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溺れた魚は何を思う

作者: 彩葉 望

 

 溺れるはずが無い魚が溺れたら何を思うんだろうか。


 ♢ ♢ ♢ ♢


 最近両親に会う度に言われる言葉がある。



「見る度に目に生気が無くなっている気がするんだが気のせいか?」


「あらあらあら、おかしいわね〜本当に私達の娘の目に生気が感じられないわ〜」



 と、毎回言われるのだ。しかも、言われ始めた時期が友人の1人が奇行に走り始めた時期だった。その時、あぁと納得してしまったのは仕方がないと思う。



 その友人は爵位が同じ男爵という事で仲良くなった。どちらかと言うと大人しくあまり前に出るような性格ではなかった。なのに熱を出した次の日性格が豹変したのだ。イベントが!っと謎な言葉を吐いてどこかへ走り出し、あなたはお助けキャラだから仲良くしてあげるわと何故か上から目線で言われ、いつの間に上流貴族の方達と知り合ったのか婚約者がいる方でも構わず接触するようになった。



 しかも彼女が昔から憧れていた方の婚約者にまで手を出していたのだ。一体何がしたいんだ、複数の男性に囲まれる友人に理解が追いつかないのは仕方が無いことだと思う。



 しかもそのとばっちりが私に来るのだ。貴方が注意しないからいけないんだと言われ、他の令嬢から睨まれる。私が何をしたというのだ。私だって最初は婚約者がいる男性に無闇に近づいてはいけないと言って注意した。しかしその返しが私が可愛いからって嫉妬しないでよね、だ。



 意味がわからない。



 流石に手をつけられないと思った私は彼女と距離を置いた。しかし距離を置けば彼女の周りにいる男性が何故彼女をいじめるんだと言いに来る。距離を置いただけでいじめになるのか、初めて知ったよ。一体どうしろと言うんだ。



 彼女の傍にいれば女性から文句を言われ、離れれば男性から文句を言われる。



 そこから私は諦めた。令嬢から文句を言われれば黙って聞き、友人から離れることをやめた。なのにまだ災難は続く。



 目の前で行われている修羅場にいっその事倒れたい。



「婚約者がいる男性に無闇に近づいてはならないことくらい知らないのかしら?汚らわしい」



 扇で顔を隠すようにして言葉を発する殿下の婚約者様。この方こそ()()友人が憧れていた方だ。語りだしたらこの方の素晴らしさは1日じゃ足りないと本当に1日以上素晴らしい笑顔で語っていた友人が懐かしい。



「そ、そんな私はただ仲良くしているだけなのに」



 そう言って涙を流す友人は儚げで可愛らしい。その姿に周りの男性方の目付きが変わる。



 そしていきなり行われ始める断罪劇。



「お前の心の方が汚らわしい」「可愛げのない女だ」「最低な女だな」「この毒婦が!」などなど…。馬鹿なのかこの人たちは。



 いつまで続くんだこの茶番劇は。帰っていいかな?帰って良くない?私関係なくない?



「知ってるんだぞ!貴様は権力を盾に彼女を虐めていたらしいじゃないか!」



 は?



「この間は、紅茶を彼女のドレスにかけたらしいですね」



 は?



「集団で彼女を取り囲み俺たちに近づくなと脅していたらしいね」



 は?



「しかもこの間は階段から落としたらしいじゃないか、さいてー」



 はァ?友人がおかしくなったのと同時にほかの周りの男性方もおかしくなってしまっていたらしい。



 この国の将来が心配だ、割と本気で。



 そんなことよりもまず自分のことだ。このままでは確実に巻き込まれて終わる。最悪人生の幕を閉じてしまう。それは流石に嫌だ。



 これはもう自主退学するしか道はないのでは?



 両親に相談するか?



 両親に相談したとこで軽く流されそうな気がする。これは最早終わった。



 ふっ、思わず何も無いところを見てしまうのは仕方が無いと思う。こうなったらひたすら物思いに耽ってやる。





「いい加減にしろ!!」



 突然別の所から聞こえた声に先程まで言い争っていた声がピタリと止む。



「王太子殿下!!」



 誰かがその言葉を発すると共にまた、辺りが騒がしくなる。



「お前達は公衆の面前で何をしている。場をわきまえることすら出来ないのか?」



 その言葉に言い争っていた面々が気まずそうに視線を逸らす。



 それから王太子殿下の指示の元、騒ぎが収まり問題を起こしたものは呼び出され他の者達はそれぞれの教室へと戻って行った。



 私も教室に戻ろうと思ったが、何故か王太子殿下に呼び止められた。



 詰んだか?詰んだのか?



 っと思ったがそうではなかったらしい。ただ騒ぎのことを聞かれただけだった。なので全て話した。騒ぎの事だけでなく友人がおかしくなったこと含め全て。



 あっ、なんかスッキリした。今まで溜まっていた鬱憤を全て話したことによって気分がものすごくいい!!



 話を聞いた王太子殿下は、「そうか」っと呟き足早にこの場を去った。



 △ ▽ △ ▽ △ ▽ △ ▽



 後日、昼食を食べていると友人がやってきていきなり謝ってきた。しかも昔の彼女に戻っていたのだ。どういうことだっと思って事情を聞けば、信じられないことを言われた。



 彼女は、彼女がおかしくなった時から乗っ取られていたらしい。いきなり自分とは別の魂が身体の中に入り自分ではどうすることも出来なかったと、諦めようとしていたところを王太子殿下が宮廷魔導師を連れてきて助けてくれたと。



 そんなことになってたの!?っと思ったがなんやかんやで彼女とは元の仲のいい友人関係に戻ることが出来た。ありがとうございます王太子殿下、私学校自主退学しなくてよさそうです!!



 それから、黒幕が隣国だったり婚約破棄騒動があったり、彼女の中に放り込まれた魂は異世界の人の物だったりとさわぎになったりするのだがそれはまた別の話である。





「それでね、私王太子殿下の事好きになっちゃったみたいなの」



 その友人の爆弾発言により、やっとこれで周りと同じように無難に過ごせるという選択肢が消えてしまった。



 ふと今食べている魚料理を見て溺れた魚は何を思うのか、友人の話をそっちのけで考える。



 きっと溺れるはずの無い魚は、「詰んだわ、これ」そう思ったに違いない。



 頬を染めながら何かを夢中で話す少女の隣で、死んだ魚のような目をした少女が勘弁してくれと呟く姿がそこにはあった。









頑張れ主人公!!

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