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魔に虚ろうは:法か術か  作者: 鳩馴 赤茄子
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1≠日常

「おい。日色!日色!!起きろよ」


けたたましい声が微睡みに耽っていた俺の耳に刺さり目を覚ます。


「うるさいなぁんー?あー檜山か。寝てたっぽい」


「お前朝っぱらから寝るのかよ」


「まあ眠いときに寝るのが正解って偉い人が言ってたから」


「そうかよ。あ、それよりこれ見たか?」


目の前のハゲ改め多分寺男、檜山 蓮宗がおもむろに新聞を取り出し俺の机に叩きつける。


「なんだこりゃ。朝っぱらから市街地で大規模戦闘?んなアホな」


ここ帝都は世界一安全な街のはずだ。


「俺もそう思ったんだがよ。なんでも隣のクラスのやつが見たって言うんだよバカでかいドラゴンと人の戦闘を」


「マジで?」


「マジ」


ドラゴンはこの国の特定外来生物だ。それも見つかったら即死刑が確定するまでに厳戒に取り締まられているようなレベルの。


「なんの話してんだ?」


横から幼馴染でボサボサとした黒髪頭の中村敦貴が加わる。


「んーなんか檜山がゴシップ記事を見つけて来たんだがよ」


「ゴシップってお前」


「檜山そういうの好きだよなぁ…」


「うるせぇよ。んじゃ放課後確かめに行くか?」


「いいな!いこうぜ」


「元気だなーお前ら」


「中村も行くんだぞ?」


「え?」


□□□



「そういや先生遅くないか?」


言われてみればその通りだ。本当なら既に授業が始まってる時間のはずなのだが。


「まあいつも通りだろ。ほら噂をすりゃ」


「おーすまんすまん遅れた。いやー寝坊したわー」


ボロボロのワイシャツに伸び放題の髭。清潔という言葉とは無縁であろう人種の担任、棚星があくびをしながら教室に転がり込んできた。


「ほんとに来てんじゃん!んじゃ放課後」


そそくさと離れる檜山。


「先生そろそろ寝坊癖治してください。帝国第8高等学校の名前に傷が付いてしまいます!!」


帝国第8高等学校。再編された大日本帝国の高等学校の第8番目の高校にして毎年優秀な生徒を排出する名門校である。まあ過去の話だが。


「あー今度から気をつけるわ。んじゃ授業を始めるぞ〜。確か一コマ目は魔法歴史学か」


本気でキレた委員長が殺意マシマシに背中から蛇を出すが、サラッと流す先生。どっちもおっかないぜ。




□□□




「あーまあ不注意からなんかこんな感じでバカデカい世界大戦が起こってな、んで戦後あまりに疲弊し過ぎて小国は国を維持すら出来なくなって大国に吸収されたわけだ。

そんなことが続いて国がアメリカ、イギリス、ロシア帝国、大日本帝国、フランスにアフリカ統一連合、ブラジルに中国、上2つを除いたヨーロッパ連盟と9つにまで減った。

これが今の九大国家だ。質問は?」


正直歴史は知っていても知らなくても変わりゃしないだろう。眠い


「ないのか。んじゃ続きだ。まーそんで戦争なんざ皆嫌だからな。金かかるし。九大国家のお偉いさん方は集まって考えに考えて……。

魔法を表向きは制限した。平和のためって御題目でな。

それがお前らが習う『世界統一魔法規格』ってやつだ。裏は…まあ勝手に想像してくれ」


──世界統一魔法規格

戦後のセーフティとして開発された花をモチーフにした魔法規格。

反戦争の意味から作られた平和の象徴であり攻撃魔法は自衛以上の力を持つものが存在しない。

また、魔力消費も比較的軽量であり、魔力量による格差問題も起こりにくくなっている。

 『新しい魔法学』より


だそうだ。反戦争の意味って時点で怪しいがそれが裏側に関係してくるのだろう。


「んでまあこの統一規格魔法に関してはアインシュタインが関わってきたりするんだが……。

おっともう終わりか。5分休憩したら次の授業入るぞ。ほいお疲れ様でした」


「「ありがとうございましたー」」



「なあなあ日色。なんで歴史ってやる必要あるんだ?」


「俺も知りたいわ」


どうせ将来には関係ないだろう。


「あ、帰りにアイス食うか」


「魔鉄魔鉄(日本魔法鉄道)の方にあったっけか。いいぜ」


「はいはいお前ら早く席に着けー」


「やっべんじゃまた後でな!」


「おう」


「次の授業は魔法学か。んじゃ教科書235ページを見ろ───」



そうして授業は終わり、放課後



□□□



「そんな訳で我は!新しい魔粒子を採取して一攫千金を夢見てるんだ!!」


「アイス美味いよな」


「やっぱあそこのアイスは絶品だ」


「っておい!聞けよ!!」


「聞いてる聞いてる」


「少なくても寺の息子が叫んでいいような内容じゃないだろそれ」


欲という欲にまみれまくってる。


「うぐぐぐ」


「というか不自然なぐらい人が少なくねぇか?」


帝都のライフラインの要でもある魔鉄。普段なら鮨詰めの如く人がいるはずなのだが人っ子一人見当たらない。


「まあ、不気味だけどそんな日もあるだろ。それよりこの新フレーバー美味いぞ」


「このチョコミント狂いが」


「ああ!?」


思わず敦貴に掴みかかり、睨みつける。チョコミントを侮辱するのは許さんぞ貴様





「なーにやってんだ?お前ら」


「あ、寝坊してきた我の担任」


「うるせえ」


「痛ってぇ…」


「いや、帰るとこですけど」


「んー……そうか」


「先生こそ何やってんの?」


「俺?そうだな……俺は」


《次は〜日本橋〜日本橋〜お降りのお客様はお気を付けてお降りくださいませ》


「あーすまん先生俺らここで降りるわ」


「……了解。んじゃ気をつけて帰れよ〜」






「なあ、先生なんかいつもの違くなかったか?」


檜山が突拍子もないことを言い出した。


「んなわけねぇだろ!あのボロボロのワイシャツに…ワイシャツに……。あれ?なんかいつもと違くない?」


ボロボロのワイシャツでは無くピシッとしたスーツに整った髭。

いつもの先生と気がついたのは砕けた雰囲気と天然パーマのボサボサの髪型だからだろう。(それでも整ってはいたが)


「まあ、あいつにもそんなことはあるか!」


「そーだな。それより早くいこうぜ」


「ほんとに行くのか?まあいいけど」


そうして、俺達は例の場所に着いた。


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