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推しに没落させられたので仕返しする所存  作者: 佐野雪奈
第一章 没落令嬢は仕返ししたい
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7.妻のやることといえば


 私の推し兼、夫には仕事があるらしい。


 平民は労働階級と言われるくらいなので、仕事は大切だ。何をするにしても先立つものは欲しいし、第一にお金を稼がなくては生活が成り立たない。

 セシルは役場で雇ってもらえたらしく、今日は朝から仕事に行った。彼が夕方に帰ってくるまで私がやることといえば――――


「家事よね!」


 夫が外に稼ぎに行って、妻は家で家事と子育て。私とセシルは本当に夫婦のように生活をしている。(子どもはいないが)


 セシルは仕事に行く前に、「エリアナは無理して家事とかしなくていいからね。むしろ何もしないで。おとなしく、おとなしーく家にいてね」とか言っていたのだが、彼の中で私は何もできない子なのだろうか。酷いわ。


 そりゃあ私はついこの間まで公爵令嬢だったし?

「フォークより重いもの持ったことないの」ぐらいか弱い令嬢だったけどね?


 でも、私には前世の記憶と今世の魔法の力がある。家事なんてちょちょっとこなしてセシルを驚かせてあげるわ!


 セシルへの仕返しその二!

 私の完璧な家事に驚いて腰を抜かすがいいわ!


 さて、まずは洗濯からね。ちょうど今日は洗濯日和の晴天だ。青空が気持ちいい。


 この世界にはまだ洗濯機とかいう文明の利器は無い。洗濯はタライに水を張ってジャブジャブ手洗いするものだが、現代日本で生きた記憶のある私は、そんな面倒な事はしたくない。


 なので私は魔法で洗濯を済ませようと思う。


 この世界の魔法は属性というものがあって、火、水、風、土、光、闇の六つに分かれている。これは人によって使える属性が異なる。


 大抵の人は一から三つの属性が使える。

 例えば、セシルだったら闇属性特化の闇、水。フィリップ殿下だったら闇属性特化の闇、火、風。ヒロインのソフィア様は光属性一つだが、その光が特別強力だ。


 そして私、エリアナはなんと、五つの属性が使える。


 火、水、風、土、光。この五つが私の使える属性だ。これは非常に珍しいことだと魔法学院でも驚かれた。ただし、特別特化した属性はなく、使える魔法は全て平均値だ。


 私は、タライの中に入れた洗濯物を水魔法を使い、洗濯機のように洗濯する。軽く脱水して物干しに干した。

 火魔法と風魔法を組み合わせて乾かすこともできるけれど、今日は天気も良いし、お日様にお願いすることにする。


 掃除は風魔法と水魔法でスイーとこなした。

 実は私、魔法の繊細な操作が得意なのだ。


 異世界に転生してテンションが上がったのが、推しが目の前にいる事と魔法が使える事だった。


 この世界では、魔力というものが体に蓄えられていて、自分の意思で動かすことができる。

 それを放出することで魔法となり、火が出たり水が出たりするのだ。

 

 思い描くだけで体の中の魔力が動いて魔法が使えるなんて面白すぎて、いろいろと試しているうちに繊細な操作ができるようになった。


 どのくらいかというと、普通の火魔法はボッと炎が出るか炎を飛ばすかくらいだが、私はファイアーダンスさせられるくらい繊細に操れる。(ちなみに、公爵邸の中でやったらお母様に大目玉を食らった)


 実は先程やった洗濯や掃除も公爵邸でやってみたのだが、使用人たちに「私たちの仕事を取らないでくださいー!」と泣きつかれて、今まで封印していたのよ。


「ふっ、完璧ね」


 家中ピカピカになり、洗濯物は気持ちよさそうに風に靡いている。満足。ふふふ、今からセシルの驚く顔が目に浮かぶわっ!


「さて、次は⋯⋯」


 洗濯、掃除と来たら次は料理だ。

 実は引っ越してきてから今朝まで、食事は外食か買ってきた物を食べるという生活を送っている。キッチンが整っていなかったからなのだが、先程掃除をした時についでに片付けておいたし、調理器具も大方揃っていた。


 料理はさすがに魔法で作れないので、自分で作ろうかな。料理は前世でもほとんどしたことないが、なんとかなるだろう。




 という訳で、食材の買い出しに外へ出た。


 今私が住んでいる町、カーナイド領の中心部にあるこの町は、実は領主様の館がある領内では都会に分類される町だ。


 カーナイド領は、この町以外は田んぼや畑だらけの長閑な農村ばかりになる、超ド田舎領地なのだ。だからこそ、元貴族の私たちが隠れるのにちょうどいいと判断したのだろう。


 超ド田舎なので、町民みんな知り合いくらいの勢いで、他所の人が来たらすぐにわかる。しかも、平均年齢も高めなので若い人が来たらとても目立つ。なので、私とセシルはすぐに町の人に認知された。


「お、駆け落ちの女の子! 買い物かい? 珍しいねぇ!」

「おや、駆け落ちの女の子じゃないか。旦那さんは今日は一緒じゃないのかい?」


 そう。すぐに。あの設定とともに。


「⋯⋯その呼び方やめてくださいっ!」


 私たちが引っ越してきた翌日には何故か既にセシルの考えた設定が町中に知れ渡っていて、私は『駆け落ちの女の子』として認知されている。


 もうね、市場のおっちゃん、おばちゃんたちがみんな生温かい視線を向けてくるからね。「がんばれよー」みたいな感じでおまけしてくれるからね。


 なんだかいたたまれなくて、私たちは駆け落ちじゃないの! 没落なの! 愛し合ってもいないからその生温かい目をやめて! って声を大にして言いたい。(言えないけど)



 おっちゃん、おばちゃんたちに曖昧に返事をしつつ買い物を終わらせた。




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