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マンガ喫茶だより アマポラ編  作者: 樸 念仁
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みじかかったランデヴー

http://reviews.bookstudio.com/author/10794/10695/2.htm

2008年06月27日(Fri) 18時20分に投稿



あの日、啓一はながく見ていなかった父親と対面した。七十に手がとどこうというのに、まだまだ衰えを知らないふうだった。


父親は板橋にいる。正直をいうと、会いに行くのは後回しにしたかった。ほかにも会いたい人がいたので、日が暮れてからのことにでも。


若菜と朝八時半に下北沢で落ちあい、一日行動をともにする約束だったのだけれども、町田の駅でJRから小田急に乗りかえる時に、晩の確認に板橋へ電話をすると、ああ、啓一か、ちょうど良かった、番号を聞いていないからこっちからは掛けようがないじゃないか、今日は昼飯を食うつもりで来いという。


機嫌をとっておきたい折から、いなむこともならず、いわれた時間に行った。下北沢は一時間半で切りあげて。夕方また連絡を取り合おうねと決めておいて。


それで、寿司か鰻にでもありつけるかしらと食指が動くのを覚えながら、三年と八ヵ月ぶりに実家へ足を向けたことだったが、出たのは那須江さんの手料理だった。


「何もなくて御免なさいね。急だったものですから。お口にあえば良いのだけれど」


「いえいえ、とんでもない。大した御馳走ですよ。いつも貧しいものばかり食べているから」


「お前、少し痩せはしないか」


「そうかな。自分じゃ分からないけど」


「どうだ、那須江の料理の腕前は。なかなかのものだろう」


「何を言うんですか!啓一さんが困ってらっしゃいますよ」


「何の何の、おやじの言う通りです。大変おいしく頂いています」


事実、ちょっと素人ではない、相当な料理だったと思う。御こぜとかいう魚を唐揚げにしたのがことに美味だった。(たしか御こぜと言っていた。御はぜの聞きちがいでなければ)


ビールが出た。サントリーのモルツを覚えていてくれた。同じ麦芽とホップだけでつくった飲料でも、息子はヱビスよりモルツを好むのである。


ところで、那須江さんが父親の何にあたるのかが、息子にはいまひとつ分かりかねることだった。はじめて会う人だった。


http://reviews.bookstudio.com/author2.php?id=10794

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