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王家の恥

 アンドレアがジルベルトを伴い第三謁見室へ入室すると、玉座には既に国王ジュリアンが座していた。

 驚きはしない。王宮内で言伝を頼んだ国王の侍従は、使用人用の隠し通路を使って先回りで言葉を届けたのだろう。

 まだ城内の国王執務室か宰相執務室辺りに居たであろう父王が、約束通り、こちらの隙間時間に合わせてくれたのだ。

 となれば、これから伝えられるのは、やはり現在取り掛かっている案件とは関係の無い話だ。今の案件に必要な話ならば、時間を合わせるのは身分から言ってもアンドレアの側だ。

 それでも早めに耳に入れておかなければならない話だと言うならば、いずれ影から最高権力者として動くことになるアンドレアへの訓戒となるようなものだろうか。


「よく来たな。アンドレア。そして『剣聖』ジルベルト」


「第二王子アンドレア、陛下の御前に参りました」


「ジルベルト・ダーガ、御前に参りました」


 玉座から声をかけられ、それぞれ臣下の最敬礼の姿勢を執る。

 鷹揚に頷いて、ジュリアンは「楽にせよ」と発した。そして頭を上げた二人に、重々しく口を開く。


「これから話すのは現クリソプレーズ王家が隠す王家の恥である。時の国王によって歪曲され『史実』となった内容を否定する、()()()によって語り継がれた真実だ。愚王の話は愚王となりかねん者には伝えられん。お前が呼ばれた理由は理解したな?」


「──はい」


 予想はしていたが、重い事実だ。アンドレアの返答にも、事実を改めて飲み込む数瞬が必要だった。

 エリオットは、本当に()()()()を持つ可能性からすら外されたのだ。


「お前がここに伴う護衛に『剣聖』を指定したのは、歪曲された史実に当時の『剣聖』が関係しているからだ。先ずは、自称帝国と周辺国との戦乱の時代に国王であった三代前の国王レオナルド・アナンダ・クリソプレーズの話からしよう」


 戦乱の時代と呼ばれるのは、今から76年前の終戦までの約7年間の戦時中と、75年前の同盟締結を経て尚、国の内外が混乱し、暴力が渦巻いた戦後10年程の間だ。

 その間、国王として在位したのがレオナルド・アナンダ・クリソプレーズという名の王で、()()では、戦争を終結に導く采配を振るい、代償として最愛の弟と自らに忠誠を誓った『剣聖』を戦場で喪った悲劇の王となっている。死因は暗殺だ。41歳で暗殺により死亡するまで国王であり続けた、と記されている。


「当時の『剣聖』はアレン・グリフィン。今は血統が途絶え消えたが、グリフィン伯爵家の生まれだった。アレン・グリフィンは、レオナルド王の同腹の弟、ジャスティン・ダーナ・クリソプレーズの専属護衛であり、ジャスティンに忠誠を誓った『剣聖』だったのだ」


 苦い声でジュリアンによって淡々と綴られる『隠された真実』は、アンドレアの口中にも苦いものを広げていくような内容だった。

 ()()では、『剣聖』アレン・グリフィンはレオナルド王の専属護衛であり忠誠を誓った『剣聖』と伝わっている。

 真実が今ジュリアンが口にしたものだとすれば、国王が()()にて弟の『剣聖』を奪い取ったということだ。

 まるで、何処かの兄弟王子のような話ではないか。


 16歳のあの日、エリオットが『剣聖』のジルベルトを寄越せとアンドレアに命じた時、エリオットが『第一王子』ではなく『国王』であったら、どうなっていただろう。同腹の弟であろうと、『国王』の発する()()には逆らえない。

 あの時、『剣聖』であるジルベルト本人が自分の意志を口にする機会を得られたのは、あれが『次期国王』の言葉に過ぎず、国王であるジュリアンが第一王子エリオットの望みを()()()()()()叶えようとはしていなかったからだ。


 もしもあれが『王命』であれば、ジルベルトは意見など口に出来なかった。

 臣下の不敬は主も責任を負わされる。アンドレアが処罰されることを思えば、ジルベルトが勝手に口を開くことなど出来ない。

 そしてまた、アンドレアも『王命』であればジルベルトを要求通り差し出すしか無かった。

 アンドレアが守りたい者は、ジルベルトだけではない。アンドレアが『王命』に逆らえば、王への叛意を罪に問われて側近達は皆、連座である。

 大切に想う者が一人でも在れば、国王以外のどのような地位に居ようが、どれだけの実力を認められていようが、大切な者が質となって決して逆らうことが適わない。それが『王命』の持つ力だ。


 エリオットは、()()()()()()()、あの時、望んだのた。

 兄として、第一王子として命じたのではなく、『次期国王』として命じた真意を、実在の歴史を聞かされてから今再び思い出せば、身の毛がよだつ。

 ジュリアンが完全にエリオットを見限ったのは、この()()を語り継がれて知っていたからか。


「王弟ジャスティンは、国王となる兄を支えるために剣を鍛え、若くして騎士団に入団した。そこでアレンと知己となり、ジャスティンの直向きさと清廉さに心酔したアレンは、ジャスティンに騎士の誓いを立てた。ジャスティンのために一層修練に励んだアレンは、戦時中に『剣聖』となり、戦場に出るジャスティンを守り抜くために『剣聖』としての忠誠もジャスティンに誓った」


 本来、『剣聖』が誰に忠誠を誓うのかは『剣聖』本人の意志によるものだ。

 権力者が命令で誓わせるものではない。実情はそうと言い切れないが、『剣聖』が忠誠を誓う主を選ぶ前に、誰かの許可を取らなければならない決まりなど無いのだ。


「事後に報告を受けたレオナルド王は激怒したそうだ。勝手なことを、とな。そして弟ジャスティンに命じた。『剣聖』に国王を側で護るよう命じろ、お前は私が選んだ兵を率いて最前線にて敵の首級を上げるまで帰還を禁ずる、と」


 もしも現在、クリソプレーズ王国が何処かの国と戦争中であったなら、エリオットが国王であれば、レオナルド王と同じような『王命』を出した可能性を、この場の誰も否定が出来なかった。

 ジルベルトを自分に差し出せと、アンドレアに命じたエリオットの心根は、レオナルド王と差異がないように思えてしまう。


「レオナルド王がジャスティンに付けたのは、26名の新米兵士だった。それも兵団に所属はしていたが、新米兵士とは名ばかりの戦争孤児達だ。ジャスティンは最前線に到達する前に、率いる子供達に『これは作戦だ』と言い含めて後衛の補給基地に残し、一人で最前線に出て、敵の将の一人と相討ちで戦死した」


 ()()では、志願兵が最前線に出る際に、「旗印が無ければ我が国が侮られます」と、ジャスティンが自ら望んで最前線に『勇猛な志願兵の一団』を率いて出陣したことになっている。

 実際は26人の戦争孤児を()()()()()()基地まで戦場を進み、そこから一人で最前線に突っ込んだとは、権力者が偽る歴史の闇は深い。


「真の主であるジャスティンの戦死を受け、『剣聖』のアレンは、この世の誰の命令も聞く必要が無いと、レオナルド王が止めるのも聞かず、一人戦地へ向かった。アレンが向かったとされた地域は激戦地区であり、戦争終結後に遺体の回収に向かった騎士も兵士も、あまりの凄惨さに心身の不調を訴える者が続出したらしい。アレンは、骨も見つからなかったそうだ」


 骨も見つからなかった、戦乱の時代のクリソプレーズ王国の『剣聖』アレン。

 その真実が、ジルベルトには分かった。

 アレンは『剣鬼』となって散り、加護を授ける妖精達と共に世界に還ったのだ。

 欲深い権力者に蹂躙される『剣聖』の記憶を、これ以上重ねたくないと妖精達は言っていた。

 同じ国に、かつて存在していた『剣聖』の話を聞けば、他人事ではない悲惨な状況と胸糞悪さが空気を重苦しいものにする。

 多分、姿を見せていないジルベルトに加護を与える妖精達も、悪ふざけの雰囲気など消し去って、共有する記憶を思い出し、暗澹たる気分になっているだろう。彼らは、ジルベルトが見聞きしている話は、全て一緒に聞いているのだから。


「このレオナルド王の暗愚ぶりは、『剣聖』に関するものだけではない」


 これ以上まだあるのか。

 歴史の教科書で称賛されていた先祖の愚かな暴君ぶりに、既に辟易していたアンドレアは溜め息を飲み込んで、父王を静かに見上げる。


「戦乱の時代に血が絶えるのを防ぐという大義名分で、レオナルド王は正妃の他に後宮に9人の側妃を抱えていた。その側妃の一人がモニカ・グリフィン伯爵令嬢。王命にて後宮に召し上げられる前は王弟ジャスティンの正妃となる予定の婚約者であり、『剣聖』アレン・グリフィンの実妹だ」


 弟の『剣聖』だけではなく、婚約者まで『王命』で奪っていたのか。随分と私利私欲に塗れた『王命』の使い方だ。

 この場で『王命』を出せる立場ではない二人は、同じ意見を「不敬であるから」口には出さずに胸の内に仕舞う。


「モニカ・グリフィンは、兄のアレンと同じ真紅の髪の大層美しい女性だったそうだ。伯爵家出身と、後宮内では身分が低かったために大分虐げられたようだが、大輪の紅薔薇に例えられるような美女だったと言う。彼女は後宮でジャスティンとアレンの戦死を聞いたが、兄の遺言を守り、自害はしなかった」


 ジュリアンは、一つ息を吐き、噛み締めるように次の言葉を発した。


「この先、王が歪めるであろう歴史の真実を、生きて伝えてくれ。『剣聖』アレンは、レオナルド王の側妃となった妹モニカに、そう遺言を残したそうだ」


「真実を語り継ぐ()()()とはモニカ・グリフィン嬢のことでしょうか」


 アンドレアに問われ、ジュリアンは重く頷いた。


()()()そうだ。兄のアレンが生きていた頃から聞いていたレオナルド王の横暴。戦後帰還した、ジャスティンによって無駄死にを免れた戦争孤児から聞いた話。モニカ自身が王から受けた仕打ち。それらを、モニカ嬢は()()()()()に伝えた」


「側妃のモニカ嬢の息子と言うことはレオナルド王の息子ですか?」


「そうだ」


 アンドレアは意外そうだが、モニカの受けていた仕打ちを聞けば、息子が父親寄りに育たなかったであろうことも納得した。

 レオナルドとジャスティンは9歳離れた兄弟だった。ジャスティンの婚約者だったモニカは、ジャスティンの更に4歳下。

 レオナルドは13歳も年下のモニカを、15歳の婚姻可能年齢前に、『保護』の名目で王命により後宮に召し上げ、ジャスティンから引き離した。

 ジャスティンが無抵抗で『王命』に従い、最前線に向かったのは、戦争で功績を挙げれば()()()()()()()()()()下賜してやると言われたからだ。


 後宮のモニカを訪れる度に、レオナルド王は、最初から二度と会わせる気など無かったと言うのに、命を懸けて死んだジャスティンを「間抜けだ」と侮辱して嗤った。

 ジャスティンの死後も、ジャスティンが大切にしていたモニカをジャスティンの代わりに甚振り、貶め、侮辱し続けた。それは、息子が生まれてからも、レオナルド王が死ぬまで続いたと言う。


 モニカがレオナルド王の息子を産んだのは、レオナルド王が39歳の時だ。

 息子の名はジーン。正妃の王子ではないので、ミドルネームは持たない。

 レオナルド王は41歳で暗殺されたので、ジーンは2歳までしかレオナルド王の言動を実際に見聞きすることは出来なかったが、彼は生まれた時から周囲の大人達の言葉を理解し、記憶するような『天才』だった。

 ジーンは父親が国王であり卑劣漢であることを、何も知らない幼児の顔で理解していた。

 そして、父親が死んだ後、母のモニカに協力を申し出た。


「ジーン・クリソプレーズと言えば、二代前の王の末の異母弟であり、先王の宰相を務めたこともある方ですよね。傑物とは聞いていましたが、生まれた時から大人達の言葉を理解していたとは驚きました」


 感心したように言うアンドレアに、ジュリアンは「ん?」と首を傾げた。


「お前もだぞ」


「は?」


「お前、熱を出す前の記憶がほぼ無いだろう。私も調べさせて報告が来るまで知らなかったが、お前は0歳の頃から大人達の会話を理解していたらしいぞ。アイリーンに聞いてみるといい」


「はぁ」


 他人の話として聞けば「凄い天才だな」と思うが、記憶に無い自分の赤ん坊時代も「同じだった」と言われても、微妙な反応になってしまうのは致し方の無いことだ。

 アンドレアの微妙な表情を眺めながら、ジュリアンは話を続ける。


()()の母の話をまとめ、ジーン・クリソプレーズは()()()()()()()として、先王コンラッド・ルタ・クリソプレーズを選んだ。私の父であり、お前の祖父に当たるな」


「はい」


「レオナルド王が歪曲した()()は、既に国の内外に広く知れ渡ってしまっている。今更()()を表に出せば、クリソプレーズ王家の信は地に落ちる。守るべき多くのもののために隠さねばならんが、()()()()()()()()には、真実も伝え継がせなければならない」


 ジュリアンは、はっきりと言った。アンドレアが『王の気質を継ぐ者』だと。

 王の位に着かずとも、冠を戴かず玉座に座ることが無くとも、ジュリアンが王位を退いた後に、このクリソプレーズ王国の『王』であるべき者は、アンドレアである。そう、宣言したのだ。


「ジーン・クリソプレーズは43歳で凶刃に倒れた。天才であり辣腕の宰相であった彼の方は、敵も多かった。そして時代が悪く、側室腹とはいえ王族であったというのに、人材が足りず専属護衛が付けられなかった。()()を伝え継がれた先王コンラッドは、不慮の死等でそれを知る者が途絶えることを怖れ、信頼する同母弟エドワード・マニシャ・クリソプレーズと、次代の王となる私に伝え継いだ」


 幸い、先王も先王弟も未だ健在ではあるが。そう付け足して、ジュリアンは更に続けた。


「アンドレア。お前が誰に伝え継ぐかは、お前がよく見て判断すると良い。お前は『剣聖』に護られている。滅多なことでは伝え継ぐ前に死ぬことは無いだろう。だが、この歴史を繰り返さぬように、この()()()()は、必ず後世に継がせなければならぬ。クリソプレーズ王家が存続する限り、必ずだ」


「心得ました」


 アンドレアが決意を込めて父王を見詰め返すと、ジュリアンは、ホッと息を吐き、僅かに頬を緩めた。


「ジーン・クリソプレーズとお前が同じというのは、その才だけではない。実は、お前とジーン殿は顔貌がそっくりでな。違うのは髪の長さくらいだ。ジーン殿は腰まで伸ばして一つに結んでいたからな。今のお前を祖父様達が見たら驚いて引っくり返るぞ」


 緩めた頬を完全にニヤリと歪め、ジュリアンは揶揄うように息子を見遣る。

 会ったことの無いご先祖様に瓜二つと言われても、やはり微妙な反応しか返せないアンドレアだが、しばらく会っていない祖父と大叔父が引っくり返るほど驚くと聞けば、少しばかり楽しみではあった。


「そうそう。大事なことを伝え忘れていた。『レオナルドの名を王族に使うな』。大人になって真実を知った時に暗愚と同名だと可哀想だろう?」


 冗談のような口調で付け加えられたが、その内容は重い。

 お飾りとはいえ『次期国王』として後継者を作るのは、()()を聞かされていないエリオットだ。

 ただでさえ、(エリオット)が得る筈だった全てを奪ったと恨まれているだろうアンドレアが、自分の子は持つことが出来ないのに、兄の子供の名付けにまで口を出し、場合によっては強制的に変更させることになる。

 先々まで、アンドレアは『クリソプレーズ王国の悪役』を担い続けなければならないのだ。

 だが、国王ジュリアンはアンドレアに期待をかけている。「お前なら、出来るだろう?」と。


 天才は得だと羨む凡人は、天才ならば無茶振りを無茶だと感じず、心が傷つくことも、憎まれて嫌な思いをすることも、無いと思っているのだろうか。

 ジルベルトは、そっと案じるようにアンドレアを見遣る。そして、完璧な王子様スマイルを装着している主を確認し、執務室に戻ったらモーリスに『アンドレア専用ドリンク』を淹れてもらうことを決めた。


「そう言えば、大叔父上はこの話を知らされているようですが、叔父上にはお話しにならないのですか?」


「あの子は、こういう汚れた真実を聞かされるには()()()()()からね」


 あの子・・・。

 アンドレアとジルベルトの心の声が重なった。40歳のゴリゴリマッチョなオッサンだよな。


「以前も叔父上が王族の突然変異のように優しく純真だと聞きましたが、よく砦で無事でしたね」


 辺境の砦は、自称帝国からの侵入を防ぐ目的で構えられている。

 こちらから侵攻はしないが、戦闘に明け暮れるような暴力に塗れた環境だと、資料では伝えられているのだ。

 優しく純真な人間が、そんな環境で無事に生き延びることが可能とは思えない。王族だからと他の軍人らに護られていたとしても、信じ難い。


「ああ、それは大丈夫だ。戦闘になればスイッチが入るから」


 王族とは思えないほど優しく純真で、戦闘が始まればスイッチが入るバーサーカー。

 あまり一緒に仕事をしたくない。

 事実を認識して、アンドレアとジルベルトの心の声が、再度重なった。


「私が()()として語るのはここまでだが、()()に明記されていない戦乱からその後の時代辺りの事情をよく調べてみると、学院長が何故あそこまで横暴を許されてしまったのか、何か見えてくるかもしれないな。では私は休むぞ。お前達と違って若くはないからな」


 軽々と玉座から立ち上がり、手を振って第三謁見室を出て行く国王ジュリアンを見送るアンドレアとジルベルト。

 いつもながら飄々として、根本は掴み所がない。


「俺達も戻るか。休めないが」


「アンディは、お茶一杯分は休憩を入れてください。先程の陛下の()()()なら私が調べておきます。体力なら私の方がありますから」


 ジルベルトが気遣うと、アンドレアは苦笑して、自分より少し高い位置にある、専属護衛の制服に包まれた肩に寄りかかった。

 実は結構参っていた。体力的にも、聞かされた話を受け取り、飲み込み、消化する作業にも。


「頼んだ、ジル」


「お任せください。いっそ、お姫様抱っこで執務室まで運んで差し上げましょうか?」


 戯けて言うと、アンドレアがブハッと吹き出した。


「今度は俺が女役で噂が出るかもな」


「またまた地獄絵図ですね」


「ハリーが女役よりマシだろ?」


「確かに」


 顔を見合わせ笑い合う。

 廊下に出れば、もう弱みは誰にも覚らせない。

 名高き『剣聖』を従えて、アンドレアは王族オーラを遺憾なく放ちながら堂々と執務室へ向かった。

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