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15歳の登校風景

本日二本目です。


 15歳のアンドレアは、同い年の側近達と共に貴族学院の二年生として通学していた。

 学院に入学するような年齢になれば、中央の政務に近い家の者は親から多少の話は聞かされているもので、現在のクリソプレーズ王家の『粛清係』のような役割のアンドレアは遠巻きにされている。

 黙って立っていれば、見ているだけならば、サラサラの銀髪にクリソプレーズの瞳の爽やか王子様スマイルの絵になる美青年なのだが。

 探られて痛い腹のある貴族の家の子は、アンドレアに近づいてはならないと親から厳命されているし、痛い腹が無くても流血の付き纏うおどろおどろしい噂を耳にしていれば、取り分け女生徒は近寄って来ない。


「モーリス、今日の日替わりランチは何だ?」


「鹿肉ソテーですね。料理人の甥が大猟だと差し入れたそうです」


「ジル様は鹿と熊どっちが好きですか?」


「闘って楽しいのは鹿かな。爪の攻撃より角の攻撃の方が変則的でいい」


「ジル、肉の話じゃないのか」


「解体は熊のほうが面白いと思う」


「いや、だから肉の・・・。モーリス、授業の変更は?」


「剣術の実技にジルとハリーを護衛で連れてくるなら、参加しないよう言い聞かせておいてほしいと」


「ジルはもう『剣聖』だから参加してないだろ?」


「二人には威圧や闘気や殺気を飛ばさないで欲しいそうです」


「お前ら俺の授業見守りながら()だけでじゃれ合いするなよ」


「じゃれ合いの殺気くらいでビビるなら、刃物を扱っても高が知れていますけどね」


「正面からアンディの笑顔を見ると三日以内に死ぬというジンクスがあるそうだよ」


「俺は都市伝説かよ」


「あ、俺はモーリスに冷ややかな目で見下されて罵倒されたいって話を聞いた」


「変態仲間情報ですか」


 遠巻きに、とても遠巻きに畏怖の視線で注目されているので、彼らが登校時に実にくだらない会話を交わしていることを、生徒達は誰も知らない。

 アンドレアと右腕のモーリスは噂もあって畏怖の対象だが、ジルベルトは『不可侵の麗騎士様』として夢見る乙女達のハート型の視線を集中砲火である。お嬢さん方はアンドレアが怖いから、あくまでも遠巻きだが。

 ハロルドも長身筋肉質の美形騎士なのだが、「ジルベルトの犬」発言が有名なので、別の意味で遠巻きだ。


「・・・ジル様への女共の視線が鬱陶しい」


「お前、無害な女生徒に殺気飛ばすなよ」


「ハッ。女が無害なものですか! 奴らの本性は悪辣な加虐趣味者です! 男が抵抗すれば悪いのは一方的に男だと世の中が味方することを分かっていて鬼畜の所業をニヤけ顔で行うのです!」


「ハリー、君・・・あぁ、姉君が三人いるんでしたっけ」


「茶会や夜会でも妙に女性に素っ気ないと思ったら、苦手だったのか?」


「苦手などと温い言葉では表せません。奴らは・・・俺の天敵です」


「克服しろ」


「ジル様今日も絶対零度が快調ですね! 癒やされます!」


「絶対零度って癒やされるのか・・・?」


 王子様スマイルのアンドレア。無表情で手帳を捲るモーリス。対外的な静かな微笑を貼り付けたジルベルト。好青年風笑顔を貼り付けたハロルド。

 四人とも、ほとんど唇を動かさずに話せるために、この会話風景に注視する遠巻きのギャラリー達の脳内変換は、「次はどの家を潰そうかな」になっている。

 ほとんど唇を動かさなくても、遠目でも、会話が読み取れてしまうコナー家の今日のアンドレア番は、「コレ、記録して当主様に報告したくねぇな」と乾いた笑いを浮かべた。

本日中に、もう一本投稿します。


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