春の噂 - 恋愛の達人 -
それは中学2年生の3月の出来事だった。突然、ベランダの扉が開いた。そこから入ってきたのは同じクラスの笹倉佳奈で、まさに蒼井涼介が恋している女の子であった。
「蒼井君が何かわたしに伝えたいことがあると聞いて、ここに来るように言われてきてみたけど何かな?」
突然、自分の好きな女の子にそう言われるとあとには引けない。蒼井涼介はもう告白する覚悟を決めた。
「俺、実は以前から佳奈のことが好きになってずっと悩んでいた。俺と付き合ってほしい」
ついに告白した瞬間だった。笹倉佳奈はかなり驚いた表情をしていた。
「いきなりそんなこと言われても、今すぐ答えは出せないよ。少し考えさせてもらってもいい?」
「うん。ちゃんと考えてほしい。俺、めちゃくちゃ佳奈のこと好きだから・・・」
「じゃあ、3年生になるまでに答えを出すね」
蒼井涼介は告白してスッキリした気分になっていたが、笹倉佳奈の返事が気になって仕方なかった。
それから1週間後、笹倉佳奈から手紙が渡された。その手紙には『わたしには好きな人がいて、その人のことを忘れられないので、蒼井君とは付き合えません。本当にごめんなさい』と書いてあった。蒼井涼介はその手紙を読んで、絶望的な気分になっていたが、それでも笹倉佳奈のことは諦めずにいた。そして、もう一度だけアタックすることにした。今度はちゃんと手紙に自分の気持ちを書いて笹倉佳奈に渡したのだ。それから数日後、笹倉佳奈が「今日、一緒に帰ろう」と言ってきた。蒼井涼介は笹倉佳奈と一緒に下校している間、何を言われるのかドキドキしていたが、ちょうどお互いの家の分岐点にさしかかった時、笹倉佳奈が立ち止まって口を開いた。
「蒼井君。あの・・・」
「どうしたの?」
「ごめんなさい。蒼井君からこんなに好きだと思われていてとても嬉しかった。でもやっぱり蒼井君とは付き合うことできないの」
「わかった」
「来年はお互いに受験生だね。ちがうクラスになってもお互いにがんばろうね」
「うん」
2回目の告白をして見事にフラれた瞬間だった。しかし、それからも蒼井涼介の気持ちはずっと変わらず、笹倉佳奈に想いを寄せていた。
4月の新学期、学生達はクラス替えとともに心も新しくなる季節。桜が満開のこの季節、新しい環境に慣れようとする人達の心の忙しさを感じる。仲の良かった友達や片思いをしている人と同じクラスになれて喜ぶこともあれば、別のクラスになってしまったと残念な気持ちにさせられることもある。その与えられた新しい環境はどうすることもできないが、これからどんな出会いや出来事があるのだろうかと考えてしまうこともある。床についたワックスの匂いとともに新しい1年間が始まる。
ある日、蒼井涼介が妹である香里の小学校の卒業アルバムを開いて、そこに写っていたある女の子を見た時のことだった。
「この子、可愛いよね!すごいタイプだ!!」
全てはこの一言がきっかけであった。そのアルバムに写っていた女の子の名前は岡本早紀という。
蒼井涼介は中学3年生になり受験シーズンを迎え、香里は小学校を卒業して中学校に入学したばかり。そんな春の出来事であった。蒼井涼介がこのアルバムに写っていた岡本早紀に片思いをしているという、まるで春風が運んできたかのような噂が1年生のほとんどと3年生の一部の知り合いに広まっていった。
岡本早紀は背丈は小さく、目が大きくクリっとしていて、まるで人形のような女の子だった。たしかに蒼井涼介の好みのタイプではあったが、話したこともなければ恋愛感情を持っているとは到底言えないのだ。それにまだ中学2年生の時に同じクラスだった笹倉佳奈に未練がある。
それからしばらくしたある日、妹は何人かの同級生から「お兄ちゃんって岡本さんのことが好きなんだ?」と質問されるようになっていた。蒼井涼介がまだ笹倉佳奈に未練があることを知っていた妹の香里は「兄にはずっと好きな人いる」と必死に真実を話していた。しかし周りはそんなことは聞く耳持たない状態だった。この噂は香里にとって非常に迷惑なことであった。もちろん蒼井涼介も周囲から「1年生に手を出している」などと言われて迷惑なことだった。そして、この噂は次第に岡本早紀本人の耳にも入っていくことになる。
噂が広まっていたある日、体育の授業が終わって教室へ戻ろうとしていたときのこと。偶然にもバッタリと岡本早紀に出くわしてしまった。一瞬、目があったのだが、岡本早紀は避けるようにその場を去っていった。早紀は何やら困ったような表情をしていたように感じられた。完全に避けられているのは間違いなかった。蒼井涼介は話したこともない人間に好意を抱かれていると思い込んでいるのだから岡本早紀が警戒するのは当然のことだろうと思った。根も葉もない噂なのだが状況だけはどんどん悪化していった。
蒼井涼介は「この噂は治まるどころか酷くなるだけ。なんとかしないと・・・」と心に思った。
蒼井涼介は、まずこの噂の出所がどこにあるのか調べてみることにした。とりあえず、あきらかなのは蒼井涼介が発言した「岡本早紀がタイプ」から始まっていることだ。これは蒼井涼介の家で妹の卒業アルバムを見ていた時のことなので、関係しているのはそのうちの誰かであるのは間違いないだろうと推測できた。そこにいたのは近所に住んでいた大河由実、妹の友達で蒼井涼介も小学生の頃から知っている井口敦子、妹が小学生の時に1番仲のよかった下野尚美。そのうち迷惑をしている妹の香里と蒼井涼介自身を除いた3人の誰かがこの噂に関係があるのは確実であるのは間違いないだろう。
そこで蒼井涼介は頭の中を整理してみた。
大河由実は幼なじみの勉強熱心で真面目な性格。井口敦子は岡本早紀の家近くに住んでいて、あの2人は仲のいい友達関係なので、この噂によって2人が迷惑しているのを知っている。残るのは下野尚美だが、蒼井涼介がよく笹倉佳奈について相談していたので、まだまだ未練があることを知っているはず。そう考えてみると誰もこの噂に関係なさそうだが、唯一この中で疑わしく思ったのは大河由実だ。しかしそう言いきれる根拠がない。
そんなある日のこと、大河由実が蒼井涼介の家にやってきた。
大河由実が1枚の便せんを届けにきたのだ。その中にはなんと早紀の写真が2枚も入っていた。先日行われていた春祭りの時に撮らせてもらったらしく、この写真を蒼井涼介にプレゼントするというのだ。大河由実は完全に蒼井涼介が岡本早紀を好きなのだと勘違いしていた。やはり噂の出どころは大河由実ではないだろうか。
「こんな写真いらないよ。別に早紀のことは好きでもなんでもない!もしかして噂を流してるのは由実なのか?」
「そんな噂なんて流してないよ」
「とにかく写真なんていらないから!」
「まあまあ、そう照れなくてもいいから。とりあえず写真は渡しておくから、じゃあまたね」
そう言って大河由実はさっさと自宅に戻っていった。
蒼井涼介は少しの間、岡本早紀の写真を眺めていた。2枚の写真を見てみると、岡本早紀は笑顔でピースポーズをとっている。見る限りではとても不信な表情をしていない。そう考えるとこの2枚の写真と噂の繋がりはないように思えた。そう思った蒼井涼介は仕方なくこの便せんに2枚の写真を入れて自分の机の引き出しの中にしまっておいた。
その後、噂は治まるどころか「蒼井涼介は岡本早紀のことが好き」という内容から「蒼井涼介が岡本早紀に告白する」という内容にまで発展していった。人の噂とは不思議なもので、人から人へ伝わっていくにつれて、その内容がどんどん膨らんでいく。そして最後には内容そのものが全く違うものになってしまうのだ。そんな状況が続いたある日の朝、蒼井涼介がいつものように登校すると下駄箱の中に四つ折りにされたメモ用紙が置かれていた。それはなんと岡本早紀からのメッセージだった。そのメッセージとは次のように書かれていた。
”
もう写真を撮ったり、わたしのことを調べるのは辞めてください。
1年生の間であなたとの噂までひろまっていてすごく迷惑しています。
わたしのことが好きなのであればあきらめてください。
これ以上続けるのであれば、兄になんとかしてもらいます。
もう本当に迷惑しているので辞めてください。
”
このメッセージを見た蒼井涼介は即座に岡本早紀がかなりの誤解をしていることだけは間違いないと確信できた。ところで、岡本早紀の兄とは岡本啓一のことで、1年ほど前に蒼井涼介が少し関わっていた暴走族の先輩にあたる人だった。蒼井涼介は「これは本当にまずいことで何とかしないといけない」と思った。しかし、岡本早紀に「辞めてください」と言われても、実際、蒼井涼介は何もしていない。だから何を辞めればいいのかわからないのだ。
そんなある日の下校途中・・・
ついに蒼井涼介は岡本早紀の兄である岡本啓一に呼び出された。そこには同じ暴走族に所属していた他の先輩が2人もいた。岡本啓一は面倒な感じの口調で話しかけてきた。
「お前、早紀に手を出してるのは本当か?」
蒼井涼介は必死に事情を説明していった。まだ笹倉佳奈に未練があること、岡本早紀のことは別に好きでもないということ、噂が勝手に広まっていったこと。あれこれ説明をしていくと、岡本啓一はだんだん難しそうな表情になっていった。
「たしかに、俺のことを知っているお前が、早紀のことを調べているというのは変な話だな」
岡本啓一の中でそういう結論になったようだ。どうやら蒼井涼介の言ってることが嘘でないことを感じたようだ。そして岡本啓一が少し笑いはじめた。
「それにしてもお前さ、あんな生意気な早紀のどこが可愛いんだ?」
「可愛いじゃないですか。たしかにタイプではありますよ」
そう正直に答えると岡本啓一はクスクスと笑いながら口を開いた。
「とにかく早紀が困ってるみたいだから、お前のほうで噂をなんとかしてやってくれ」
「はい!なんとか噂を止めるようにします」
その後、岡本啓一と他の先輩達2人は自転車にのってその場を去った。
蒼井涼介は「ここまでくるともう噂を止めるしかない」と思った。
噂を止めるにはどうすればいいのかを蒼井涼介は考えていた。それにはまず噂の出所を突きとめなければならないことに気がついた。そして岡本早紀にどういう内容で伝わっているのかも突きとめなければならない。翌日、蒼井涼介はまず岡本早紀と近所に住んでいて仲良のいい井口敦子を学校内に呼び出して話を聞いてみることにした。 井口敦子は妹の香里が小学生の頃からの付き合いだが、それと同時に蒼井涼介とも長い付き合いであった。
「敦子、噂の心当たりはない?」
「わたしは早紀に『涼介君がタイプの女の子だって言ってたよ』と伝えただけだよ」
「それで早紀はどういう反応した?」
「早紀は『嬉しいこと言ってくれるね』って言って、ただ笑っていただけだよ」
「うーん、それだけで俺が早紀を好きと勘違いするのもおかしな話だね」
「でも早紀は今回の噂のことですごく悩んでるみたいだよ」
「じゃあ敦子、せめて噂のことは勘違いだと早紀に伝えてくれないかな?」
「でも早紀はかなり警戒してるから、それだけだと信じないかもしれないよ」
「そのことなら俺のほうからも早紀に手紙を出すつもりだから大丈夫」
「そっか。でもこんな状況だから気をつけてね」
とりあえず井口敦子との話は終わった。
蒼井涼介はまず噂になっている本人に事実を伝えることが先決だと考えた。噂がでたらめであると岡本早紀も安心するのではないかと。そして、翌日の朝早い時間に登校して、蒼井涼介は岡本早紀の下駄箱にメッセージを書いたメモを入れた。そのメッセージの内容は次のようなものだった。
”
昨日、敦子と話をしたので、もう聞いていると思いますが、
早紀さんはどうやら勘違いをしているようです。
たしかに早紀さんのことをタイプだと言ったことは本当ですが、
俺には好きな人がいます。
そのことは早紀さんのお兄さんも知っていると思います。
こんな噂になった発端は俺にあるので、
なんとか噂を止めてみようと思っています。
今までさんざん迷惑かけてしまったことは謝ります。
ごめんなさい。
”
この手紙の内容を岡本早紀が受け入れるかどうかはわからないが、どんな形であっても誤解だと伝えることが重要なのだ。その日の昼休み、蒼井涼介は偶然にも岡本早紀と出くわしてしまった。蒼井涼介は目を避けるように通り過ぎようとしたが、そのとき、岡本早紀のほうから声をかけてきた。蒼井涼介のメッセージを見たこと、井口敦子に話を聞いたということを岡本早紀は話したのだ。岡本早紀は頭をさげて、何やら恥ずかしげな表情をして謝ってきた。
「勘違いしてたみたいで、手紙で失礼なこと言っちゃってごめんなさい」
これで本人への誤解は解けたようで蒼井涼介はホッとした。
「こちらこそ本当にごめんね」
「誤解だとわかったので、もういいですよ」
しかし、蒼井涼介にとってそれで終わりではなかった。
「そういってくれるとありがたいんだけど、この噂はもうそれだけの問題じゃなくて、妹や他の人にも迷惑かかってるからなんとかしないといけないんだよ」
「そうですよね・・・」
この噂は妹や井口敦子は迷惑をしている。なにより、笹倉佳奈のこともあるので蒼井涼介自身がどうしても噂を止めたい気持ちが1番だった。岡本早紀はぺこりと頭をさげた。話も終わり、蒼井涼介がその場を去ろうとした時、最後に岡本早紀が話しかけてきた。
「あの・・・わたしに何かできることってありませんか?」
蒼井涼介は少し驚いた表情をしながら振り向くと、岡本早紀の眼差しは真剣だった。少し戸惑ったが、岡本早紀から詳しい話を聞いてみることにした。
「えっとそれじゃあ、聞かせてほしいんだけど噂のことは誰から聞いたの?」
「噂は同じクラスの女の子から聞きました。あと写真のことも由美からプレゼントされたってクラスの女の子から聞きました」
「そっか。あと、俺が住所や電話番号を調べてるっていうのは誰から聞いたの?」
「それは・・・ごめんなさい。わたしが勝手に勘違いしていました」
「なるほど。俺が写真をもらったことでいろいろと勘違いしちゃったんだね」
「そうですね・・・はい」
「えっと、写真は俺が無理に渡されて持ってるんだけど、それは早紀さんに返すよ」
「はい。わかりました」
これで蒼井涼介に対する岡本早紀の不信感はなくなったはずだが、噂の出所を突き止める手がかりは全く掴めなかった。こうなったらなんとしても噂をなんとかしないといけない。そこで蒼井涼介は広まった噂をくい止めるために、井口敦子と大河由実と下野尚美、そして1年生の後輩で妹の香里とも仲がよかった大山直也と白井健太に協力してもらうことにした。大山直也と白井健太は、蒼井涼介が少し関わっていた暴走族の新入りでもある。蒼井涼介はまず、その5人に「ある噂を流してくれ」と依頼した。そのある噂とは”蒼井涼介が岡本先輩、つまり岡本早紀の兄と同じ暴走族仲間。そして今回の噂がでたらめであると岡本先輩と話をつけた”という内容である。
この噂を流すポイントとして、兄の岡本啓一の存在にあった。当時「早紀の兄貴は暴走族で相当に危険な人」として校内でもかなり恐れらて有名であったこと、蒼井涼介が岡本先輩と話をつけたことは事実であったことも含めてのことだ。「岡本啓一に関わりたくない」という人の心理を利用した噂流しの作戦だったが、それは見事に成功した。数日後、岡本早紀との噂話など煙のように消えていった。
「とりあえず噂は治まった。無事解決だ!しかし・・・」
蒼井涼介の気持ちとしては何かしっくりこなかった。これだと肝心の噂の出所がわからないままなのだ。どうにも真実を明らかにしないと何か心に引っかかったままになっている気がしてならなかった。とにかく先日約束した大河由実からもらった2枚の写真を岡本早紀に返してあげようと、机の引き出しから便せんを取り出した。2枚の写真をみても岡本早紀はたしかに可愛いと思いながら眺めていた。その時、1枚の写真の右側に注目した。最初は暗くて気づかなかったのだが、よくみると女の子らしい髪の毛がちらっと写っているのである。そこで、蒼井涼介はこの写真を持ってきた大河由実の話を思い出した。この写真は春祭りの時に偶然、岡本早紀と会って撮影したもの。よく考えてみると岡本早紀が1人で春祭りに来ていたとは考えにくい。もしかすると誰か友達と一緒に来ていたのではないのかと思いはじめた。そして、その友達が今回の噂について何か関係があるのではないかと思った。
そう思った翌日、蒼井涼介は岡本早紀に写真を返すといって呼び出した。
蒼井涼介は岡本早紀に2枚の写真を返して話を切り出した。
「春祭りの時は1人で来ていたの?」
「いえ、同じクラスの富井紗江子って女の子と2人で行ってました」
「この写真の右側をよく見てくれるかな?これはその富井紗江子って子の髪の毛かな?」
「そうですね。はい」
「この富井紗江子って子は噂のことについて何か知っていた?」
「わたしが最初に噂のことを聞いたのは紗江子からです」
「そういうことか。わかった、ありがとう」
蒼井涼介はこの話を聞いてピンッときた。間違いなく富井紗江子が今回の噂話に関係していると確信できた。あとは卒業アルバムを見ていた時にいた4人と富井紗江子との関係について考えてみた。井口敦子は岡本早紀と同じクラスなので当然知っているはず。妹の香里や下野尚美については後で確認したところ富井紗江子の存在は知っているが話したことはないらしい。最後に大河由実だが、春祭りで写真を撮る時に会っているはずだが、どこまでの仲なのかはわからない。まず、蒼井涼介は井口敦子に電話をかけて富井紗江子と大河由実の関係について聞きいてみた。すると「春祭りの日からときどき話をするようになった」という情報がわかった。2人がどれだけの関係かわからないが、これで大河由実と富井紗江子の接点が見つかったのだ。
早速、蒼井涼介は大河由実を家に呼び出して話をきいてみると真相が明らかになった。
春祭りの日、大河由実は両親と弟の4人で春祭りに来ていたらしく、偶然に岡本早紀と富井紗江子に会った。大川由実は友達に会ったから「少しここで話をする」ということで、両親と弟はその場を離れた。そして大河由実は偶然にもカメラを持っていたので岡本早紀の写真を撮ったのだ。しかし一緒にいた富井紗江子は写真を撮られるのはあまり好きではないと拒み、カメラ目線から離れていた。それから数日後、大河由実と富井紗江子が2人で話をする機会があった。その時、春祭りで撮った岡本早紀の写真について大河由実が香里の兄である蒼井涼介にプレゼントしたこと、その蒼井涼介が岡本早紀のことを「好みのタイプ」と言っていたことを富井紗江子に話していたのだ。その話を聞いた富井紗江子は蒼井涼介が岡本早紀を好きだと勘違いした。そして富井紗江子は友達数人にその話をした。それから噂はたちまち広がり岡本早紀本人の耳にまで入った。そして岡本早紀も勘違いしたのだ。勘違いした岡本早紀は富井紗江子に噂についての相談をした。そして富井紗江子は、大河由実が写真をプレゼントしたということを岡本早紀に話した。そして岡本早紀は春祭りの日に大河由実が写真を撮ったのは蒼井涼介が依頼したものだと思いこんでしまったようだ。その後、噂について井口敦子に話したり調べている蒼井涼介の事を耳にした富井紗江子はさらに勘違いをして岡本早紀の事をいろいろ調べていると思いこんでしまった。富井紗江子はその思いこんだことすら岡本早紀に伝えた。もう我慢の限界がきた岡本早紀は悩んだ末、メモ帳にメッセージを書いて蒼井涼介の下駄箱に入れたのである。
それから3年後・・・
蒼井涼介は井口敦子の関係から岡本早紀とも仲良くなっていた。そんなある日、蒼井涼介は井口敦子、岡本早紀と3人でドライブしていた。蒼井涼介は意地悪をしてやろうと岡本早紀に話しかけた。
「あの時の噂のことは忘れもしない。あの下駄箱に入っていたメッセージのことも忘れもしないよ」
「もう!恥ずかしいからやめてよ」
岡本早紀が顔を赤くした。
「まあ、早紀は昔から気の強い女だね」
「その気の強い女がタイプなんでしょ?」
「そこまで気が強かったらどうだろうね。さすがにちょっと引くかもね」
「またまた、そんなこと言っちゃって、今でもわたしのことが可愛いって思ってるんでしょ?」
「そこは否定しないけどね」
「否定しないんだ・・・えへへ」
普段、何も感じていない人でも、噂されるとその相手が気になって意識してしまう。その意識から相手に対する気持ちが変わってしまうこともある。それで好きになってしまうか、嫌になってしまうか、仲がよくなることさえあるのだろう。




