微睡む亜神が見る夢は
嫌な感じの創世記っぽい話。
ジルベルトは、情報の波間を揺蕩うように、眷属となった妖精達から流れ込む記憶を眺めていた。
最も古い記憶は、初めに生まれた時のものだ。
この世界の『神』は、どうやら四柱らしい。
男神が二、女神が二。二組の兄妹神だ。
最初の妖精が創られたのは、「世界」が出来上がった後だ。
神々が「この世界」を創造した順番は、「世界」「妖精」「人間」の順のようだ。
「世界」は、自然と人間以外の生き物か。
この世界の人間以外の生き物には、魂が入っていないらしい。
そうすれば創造に使う神力を節約出来る、などと言っている。
同じく「神力を節約」する為に、神々は、この世界の「人間」の仕様を、「種族は一種類、器の耐久性は低め、魂は循環して使える」という内容で選択して創造した。
同じ仕様で「人間」が創られた「世界」が、この世界の近辺には多いらしい。
だから、創造に多くの神力が必要になる「人間に入れる魂」が、この世界で危険レベルまで減った時には、近所の他所の世界から融通してもらおうなどと話し合っている。
・・・それは、その「他所の世界」の神やら管理者やらの了解を取り付けての「してもらおう」か?
いまいち、妖精の記憶の中の奴らを眺めていると不安と疑念が擡げて来る。
この世界では『神』の眷属である「妖精」の生まれ方には、3つのパターンがあるようだ。
1つ目は、神々に直接創造されること。
この世界の「妖精」は中々高いランクの眷属らしく、最初に創り出す時には多くの神力を必要としていた。
尤も、実際のところはジルベルトには分からない。
ただ、妖精の記憶の中で、この世界の神々が、「こんな高ランクの眷属を独力で創るのは無理だ」と愚痴りながら、四柱全員で力を注いで一体ずつ生み出し、一体生み出すごとに疲弊した様子でグッタリしているだけだ。
妖精の生まれ方の2つ目は、自然豊かな場所でエネルギーが満ちた時に、その場の最も濃いエネルギーに属した妖精が発生、というものだ。
3つ目は稀少なパターンだが、大人になった妖精が力を蓄えて分裂するようだ。
この場合、初めから大人の妖精として生まれる。
人間が数を増やすまでの間には、主に2つ目のパターンで数多くの妖精が生まれ、神々は、「順調だ」、「上手く行った」と、手を取り合って喜んでいた。
神々は妖精が順調に増えたことで調子に乗ったのか、当初に四柱で話し合っていた計画では、「人間は各大陸に百ずつ創って配置し、その後は、危険レベルまで減らない限りは自然増を見守り、自然増した器に必要な魂だけを創る」としていたものを、気の向くままに「魂入り人間」を創って増やし続けた。
・・・と言うか、この世界には大陸が他にもあったのか。
当初、創られた「世界」では、四つの大陸と小さな島々が在り、それぞれに近隣の世界の動植物を参考にした生き物が配置されていたようだ。
当初の計画では、四柱の神々が各一大陸の「人間」の創造を担い、百ずつ配置する筈だった。
だが、それぞれで自分の担う大陸に百の「魂入り人間」を創って配置した後、追加で創った「魂入り人間」を、「お裾分け」だの「プレゼント」だの言いながら、他の神々の担う大陸にガンガン配置した。
・・・うん。やっぱり彼奴等、無計画な阿呆どもだな。
興が乗った神々が創り出す「人間」は、その内、かなり出来の良い個体も現れ始める。
見目や性能の出来だ。
その「出来の良い個体」が集まり、それらだけで繁殖した一族が、古代王国の王家の始まりだった。
古代王家の元となる「人間」達の「創り手」は、一柱の神に偏らず、四柱全ての神々の作品が含まれていた。
その為に、「神々の贔屓」が始まってしまった。
妖精の記憶の中、神々は夢中で古代王家の繁栄の様子を観覧している。
自分達が創った中の「自信作」同士が掛け合わさって、更に美しく、更に高性能な「人間」が生み出されて行くのだ。
神々は、それはもう、夢中になった。
他の大陸の「人間」の繁栄を見守ることや、古代王家に生まれる人間以外の魂の創造が、おざなりになるほどに。
その結果、古代王家はやがて大陸全土を統一支配し、古代王家が支配する大陸以外の大陸や島々に暮らす人間は、文明の発達も遅れ、人間が増える数も伸び悩んだ。
それでも、神々は古代王家だけに注目し、長期に渡って贔屓しながら見守り続けた。
古代王家が大陸を統一支配する過程で、古代王家による一方的な蹂躙や虐殺を含む戦乱が幾度も繰り返され、妖精が邪に堕ちて『ナニか』が発生した。
だが、神々は古代王家による蹂躙や虐殺を熱狂して見物するだけだ。
将来的にマズイ事になった時の為の話し合いすら行われない。
神々は古代王家の活躍を、「強き者が弱き者を支配するのは自然の摂理」、「弱者が淘汰されるのは世界の進化」、「善きこと」、「愛し子達の優秀なこと!」などと、自分達の創った『世界』を自画自賛しながら悦に浸っていた。
そして、最初の「世界の時を戻す」儀式が行われる。
始まりは、古代王家の人望厚い優秀な王太子が不慮の事故で亡くなり、それを「無かったこと」にしたい父王の嘆きだった。
父王の嘆きに応えて『ナニか』が世界の時を戻す邪法を授け、父王はソレに縋った。
古代王族の魂に刻まれていたという「既に消失した邪法」も含め、ジルベルトは儀式の全容を見てしまったが、人間に戻る際には「人間に不要な記憶」は、自身の亜神の力で封印する予定である。
さて、神々は流石に慌て始めた。
世界の時を戻すなど、神の力を使うならば、この四柱の神達が全員消滅するほどの力を費やさなければ、自然な形では成功しない現象だからだ。
尤も、コレもジルベルトには実際のところは分からない。
妖精の記憶の中で、慌てふためく神々が、そんな内容を叫んでいるだけだ。
この辺りで何となく、ジルベルトは、この世界を創った四柱の『神』が『神』という存在の中では、かなり力の低いグループなのではないかと想像し始めた。
有り体に言えば、「落ちこぼれ」か?
神々が慌てふためいている間に、「世界の時を戻す方法」を手に入れた古代王家は、益々権勢を高める。
失敗しても「やり直す方法」を持っているのだ。
怖いものなど無い。
長きに渡り神々の贔屓を受けていた古代王族の魂は、強くて性能の良い「特別製」だ。
お陰で、古代王族は、死んでも再び新たな別の古代王族として生まれ出る。
しかも、「世界の時を戻す方法」と共に『ナニか』から与えられた「魂に記憶を刻む邪法」のお陰で、彼らは王族としての記憶を保持したまま何度も生まれていた。
酷いチートだろう。
そんなチート王族は、四度ほど自分達の都合で勝手に「世界の時を戻す」操作に成功し、勘違いをしてしまった。
自分達こそが、この世界の『神』であると。
まぁ、実際は「成功」とは呼べない状況になっていたのだが。
自分達が支配する大陸以外の状況を知らない古代王族には、成功に見えただろう。
一回目、世界の時を戻した後、神々の贔屓の影響を存分に受けて発展した古代王族の大陸以外の、この世界の地域では天変地異が続発していた。
神々の加護をほとんど得られていない地域に、理を捻じ曲げて「世界の時を戻した」皺寄せが、全て押し付けられたせいだ。
四度も戻せば、他の大陸や島々は、人間の住める環境では無くなり、この世界の「人間」は、古代王族が支配する大陸以外には存在しない状況となっていた。
だが、古代王族の大陸では、彼らが「世界の時を戻す」邪法を成就させる下準備として、「消費出来る人命」の増産政策が執られていた為に、この世界の人口そのものが極端に減少する事態にはならなかった。
慌てふためいているだけの神々が、何ら対策を取らずとも、「人間」は一つの大陸でしか生まれなくなったのだから、創造せずとも循環する魂が不足する事も無く、「魂を入れる器」は人間が勝手に生む為に不足しない。
また、その「器」も、古代王族らが「消費する為に増やした人間」である為に、短いスパンで交代となるのだから、このサイクルは破綻すること無く維持されてしまう。
妖精の記憶の中の神々が、「どうしよう」、「上の方々に知られてはマズイ」、「破綻しない内は感知されない」などと囁き合っている様子を見れば、いっそ破綻して、奴らより上位の『神』にバレた方が良かったのでは?
そう、ジルベルトは思うが、今更思ったところで意味は無い。
ただの「個人の感想」である。
慌てふためいていただけの神々は、古代王族が「勘違い発言」をしたことで色めき立った。
やっと手を出せる、と。
古代王族が『神』を自称するまでは、「世界の理」を捻じ曲げたという事実だけでは、「人間」である古代王族へ『神』が直接に神力を振るって罰する事は、神々自身が「世界の理」に反してしまう為に、出来なかったのだ。
コレも、妖精の記憶の中で奴らがそう言っていただけだが。
聞いているだけでは良く分からないが、どうやら奴らが「世界の理」に反した行いをすれば、「上の方々」から何らかのペナルティがあるらしい。
絶対にやってはいけないと、「上の方々」とやらに厳しく言い含められているようである。
ジルベルトの想像になるが、厳しく「上の方々」に言い含められているのは、この世界の『神』である四柱が、「上の方々」に目を付けられるほどの「落ちこぼれ」だからではなかろうか。
色めき立った四柱の神々は、よく調べも考えもせずに、速攻で古代王族を滅した。
散々に目をかけて贔屓していた反動か、衝動のままに、「古代王族として生まれたことのある魂」の全てを消滅させた。
迂闊に過ぎるだろう。
古代王族は、万能感に酔い痴れて狂っていたが、この世界の神々に比べれば危機管理意識を持っていた。
神々に喧嘩を売る前に、「世界の時を戻す儀式」という保険を掛けていたのだから。
しかし、彼らも自分達の魂が消滅される事態は想定外だったことだろう。
そして、戻った世界には、どんな犠牲を払っても辻褄の合わせようが無い大きな矛盾が発生する。
妖精の記憶を見れば、この世界が壊れた元凶は、どう考えても四柱の「この世界の神々」だ。
少しでも矛盾の辻褄を合わせようと「世界」が払った犠牲は、古代王族が支配していた大陸以外の「世界」の閉鎖である。
当時、古代王族が支配していた大陸から目視出来る範囲を超えれば、「世界」は虚ろな闇が広がるのみとなっていた。
その後、妖精が語った『神話』の通り、神々は地上に石を投げて人型の眷属を創った。
そこで、四柱の神々の力は尽きかけるほど衰え、暫くの間、眷属に命じるだけで自らが『神』の力を使って働くことは出来なくなった。
が、それが却って吉と出た。
口出しはするが、神力まで使った余計な贔屓や無計画な創造が為されなかった事で、「世界」は「妖精」と「人間」の力によって少しずつ癒やされて行った。
虚ろな闇が広がるばかりだった地域も、実体の無い蜃気楼のような海や島の影から始まり、徐々に影を濃くして植物の生えた大陸の姿を取り戻した。
一度は虚ろな闇に消えていた「世界」の一部が実体を取り戻すと、一度も消えた事の無い古代王族が支配していた大陸から鳥類や虫などが渡り、魂を持たない生き物の姿も復活する。
未だ他の大陸は「人間」が住める環境には至らないが、「世界」の回復は、緩やかであっても順調に見えた。
その状況を崩したのが、前回のダンテ・ビセント・メメットである。
だが、ジルベルトは、それも、この世界の神々が元凶じゃないかと疑っている。
この百年くらい前辺りから、神力を使い尽くしていた四柱の神々が、力を取り戻し始めていたのだ。
そして、力を取り戻した神々は、早速余計な事を話し合い始めた。
過去に「世界の時を戻す」儀式が行われた時、捧げられた魂の代わりは、やはり異世界から連れて来られていた。
だが、その頃の儀式では、一回につき魂は一つ、それも毎回違う異世界から連れて来ていた。
・・・多分、こっそりと盗み出していた。
奴らは、「露見するとマズイから同じ世界からは持って来ない」と言っている。
そんな手癖の悪い神々が、「力も戻って来たことだし、世界の回復を早めよう」と言い出した。
その為の方法として挙がったのが、「異世界からの使える魂の輸入」だ。
「輸入」などと言っているが、こっそり盗んで来るつもりだろう。
何故なら、話し合いの場で、「沢山持って来ても気付かれない世界は何処だ」という議題が提示されている。
話し合いで「魂を輸入する世界」が決定した後は、「どんな魂が世界の回復を早めるには必要か」という議題が提示される。
まぁ、色々と好き勝手な要求が列挙されていたが、話し合いを眺めていれば、ジルベルトの前世である「素良」が狙われた理由は、何となく見当が付いた。
他にも自覚の無い特質が付随しているのかもしれないが、取り敢えず『外れない勘』が狙われたのは確定だ。
ソレが魂に付随していた特質だという自覚は全く無かったが、「何故か外れない謎の勘の良さ」を、『先見の神力』とやらの代わりに求められていたのだと思われる。
『先見の神力』とは、『神』が自分で創造した世界の未来を見通す力のことらしい。
だが、この世界は、『神』の意図とは関係なく何度も無理矢理に時を戻され、大きな傷を負って壊れかけている。
あまりに繰り返し理を歪められた結果、この世界の『神』には、この世界の未来が見えなくなっていた。
話し合いの場では、「未来が見えるようになれば対応が後手に回ることが無くなる」などと、尤もらしい事をほざいていたが、正確に見えたところで、正しい対応が奴らに出来るとは思えないのだが。
妖精の持つ過去の記憶を眺めている、ジルベルトの両眼が、神々の言動を見る度に胡乱げな半眼に閉じられて行く。
ダンテよりも神々を元凶と疑うのは、続く話し合いの議題のキナ臭さからだ。
『異世界から魂を沢山持って来る理由をどうするか』
持って来てもバレなさそうな世界は目星をつけた。
どんな魂を狙うかも決めた。
だが、実行は、後々バレた時に、自分達がお叱りを受けずに済むような理由がつけられてからにしたい。
身勝手な話し合いは、妖精の耳目のある場所では決定が下されなかったが、挙げられた案の中には、「魂を捧げる儀式を利用」という物もあった。
非常に怪しい。
この後、神々は妖精の耳目を警戒するように、コソコソとした動きが目立つようになる。
そうしている内に、メメット王家は古代王族の墳墓遺跡から発掘した副葬品の中に、呪いが記された古い巻物を見つけ出す。
・・・その巻物、おかしくないか?
古くは見えるが、古代王国の時代に、その薄さと丈夫さの紙は存在したか?
呪いには、種類に関わらず、必ず妖精が生贄として必要だ。
まさか、奴らは、自分達の眷属を生贄にする禁術を、人間の手に渡るように仕組んでいたのか?
肝心の「現行犯の現場」は妖精の記憶の中に無いので断言は出来ないが、呪いの裏にも『神』の暗躍があるならば、もう「最低のクソ野郎」の呼称でも足りない下衆じゃないか。
メメット王国は、ただでさえ「石の名前を戴く国」の庇護下に無い為に、邪な存在の影響を受けやすかった。
そんな国の王家が、邪に堕ちた『ナニか』の「存在理由」となっている、「世界を壊す動き」を支援するような方法を手に入れたら、自重などしないだろう。
妖精の数が減れば世界は荒れる。
世界が荒れれば人間の心も荒む。
荒れた心の人間が、「無かったこと」にしたい事件に遭遇したら───。
その時に、偶然、自国の領土に在る遺跡から発掘した「世界の時を戻す方法」を記した石板を、所持していたら───。
ジルベルトは、流れて行く『一度目』の世界の様子を静謐に眺める。
今、親しくしている者達の、喜ばしくない末路も。
自分を含む転生者達が「本来の彼ら」だった時の、想像以上の生き様と末路を。
そして、深刻そうな顔をしながら妖精に嘯く四柱の神々。
曰く、
「消滅させたと思っていた邪法が古代王族の廟から発掘されてしまった」
「再び世界の時を戻す儀式が既に行われてしまった」
「この世界を救う為に、この窮地を逆に利用するのです」
そして、命じた。
「妖精は人々の願いを聞き、集めて来なさい」
神々は、妖精が集めて来た「人々の願い」の中から、「新しき世界を存続させる力となる願い」を選別し、「世界を救う為に叶えなさい」と命じる。
それが、ジルベルトと、彼の周辺人物に偏っていたことについては、全てを叶えるには力が不足しているから、「新たな世界」で「悪しき者」に対抗し得る者達の願いを優先したのだと言い訳をしていた。
ジルベルトは『一度目』の世界の終わりまで、黙して眺めた。
大陸全土を巻き込む戦乱の世で、多くの人命と妖精の命が散り、世界が時を戻すまで。
クソ野郎共は、もしも「上の方々」に、やらかした諸々が後からバレたとしても、その時、結果として「世界」が回復していれば、「実行犯のダンテ」の口封じが済んでいれば、「お叱り」案件にはならないだろうと期待していたのではないか。
もし、ジルベルトの眷属化に成功していれば、「実行犯ダンテの口封じ」以外にも色々と、「上の方々」にバレたらマズイ諸々を、「何事も無かったように見せかける為の後片付け」をさせるつもりだっただろう。
例えば、「妖精を生贄にする『呪い』という禁術を、人間から完全に失わせる」とか。
『神の強制力』というものは、「人間」に直接行使すれば「世界の理」に反するが、自身の眷属であれば、神力と多少の代償のみで行使出来るらしい。
代償は、「同種の眷属を一定期間創れなくなる」というものだが、ジルベルトと同種の眷属を創る予定が無ければ、代償など無いに等しい。
もし、ジルベルトの眷属化に成功していれば、あの神々ならば確実に『強制力』を行使して、ジルベルトに「地上の掃除」を命じていたことだろう。
その「掃除」内容には、「上の方々」にバレる前に「呪いを知る人間を殲滅しろ」というものが含まれただろう。
その命令は、ジルベルトにとっては、「大切な者達の殲滅」にもなる。
だが、眷属となってしまった後では、『神の強制力』には逆らえない。
この世界の『神』は、人質を取り、妖精の影から騙すように誘導し、結局は、眷属にした後は、ジルベルトが自らの手で大切な者達を殺す状況を作る気でいたのだ。
既に、許すつもりなど無かったが、ジルベルトの「この世界の『神』」への殺意が、留まるところを知らない成長ぶりで膨れ上がって行く。
この世界の『神』の悲願が「世界の回復」であるならば、それは、この世界の『亜神』として助けてやろう。
貴様らの、その身を以て、世界に力を還元すればいいのだから。
思い付きや衝動で、場当たり的に余計な事ばかりする『神』など、「人間」にも「人間」を愛する「妖精」にも要らない。
『神』が余計な手を出したせいで歪んだ部分に関しては、『亜神』が力を貸しても構わないが、基本的に、「人間」の問題は「人間」の手で解消するのが正常な「世界」の在り様だと、ジルベルトは考える。
こうして微睡んでいる間にも、ジルベルトの眷属になる妖精は増え続けている。
そのせいで、この世界の四柱の『神』の力は随分と縮小しているようだ。
今や、四柱の神々が抱える眷属を合わせたよりも、ジルベルトの眷属となった妖精の方が数が多い。
あの力の縮小ぶりでは、新たに眷属を創り出すことも不可能だ。
さぁ、そろそろ目を覚まそう。
亜神として、人間として、それぞれの『敵』と戦う日々の幕開けだ。
ここまでで、今後の展開の伏線を詰め込んだ『因縁あるいは伏線編』は終わりです。
本章で詰め込んだ伏線は、本編次章や幕間などで回収予定です。
次の本編連載再開は、年内は難しそうです。秋冬の仕事の予定が未だ全く読めないので。
気長にお付き合いいただけると幸いです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
再会を楽しみにしています。