか言葉を返す。


「、、、ふむ」


「だから、俺は悪魔が蔓延る東の最前線に行って単独行動をする」


元々考えていたことだった。たとえ俺が足でまといになったとしても、人々の、エミリアの助けになると。


「本気か?あそこはお前一人で生きていけるほど生易しい場所じゃないぞ」


そんなことは分かっている。だが、それでも俺は最後まで戦うと決めていた。


「いいんだ」


「、、、そうか、分かった、皆にはそう言っておく」


「助かる」


そう言って、俺は立ち去った。

しかし、最後にエミリアの顔を見ようと思った。本当は誰にも言わずに行くつもりだったが、顔だけでもと、そう思ってしまった。

エミリアは、俺の妹のような存在だった。実際に血が繋がっている訳では無いが、兄さん、と俺の事を呼んでくれていた。

最初にそう呼んでくれた時から、俺たちは兄妹になった。

子供の頃からずっと一緒だった。お互い、幼い頃に両親を失い、孤児院で暮らす訳でも無く、協力して2人で生きてきた。

最初から周りよりも強かった俺たちは、2人でモンスターを倒したりして何とか生計を立てていた。


そして7年前、俺が11歳、エミリアが10歳の時、加護鑑定の儀式で、エミリアが勇者の加護を持ち、俺が英雄の加護を持っていたことが判明し、俺たちは王都に呼ばれた。王国は勇者に、人々を救って欲しいと願った。俺たちはその願いを受け入れた。それから王国は俺たちがさらに強くなるための支援してくれた。

遠征していた時もあったが、王都に暮らしていた5年間、王国騎士団と共に訓練したり、古代遺跡ガイアに行ってエミリアの持つ聖剣を手に入れたり、エルフの都エルブンガルドで人助けをしたり、地方に行った時に悪魔軍に襲われるも、冒険者や軍を共に指揮して何とか敵を撃退した時も、2年前悪魔達の侵攻を止めるための旅にでて今日に至るまでずっと一緒だった。


俺たちは互いのために生きてきた。大切な家族だった。


今ではエミリアの方が強いし、1人でも生きていけるくらいちゃんとしている子だ。心配はしていなかったが、これから会えないと思うと胸が張り裂けるような気持ちだった。

出ていく前に、こっそりとバレないように窓からエミリアがいる部屋を覗いた。まるで変態だな、と思いつつ見た光景は、俺の心を酷く傷つけるものだった。


そこにあったのは、ジェスターに肩を抱かれるエミリアの姿があった。


吐き気と、嫌に響く耳鳴りが聞こえた。

平衡感覚を失い倒れそうになるが、俺は必死で堪えた。


俺の存在はそこに必要なかったんだ。そう気づいてしまった。パーティーを脱退しなければならないというショックからか、それともほかに理由があったのか、俺はそれ以上を見ることはなかった。

とてつもない悲しみが俺をその場から走り去らせた。


結局、エミリアの顔は見れなかった。








勇者パーティーを実力不足で脱退し、エミリアとジェスターの様子を見て、自分の実力を信じる事が出来なくなくなり、絶望していた俺は失意に暮れながらもその足はより強く、より多くの悪魔がいる方向へと進んで行った。1度立ち寄った街で闇ギルド掃討作戦に参加し敵を壊滅状態にしたり、街道で商人などに被害を与えている土竜を倒しながらも、大量の悪魔がいる最前線にたどり着き、休む暇もなく悪魔を殺し続けた。おそらく1、2ヶ月の間そうしていただろう。

中級悪魔を何体も殺し、そしてついに今、上級悪魔を単独で撃破した。上級悪魔とは上級冒険者がパーティーを組んでようやく倒すような化け物のことだ。6柱の配下であることもある。エミリアなら、、、勇者ならば単独で撃破など苦戦もしないはずだ。

殺し合いが終わり、俺は自身の今の状況を確認する。

俺の左腕は肘から先がちぎれかかっており、左手に持っていたトマホークは刃部分が完全に壊れ、既に鈍器以外の使用用途はなくなっていた。右の脇腹はえぐれており、血が溢れ出てきている。その他にも傷は全身にある。

まさに死亡寸前に見えるが、俺はすぐにエクスヒーリングポーションをマジックバックから取りだし、負傷部に半分かけ、残りを飲み干した。

即座に出血が止まり、傷口が瞬く間に再生していく。全身の傷が消えた頃には、戦闘態勢から警戒態勢に意識を切り替えた。

まだマジックバックの中には大量のエクスヒーリングポーションがあるため、いくらでも無茶はできるだろう。


そんなことを考えていたが、もうすぐで日が落ちる事を確認すると、俺はここ最近拠点にしている街に向けて歩き出した。誰でも覚えることの出来るコモンスキルである疲労耐性Lv10で獲得できるマスタースキル、疲労完全耐性で疲労は一切ないし、睡眠を取らなくても活動はできるが、武器が壊れてしまったし、補給で戻らなければならなかった。

俺は走って戻るのではなく、歩きながら自身のステータスを確認しながら戻ることにした。

何度も繰り返した行為。英雄の加護にもなにかあるのではないかという期待。しかし今はもう、そんな気持ちはなかった。ただ、事務的に確認するように手を伸ばした。


そして


ステータスを開いた瞬間に、今まで見たことの無いステータス表示が出てきた。


「Lv100を超えました、英雄のスキルを開放します」


俺の運命が変化した瞬間だった。

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