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推しに没落させられたので仕返しする所存  作者: 佐野雪奈
第一章 没落令嬢は仕返ししたい
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4.断罪イベント発生?!


 王立魔法学院の卒業パーティーは、貴族の子息令嬢ばかりが通っていることもあり、華やかで規模も大きい。卒業生、在校生、学院関係者はもちろん、国王陛下や各大臣たちもゲストとして出席するような大規模なパーティー。


 その大規模なパーティーで、私の婚約者であるこの国の第一王子――――フィリップ殿下が形のいい眉をつり上げて、私に向かって言葉を放った。


「エリアナ・レクサルティ。私、フィリップ・アルフィアストは今この場で君との婚約を破棄する!」


 会場内がシン、と静まった。


 ⋯⋯ん?

 ⋯⋯私の婚約者が、私との婚約を破棄?

 

 え? なんでっ?!

 

 わけわからな過ぎて呆然とする。

 状況に頭がついて行かなくなると、言葉も何も出てこなくなるものらしい。


 周りが少しざわつき始めてやっと我に返った私は、一度咳払いして姿勢を正した。

 

「どういう事かまったくわかりませんわ。説明してくださる?」

 

 ⋯⋯あれ? この台詞どこかで⋯⋯。

 

「どういう事かだと。それは君が一番わかっているはずだ。このソフィアに散々してきた嫌がらせの数々を私が知らないとでも思ったのか」 

「身に覚えがありませんわ」 

 

 本当になかった。

 私はヒロインであるソフィア様とは仲良くした記憶はあっても嫌がらせを行った記憶はない。

 

「そもそも、私たちはお友達でしょう? ねぇ、ソフィア様?」

 

 私は没落回避の為にソフィア様と仲良くした。

 一つ歳下のソフィア様だが、よく話しかけに行ったし、お昼を一緒に食べたり、一緒に出かけたこともある。

 やっぱり身分に差があるからかソフィア様はずっと緊張しているような節はあったが、少なくとも私はソフィア様に友情のような感情を抱いていた。

 

 しかし、彼女は私の視線を受けるとビクッと体を震わせて怯え、やがて何かを決意したように殿下の背から一歩前に出た。

 

「わ、わたしは⋯⋯ずっとエリアナ様から嫌がらせを受けていました!」

「ソフィア様⋯⋯?」

 

 彼女から放たれた言葉が衝撃的で呆然とする。

 ソフィア様はそんな私を潤んだ目で睨みつけるように見てきた。


「わたしが昼食を摂っている時にやって来て残飯を押し付けられたり、『貴女は醜く太っているのがお似合いよ』と言われたり⋯⋯」


 言っていない。

 残飯と言うのはアレか? 私が超頑張って勝ち取った購買の人気ナンバーワン、デラックスメンチカツサンドのことか?

 そりゃあかなりの争奪戦だったから、多少潰れた部分もあったけれど、いつもお弁当箱に野菜ばかり入っているソフィア様に、ちゃんと均等に栄養を摂るようにと渡したんだけど⋯⋯。

 

「それに、ショッピングだと無理やり呼び出されて私の服を粗末だと笑い、『貴女にはこんな服買えないものね』と蔑まれたこともあります!」

 

 蔑んでいない。

 それはアレよね。女の子同士お買い物に行こうと誘ったらまさかの薄汚れた着古しのワンピースで来たから、新品のワンピースを買ってプレゼントした時のことよね?

 これからセシルとのデートイベントも発生するから新品の可愛らしい服を持っておいた方がいいと思ったのだ。

 

「パーティーの時、わたしがフィリップ殿下とダンスをしようとすると、わたしに殿下のお相手は不相応だといつも邪魔されました」

 

 あー。それはね、貴女にはセシルがいるからね。セシルは実は嫉妬深いキャラだから、彼を刺激しないように他の人と踊らせないようにしていたのよね。実際、パーティーの時のセシルって機嫌が悪いことが多かったし。

 

「それに、いつもわたしにセシル様を勧めてくるのですっ! 確かにわたしは男爵家の娘。同じ男爵家のセシル様は家柄としてもつり合うのはわかっています! でも、わたし、わたしは⋯⋯フィリップ殿下のことが好きなんです! ⋯⋯想うくらい、許してください」

「ソフィア⋯⋯」 

 

 ソフィア様がフルフルと長いまつ毛を震わせると、フィリップ殿下はその肩を優しく抱いた。

 

 え、えぇーーーー?!

 ちょっ、待っ、えっ?!

 こ、これはもしかして⋯⋯ヒロインはフィリップ殿下のルートを選んだの?!


 なんでっ?!

 私、セシルにヒロインとのイベントについて詳しく話してどう行動すればいいのか指南したのに?!

 セシルも上手くいっているって言ってたのに?!

 いつの間にフィリップ殿下ルートに入っていたの?!

 

「これでわかったか、エリアナ」

「え? いや⋯⋯」


 もうわけがわかりませんけれど。


 私のその曖昧な態度がフィリップ殿下は気に食わなかったらしい。軽く舌打ちをすると、こちらを睨みつけてきた。

 

「まだ認めないか。こちらには君がソフィアに嫌がらせをしたという証拠もあるのだぞ」

「証拠⋯⋯?」

 

 今までのはソフィア様の被害妄想が激しいだけで、何もやってないのに証拠があるの?!

 

「見ろ」と殿下が懐から大仰に取り出したのは一枚の紙。

 

『おマエのようナいやシい女が殿カに近づくな。卒業パーティーは欠席シろ』

 

「三日前、この脅迫文がソフィアに送られてきた。この字は君の字だろう、エリアナ・レクサルティ!」


 ⋯⋯うん、そうね。私の字よね。

 でもね? 字を見る前に紙をよく見ようか?


 ほらほら、どう見たってさ、切り貼りされてるじゃん?

 一文字ずつ切った紙を貼って脅迫文作られてるじゃん? なんで自分でそんな事すると思ったのよ?

 

 でもこれで、私が今こんな状況になっている原因の人物が思い当たった。

 

「なんの罪もないか弱いソフィアに執拗な嫌がらせをする者などこの私の伴侶に、ひいてはこの国の貴族に相応しくない! エリアナ・レクサルティ及び――――セシル・エディローズの身分を剥奪し、この王都から追放する!」


 ――――ああ、やっぱり。セシルも一緒だった。




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