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人物紹介(同盟国王族・ネタバレ多め)

 年齢は、『因縁あるいは伏線編』開始時点のものです。


 各王家の特徴などには、「異世界だから」としか言えない「んなアホな」という内容もあります。


✜アイオライト王国✜


【サミュエル・ヴァールハイト・アイオライト】

29歳。

アイオライト王国の現在の国王。

クリソプレーズ王国の王太子妃となったクローディアの同母兄。


 外遊経験の乏しかった前国王ザッカリーの考え方に危機感を覚えたザッカリーの生母(故人。元クリソプレーズ王女でクリソプレーズ王国前国王コンラッドの同母姉)の指示で、外交に明るいグレイソン公爵を補佐に付け、少年期から同盟国を含む諸外国を巡り、外交の場にも臨席して経験を積んだことで、「アイオライト的な常識」に囚われ過ぎていない。

 苦しい時期に、親世代と異母妹の尻拭い込みで王位を継いだ苦労人。



【ザッカリー・エルフォルク・アイオライト】

53歳。

アイオライト王国の前国王。


 側妃イザベラとの間の王女アデライトを溺愛して人の道を誤らせた他、自国の筆頭公爵家であるグレイソン家と王家の縁組を諦められず、押し通そうとしたことでグレイソン公爵家と溝を作り、更に、クリソプレーズ王家が庇護を公言し、クリソプレーズ王国の国益に大きく寄与するクリソプレーズ王国子爵家の令嬢ニコル・ミレットへの対応を誤り、失脚。

 現在は、アイオライト王都郊外の離宮にて療養と言う名の幽閉中。


 ザッカリーは王族として特別に無能だったわけでは無く、しっかりした側近が居れば問題を起こさなかった程度の()()()()

 王の寵愛がイザベラにあることを周囲が勝手に汲んでいても、王とイザベラ自身がその想いを表に出したことは無いし、正妃を誰よりも尊重し、臣下にもそうであるよう命じていた程度には自分の立場を自覚していた。


 アデライトへの甘やかしは、イザベラへの愛を表に出せない反動が原因。国外へ出さず継承権も持たない王女ならば、側妃であるイザベラには注げない愛情を注いでもいいのではないかと考えていた。

 だが、無自覚に「アイオライト的常識」にどっぷりと浸かっていたことで、注いだ愛情はザッカリーの想像を超えたアデライトの暴虐を招き、短期間で国力を飛躍的に増したクリソプレーズ王国の「国柄」との齟齬も引き起こし、それらの失態は時流的に許されず、国の為にアデライトの()()と自身の退位・幽閉を受け入れた。



【イザベラ】

53歳。

ザッカリーの側妃の一人で、ザッカリーの側近達からも「寵姫」と認識されていた。

アデライトの生母。

生家はアイオライト王国のモリス侯爵家。ザッカリーとは幼馴染の関係でもある。


 ザッカリーとは子供の頃から想い合っているが、それを言葉に出したことや書き記したことは無い。

 側妃となった後も、正妃であるオードリーを立て、自分の立場を弁えて過ごして来た。

 アデライトの生母だが、何故自分とザッカリーの娘があれほど恐ろしい人格を備えてしまったのか理解できない。

 生前のアデライトを何度も窘めていたが、側妃ゆえに『王女の教育』に過剰な口出しも出来ず、グレイソン公爵家に申し訳無いと思っていても『王家の政治的判断』への口出しなど不可能で、長く苦悩して来た。


 アデライトの死で安堵してしまった自分に、また深い罪の意識を抱え、ザッカリーに望まれて幽閉先に付き添った。

 離宮では、質素なドレスを着用し、ザッカリーの身の回りの世話をする使用人のように過ごしていた。



【オードリー・アイオライト】

51歳。

アイオライト王国前王妃。ザッカリーの正妃でサミュエルとクローディアの生母。

元パイライト王女(パイライト王国前々国王の側妃から産まれた王女)。パイライトの現国王より歳下の叔母。


 血統や身分階級を殊更に重視する国柄のアイオライト王国が、側妃腹の王女である自分を正妃に迎え入れたのが、「ザッカリーにはイザベラという『本命』が居るので、ザッカリー本人も彼の側近達にも、政略結婚の相手となる正妃への思い入れが無かったから」だということに、輿入れして直ぐに感付き、理解して納得もしている淑女。

 嫁ぎ先での扱いは、正妃として尊重され、冷遇や軽視されるものでも無かったので不満も無い。

 ただ、誰も口には出さない「事実」に気付いているだけ。そして、それをオードリーも口に出さない。


 ザッカリーの退位と同時に、ザッカリーの幽閉先とは異なる、王宮の敷地内の小離宮に移り住んで静かに余生を過ごしている。

 だが、たまに王位を継いだ息子が相談事に来たり、まだ幼いザッカリーの側妃の子供達が日替わりで訪れるので、意外と賑やかな余生になっている。

 イザベラ以外のザッカリーの側妃達については、子供達は王室に残されるが、生家の領地へ戻ったり、側妃に上がった当時は身分違い等で結ばれることが叶わなかった想い人の元へ下賜されたりと、可能な限り本人の希望に沿う余生を送れるよう、『王妃の最後の仕事』として尽力した。


 アデライトについては、「王の寵姫の娘」であった為に、他の側妃の子供と同じように躾に口を出すことが憚られ、アデライトの()()()()()()が他の子供達の将来に影を落とさないよう手を回しておくくらいしか出来なかった。

 イザベラや他の側妃や王室の子供達からはとても尊敬されていたが、アデライトからは物凄く嫌われ、「愛されていない王妃」と陰で蔑まれていたことも知っている。但し、全く気にしていない。



【クラリッサ・アイオライト】

28歳。

現在のアイオライト王国王妃。サミュエルの正妃。

元パイライト王女(現国王グレゴリーと王妃アビゲイルの間の王女)。パイライト王太子ベンジャミンの同母妹。


 アイオライト王国前王妃オードリー、クリソプレーズ王国現王妃アイリーンと同じく、パイライト王国で生まれ育った王女であり、同盟国の王妃となる為に国外へ嫁いだ。


 パイライト王国は、大陸西側の文化圏の国にしては代々国王の側妃の数が多い傾向があり、その分、当然ながら「王家の子供」の人数も多い。

 更に、パイライト王家には「心弱き者は王家に相応しくない」という家訓もあるため、物理的な殺し合いは御法度だが、熾烈な心情的殺し合いのバトルロワイヤルの中で成長している。

 いずれ王妃となるべく国外へ出されるパイライト王女は、正妃腹・側妃腹関係無く、「心を壊さず勝ち残った強き者」であり、「国外へ出しても恥にならない礼儀や教養が身についている者」である。

 パイライト王家も、クリソプレーズ王家とは別方向で、かなり癖のある血統の王家。





✜パイライト王国✜


【グレゴリー・マールニヤ・パイライト】

55歳。

パイライト王国の現在の国王。

クリソプレーズ王国王妃アイリーンの同母兄。


 アイリーンが幼い子供の頃、「お前が男だったら今の内に殺しているな。なに、優秀だと褒めているのだ」と、1メートル以上の身長差から見下ろしながら殺気たっぷりで言い放った実兄。アイリーンは表には出さないが、今でもこの兄が苦手。


 冷酷だが決断力と統率力の高い王として、臣下や民からの人気は高い。

 パイライト王国は気候が厳しいことも影響し、あまり穏やかで優しい人間を「上位の者」として敬う風土が無い。

 王家は「上位の者」の最たるものなので、この風土の国で臣下や国民から舐められないような王族であることが求められる。

 かと言って、暴君や残虐王が望まれる訳でもないので、他国の人間からは、その辺りの匙加減が理解不能。

 かなり癖のある人物で、クリソプレーズ国王ジュリアンも、同盟国の王として交流を持ってはいるが、警戒もしている。



【アビゲイル・パイライト】

51歳。

パイライト王国現王妃。グレゴリーの正妃。

元モスアゲート王女。故人となったモスアゲート前国王ニコラスの同母姉。


 実はアビゲイルが産まれた後、ニコラスが産まれるまでの間に双子の姉妹が誕生していたが、誕生直後に抹殺されていることを知らない。

 モスアゲート王家の血統は、男性は多胎児を孕ませやすく、女性は多産という特徴があるが、モスアゲートの歴史の闇の中でそれらの事実を記した物が消失し、人々の記憶からも消えてしまった。

 モスアゲート王家に次々と多胎児が産まれては密かに葬られて来たのは、この「記録の消失」が最大の原因。


 ()()()()の上に保持されていたモスアゲート王国王侯貴族の例に漏れず、アビゲイルも碌な教育を母国で受けていないので、知識や教養だけでなく思考力もお粗末。

 ただし、身体は健康で母胎としては問題無いので、実利優先で子沢山が求められるパイライト王室では体良く後宮に軟禁され、只管にグレゴリーとの間に子を成していた。

 モスアゲート王家の女性は多産の血統なので、「産み胎」としては非常に優秀。

 本人は、出産可能年齢を過ぎても生活が保証され身柄を大事に扱われているので、何も不安を感じること無く生きている。


 ほぼ後宮の自室から出て来ないのは、本人の希望もあるが、無教養過ぎて人前に『王妃』として出せない為に、若い間は「妊娠・出産・産後」を理由に、それ以降は「多数回の出産で体力を失い療養している」ことを理由に、護衛という名目の監視を付けて閉じ込めているのが実情。



【ベンジャミン・グローザ・パイライト】

31歳。

パイライト王国王太子。アイオライト王国現王妃クラリッサの同母兄。


 パイライト王家の家訓の中で正妃の第一王子として産まれて生き残った王太子なので、それ相応の精神的強者。

 顔立ちは優しげだが、性質の恐ろしさを同じ王室で育った者達は身に沁みて知っている。

 それでもベンジャミン自身は、父王グレゴリーに比べれば「まだまだ青い、甘い」と自認している。

 酷薄な質だが愛国心は強く、民の幸せの為に心を砕く王族。

 ベンジャミンにとって、民は「守られて然るべき弱き者」であり、貴族は「民を守るべき強さを備えねばならぬ者」であり、王族は「国と民を守るに不足があってはならぬ者」。

 この場合の求められる「強さ」は、個人の戦闘力ではなく、政治力や気概など。だから、強くあらねばならない身分の者は、女性や子供や老人であっても「不足」とあらば容赦しない。



【エロイーズ・パイライト】

30歳。

パイライト王国王太子妃。ベンジャミンの正妃。元カイヤナイト王国王女(カイヤナイト前国王と側妃の間の王女)。現カイヤナイト国王ジェフリーの異母妹。


 側妃腹の王女であるエロイーズが正妃として迎えられたのは、グレゴリーの指示。

 グレゴリーは、自身とアビゲイルの間に産まれた子供達の中に、「血が濃くなり過ぎた家門で発生しがちな病」を疑われる者が複数存在したことで、「そろそろ血を薄めるべき頃合い」と判断した。

 わざわざアイオライト王国の側妃腹の王女を望んで迎えたのは、同盟国の側妃腹の王女と十三年間も婚約しておきながら、同じ国の正妃から王女が産まれたからと婚約者の交代を要請したアイオライト王室への揶揄。

 こういう選択の仕方がパイライト王家気質。


 生母は側妃だが、エロイーズは、異母兄であるジェフリーの手配によって必要な教育を十分に受けて嫁ぐことが出来たため、表に出る公務もしっかりと熟しつつ、ベンジャミンとの間に子を成している。

 将来の国母として表に出せる正妃なので、表に出せないアビゲイルの担うべき役割も負担するエロイーズは、ベンジャミンからは感謝と共に大切に扱われ、グレゴリーからもガッチリ庇護されている。

 多くの子を求められる王室ではあるが、エロイーズは心身の健康にも最大限に配慮され、無理を強いられることは無い。

 扱いの違いに嫉妬した側妃達からの嫌がらせや攻撃もあるが、ニコニコと和やかに振る舞いながら受け流して平然としているタイプ。



【テオドール・パイライト】

9歳。

ベンジャミンとエロイーズの間の第一王子。

パイライト王室は、立太子の際に王からミドルネームを賜る慣わしなので、現在はミドルネームを持たない。

カイヤナイト王国の王女レティシアの婚約者。




✜カイヤナイト王国✜


【ジェフリー・アシェル・カイヤナイト】

45歳。

現在のカイヤナイト国王。

モスアゲート王国前王妃グラシアの同母弟。


 平穏な治世を維持する国王であり、その難度を知る者達からの評価は非常に高い。

 人物の適性を見抜いて適所に配して使うことに長けた君主。

 派手なカリスマ性を持っている訳では無いが、思慮深く、身分階級を考慮しつつも能力主義を重んじる姿勢から、実力者や努力家に多く慕われ、忠誠を捧げられている。

 自身が統治する国では規格外の天才を扱いきれず腐らせてしまうだろうと、イェルトに自由を与える度量を持つ。

 「地味な国」、「地味な王」と評される事も多いが、ジェフリーにとっては寧ろ褒め言葉。


 ジェフリー自身は、同い年の婚約者だったシャーロットが側妃腹の王女であることに、何の不満も無かった。

 しかし、未成年であり一王子でしかなかった当時のジェフリーが、国王と王室の判断に異を唱えることは許されず、婚約者の交代と成婚時期の後ろ倒しに粛々と従った。

 だが、純血主義の重臣達に踊らされて同盟国であるクリソプレーズ王国へ礼儀を欠いた要請をした父王への危機感は、この時、強くジェフリーの胸に刻まれた。


 学院を卒業しての立太子後、ジェフリーは同様の危機感を抱いていた、ジェフリーの生母でもある王妃アレクサンドラと結託して国内の実権掌握を水面下で進行。

 そして、成婚、父王の退位、自身の即位を全て同じ年に、無血・無闘争で完遂。

 ジェフリーを「地味で温和」と侮る者達も存在するが、流れるようにこれらを完遂した政治的手腕と王族らしい決断力は、舐めてかかれば痛い目を見るものである。


 尚、ジェフリーは特段、シャーロットへの個人的な想いがある訳では無いので、実際に正妃として迎えたフェリシティとの間に蟠りは無く、仲は良好。



【フェリシティ・カイヤナイト】

32歳。

カイヤナイト王国王妃。ジェフリーの正妃。元クリソプレーズ王女(クリソプレーズ前国王コンラッドと正妃の間の王女)。ジュリアンの同母妹。


 自分が産まれたことで異母姉シャーロットの人生を狂わせ、シャーロットの人格をも歪ませてしまったことは、「変えようの無い事実」として生涯胸に抱いている。

 また、生母であるクリソプレーズ王国前王妃はフェリシティを産んだ高齢出産の無理が祟り、出産後すぐに静養地の離宮へ向かうと二度と王都へ戻ることは無かった。

 国外へ嫁いだフェリシティは、二年前に亡くなった生母とは、一度も顔を合わせて言葉を交わしたことが無い。

 しかし、彼女は自身の環境を悲観したり卑屈になることは無かった。

 ただ、自身の存在で周囲の人々を後悔させぬよう、生じてしまった犠牲に恥じぬよう、自身の研鑽に励み、感謝と慈しみの心を忘れず日々を生きている。

 実力主義を掲げるクリソプレーズ王国の王族らしい優秀さと、それに驕らず努力を怠らない姿勢は、嫁ぎ先のカイヤナイト王国の気風でも歓迎され、国民人気の高い王妃。



【アレクサンドラ・カイヤナイト】

70歳。

カイヤナイト王国前王妃。ジェフリーとグラシアの生母。元クリソプレーズ王女でコンラッドの同母妹。


 厳格な淑女。

 国を憂い、ジェフリーに手を貸して、自身の夫である前国王オースティンの実権を、オースティンを取り巻く重臣らの権勢も巻き込むように徐々に削いでいった。

 シャーロットの事は憐れと思えど、王族として産まれてそれを乗り越えられず人格を歪めたのは本人の「不足さ」と結論付けている。


 現在は、実質幽閉のような待遇の前国王オースティンに付き添い、王領の別荘の一つで隠居生活を送っている。

 但し、オースティンにはジェフリーから外出制限がかけられているが、アレクサンドラは出入り自由。



【オースティン・アリエル・カイヤナイト】

75歳。

カイヤナイト王国前国王。


 愚王ではないが、国王としては少々気が小さい人物だった。

 そのサポート役を担う王妃として、アレクサンドラとの相性は非常に良かった。


 オースティンの人生の転機は、アレクサンドラが公務で王都を離れている間に、純血主義の重臣達に唆され、十三年間もジェフリーの婚約者だった側妃腹のクリソプレーズ王女シャーロットから、産まれたばかりの正妃腹の同国王女フェリシティへと婚約者を交代させる判断を下した時。

 オースティン自身には「王族のみの血の王女を娶る」という拘りは無かったが、「その方が国の安寧に繋がる」という意見に反論する材料を自身の中に持たず、重臣達の意見を受け入れてしまった。


 オースティンがジェフリーの正妃に望んだのは、最初から最後まで、「よりカイヤナイト王国を安寧に導ける国母」でしかなかったのだから、()()()()()()()()()()()()妻のアレクサンドラや息子のジェフリーから「王として危うい」という評価を下されることは無かった。

 「正妃から産まれた王女の方が価値が高い」、「妻は若い方が好ましいものだ」という主張を、まるで当時のカイヤナイト王家の総意のように広く流布したのも、当時の重臣達。

 その重臣達は既に全員隠居済み。彼らの息子達もジェフリーの側近には取り立てられていない。


 堂々としていてハッキリと物を言う聡明な妻アレクサンドラに、オースティンが依存気味なのは退位した後も変わらない。

 年齢や体力的に、そろそろ寿命でお迎えが来そう。



【ユージーン・マテウス・カイヤナイト】

12歳。

カイヤナイト王国第一王子。ジェフリーの正妃フェリシティの息子。何事も問題が無ければ、いずれ王太子となる筈。

現アイオライト国王サミュエルと王妃クラリッサの間の王女と婚約が結ばれる予定。



【パトリック・イーデン・カイヤナイト】

6歳。

カイヤナイト王国第二王子。ユージーンの同母弟。



【レティシア・カイヤナイト】

5歳。

カイヤナイト王国第一王女。ジェフリーとフェリシティの娘。

パイライト王国第一王子テオドールと婚約している。




✜モスアゲート王国✜


【ブライアン・サイラス・モスアゲート】

25歳。

モスアゲート王国の現在の国王。

リオの同母兄だが、ブライアンは生存も知らない。


 粛清の大鉈を振るい、恐怖政治を敷く暴虐の王と囁く者も居るが、滅びの道しか残されていなかったモスアゲート王国を世界から失わせず、護り往く為に、その身も命も人生も全てを捧げて国と民に尽くす、激変期のモスアゲート王国の黎明王。


 他国から嫁ぎ、たった独りで戦い続け、ブライアンを護り育ててくれた母で元王妃のグラシアを最も敬愛している。

 また、滅び間近だった国の再生を前提とする破壊の為に、『共犯者』となってくれた自身の正妃フレデリカは、唯一無二の『背中を預けられる相棒』。

 国情安定の為に、フレデリカの勧めもあって、即位後に複数の側妃を迎えているが、「お務め」の後も共寝するのは信頼するフレデリカのみ。


 大粛清の際、貴族に対してであっても処刑方法に毒杯を与えず斬首刑とし、罪状によっては晒し首にされた元貴族も多いことから、『首蒐集の粛清王』の渾名で恐れられる。

 雌伏の間は怠惰で無能な王子の演技で『昼行灯』と呼ばれていたが、本質は真面目で責任感の強い性格であり、王としての覚悟はとても強く深い。

 思い詰めがちな性質もあるので、歳下ながら包容力のあるフレデリカの支えには常に感謝している。



【フレデリカ・モスアゲート】

23歳。

現在のモスアゲート王妃。ブライアンの正妃。元クリソプレーズ王女でアンドレアやエリオットの同母姉妹。


 実父であるクリソプレーズ国王ジュリアンの思惑により、コナー公爵夫人から「コナー家の工作員としても一流」になるような教育を受けて育った。

 顔も性格も、兄弟の中で一番父親に似ている。ただし、性別の差が出たのか、一人で抱え込むより共有可能な相手と荷を分け合う思考を持っているので、(ジュリアン)や父と似ているらしい祖父(コンラッド)ほど繊細な部分は持ち合わせていない。

 元の性格、実力主義を掲げる国の元王女に相応した最上級の教養、一流の工作員として育て上げられたことで身に付いた技術や考え方、懐に入れた相手への「男前」と称したくなるほどの包容力は、孤独に戦うブライアンの救いとなり、絶対的な信頼を得ている。


 祖国クリソプレーズを含む同盟各国から、新生モスアゲート王国の王となったブライアンの監視役を課せられているが、その役割を担いつつも、フレデリカが最も注力して監視しているのは、「ブライアンが簡単に自身の命を使う判断をしないか」という点である。


 人材不足の深刻な現在のモスアゲート王国では、嫁いだ当初に隠していた能力や性格を隠さず、国王ブライアンの隣で威圧するように立ち回っている。

 敵国工作員殲滅戦などでは前線に出て陣頭指揮も執り、『血浴の魔女』の異名を取った。

 後の歴史に「悪女」や「毒婦」と記されるであろうことは、気に掛けてさえいない。



【グラシア・モスアゲート】

47歳。

モスアゲート王国前王妃。元カイヤナイト王女。ジェフリーの同母姉。

ブライアンの生母であると共に、ブライアンの同母弟ダニエル、クリストファーの『右腕』としてクリソプレーズ王国コナー家で働く工作員リオの生母でもある。


 祖国に居た頃は、次期国王であった弟ジェフリーと共に教育を受け、文武に優れた明朗で男勝りな王女であり、カイヤナイト王国の「王家の薬師」でもあった。

 嫁いで直ぐにモスアゲート王国の異様さに気付いて警戒し、自身のキャラクター性を偽って演じ、「子供っぽい愚かな他国の女」と侮られるよう周囲を誘導した。


 味方の一人もいない孤独な戦いを、ブライアンを護りながら貫徹した女傑。

 大局と自身の力量を冷静に見極め、謀られて産んだ双子の王子の命運は天に任せた。

 「カリム・ソーン」として育てられて死んだことになっている双子王子の弟の方が、実はクリソプレーズ王国で工作員となって生き延びていることを知る、モスアゲート王国側唯一の人間。

 だが、それをブライアンやフレデリカにさえ告げず、墓まで抱えていく秘密としている。

 現在は、モスアゲート王宮の敷地内の離宮にて隠居生活を送っているが、ブライアンやフレデリカの相談役として頼られてもいる。



【ニコラス・ギャビン・モスアゲート】

故人。

モスアゲート王国前国王。アビゲイルの同母弟。


 貴族達に都合良く愚かであるように導かれた王であり、そう導いた周囲も本人も、「王族や高位貴族として有り得ないレベル」に教育不足であることに自覚の無い環境の中、()()()()()()自己保身やその場しのぎの取り繕いや言い訳の技術ばかりが磨かれていった小物。

 思惑があって近付いたジュリアンを『親友』と思い込み、ジュリアンにとっての「時が来るまで」失脚しないよう操作されていたが、ジュリアンへ依存するばかりで不信感を抱いたことも無い。


 ある意味ニコラスも被害者であろうと、同情気味だった正妃グラシアからも見限られ、「時が来た」後は、リオが用意した薬をグラシアに盛られて錯乱し、二度と目覚めないまま衰弱して死亡した。

 自分の何が間違っていたのか、悪かったのか、全く分かっていないどころか考えたことさえ無い。



【ダニエル・モスアゲート】

18歳。

モスアゲート王国王弟。ブライアンの同母弟。

リオの双子の兄(生存も知らない)。


 産まれて直ぐにアルロ公爵に預けられ、傲慢で我儘で嫉妬深く欲深い王子になるよう育てられた。

 当然のように、真っ当な王族の教育は与えられていない。


 アルロ公爵失脚後、保護の名目で拘束された後、しばらく療養の名目で王宮内の一室に軟禁されていた。

 その間、フレデリカ主導で薬物の投与と洗脳が行われ、現在は「台本通りの受け答えをする王弟人形」となっている。

 ダニエルの自我を薬で奪い、洗脳して人形のようにして使うことは、ブライアンとグラシアも了承している。

 いつか、()()()()()で薬物の影響下から脱し、自我を取り戻せるかは、今後のモスアゲートの国情の安定にかかっている。





 正妃として同盟国に嫁ぐ王女の国が、世代によって偏っているのは、国内情勢の安定を図る目的で、側妃や設ける子供の数を制限または調整する国家もあった為です。

 その場合は、制限をかけなかった別の世代で複数の国へ王女を嫁がせていたりします。


 モスアゲート王国は、血統的に多胎児が産まれやすいにも関わらず、多胎児が産まれると「無かったこと」にしていたので、同盟国の次期国王と年回りの合う王女が存在しない時期が多く、「元モスアゲート王女」である王妃の数は、他の同盟各国より少なくなっています。



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