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弌―【貞操を護れ、下ネタ全開美少女】

 ――『ラストエデンへようこそ。ログインボーナス180日目を配布しました』



 感情の見えないお決まりの声に瞼を開けば、視界全域に広がるのは果ての見えない緑の草原と、絵に描いたような雲一つ無い青空。

 無限の自然とたった一つの街で構成される夢の世界――【ラストエデン】。


「もう半年か……」


 気付けば初ログインからずいぶん経ったものだと、多少の感慨深さを感じながら世界を見渡す。

 ちなみに夢の世界というのは、理想郷や桃源郷といった意味合いの話ではない。一応言っておくが……世界中に存在するネズミの王国でもない。

 それは文字通り、睡眠中に見る夢の中に存在する世界という意味だ。


 眠っている人間だけが入場でき、眠っている間だけ活動が出来る、夢の中の世界。


 それがどのような存在によって生み出されたのは誰にもわかっていないが、一応このラストエデンが存在する理由だけはある程度判明している。

 これは本来チュートリアルで聞けたらしいが、俺はなんだかよくわからない内に省略されていたので、仕方なく内部で他にログインしている人間から話を聞いた。


 ちなみに【ラストエデン】の情報をまとめた攻略サイトなるものも現実のネット上に存在していたりする。流石は情報社会の現代日本、こんな不可思議な世界をまとめたサイトまで存在している。

 ただ……このサイトの情報は噂や都市伝説が多い上にそもそも過疎っていて、更には終始荒らされているようなサイトなのであまり頼りにならなかった。


 という半端な知識しか持たないので、そもそも創造主に当たる存在がいるのかすらも不明。

 ラストエデンにおける名称の一部は、内部で活動する人間達が勝手に名付けて使っているくらいには放置された世界だ。

 しかし、ラストエデンという名称を含め、いくつかは初めから名付けられている。


 ――その一つが【ログイン】という言葉。


 ここラストエデンは昨今のネットを介したゲームの一種、MMORPGに近い世界観やシステムを有している。

 それも相まってなのか、この世界に入場することを【ログイン】と言い、退場することを【ログアウト】と言う。あと、俺達のような内部で活動する人間を【プレイヤー】と言う。

 実際、入場した時に毎回聞こえてくるどこの誰かわからない無感情な女の声は『ログインボーナス』という言葉を使っているので、これは初めから決まっている言葉だとわかる。

 ちなみにログインボーナスで貰えるのはアイテムなどではなく、ただの経験値だ。


「よし……やるかぁ」


 MMORPGに似ているというからには、当然レベルという概念が存在する。

 レベルを上げればゲームと同様に、ステータスを強化するポイントや、新しい【スキル】が手に入る。

 しかし俺にとってそれらはあくまでも通過点。

 初ログインから約半年が経った俺の現在の目標は、いまだ誰も達成したものがいないという、ラストエデンにおける前人未到のカンスト。

 最高値であるというレベル100の達成だ。


「あと10か……結構遠いなぁ」


 初ログインの日、俺があっけなく殺されてしまったゴブリン。

 それ以外にもラストエデンには醜悪な人型モンスターが大から小まで多数生息しており、それらを狩ることでレベルアップに必要な経験値を手に入れることが出来る。

 なら、俺がやるべきことは一つ。

 日課を通り越して、もはやノルマにもなりつつある経験値稼ぎ、これに尽きる。

 その為に今日も今日とて、俺が独自に見つけた、高効率のモンスターが出現するエリアに出向いた。


 一説にはどこまで行っても果てが無い大自然だというラストエデン。

 そのところどころでは、モンスターが出現するエリアだと示すためなのか、ふれあい動物園にあるようなやや高めの木の柵が敷かれている。

 その柵を超えて足を踏み入れ、草原を超え、砂漠を超え、時に雑魚モンスターを処理しながら更に奥へ奥へと進んでいけば、やがて空は徐々に暗く曇り、乾いた地面に亀裂が入ったこの世の終わりのような場所へとたどり着く。

 草原地帯や砂漠地帯では他のプレイヤーの姿も目にしたが、こんな先まで来るやつはほとんどいない。

 その理由は……。


「ァ……ァァ……ア゛ァァァァァァァァ!!」


 俺が荒野に足を踏み入れた途端、亀裂の隙間からは直径3メートルはありそうな巨大な灰色の腕が天へと伸ばされる。

 咆哮を上げながら大地を叩いて地響きを鳴らし、徐々に全身を露わにするのは一体の巨大な人型モンスター。

 二本足で歩行できているのが不思議な、20メートル近い体躯を持つ一つ目の巨人――【キュクロプス】と仮称されているモンスター。


 こいつは現在の俺が知っている中では、一体当たりの経験値が最も高いモンスターだ。

 もしもこいつと同じ経験値量を獲得しようとするなら、ゴブリンなら優に千匹以上、それよりもやや強いオークでも最低六百匹以上、キュクロプスの次に経験値量が高いオーガやミノタウロスであろうと数十匹は必要だろう。

 しかしながら、経験値量が高いということは当然、強さもそれに比例している。


「ゥゥ……ガァァァ!」

「――おっと」


 挨拶代わりとでも言わんばかりに腕を振り下ろしたキュクロプス。

 その手のひらが大地に叩きつけられると、周囲に震度五はありそうな激しい揺れが発生する。それと周囲に飛び散るのは、大量の岩の破片。


 ただしこれは本当に挨拶程度だ。

 こいつが本気を出せば文字通り大地が割れる。ちなみに現在レベル90に達している俺でも、まともに食らえば一撃でHPが吹き飛ぶ。

 ついでに言えば馬鹿でかい図体をしているくせに、その一つ目は動体視力が非常に優れていて、反射神経もあり、体の動きは体躯に見合わずなかなかに早い。一言で言えば強敵だ。


 ただ、ここまでなら複数人でパーティーを組んで倒しに来るプレイヤーもいただろう。しかしこいつには、他のモンスターには無い特性がある。

 それは、プレイヤーを倒すのではなく……食らうことがあるという特性だ。


 ここでは痛みは感じないのでどれだけ噛まれても問題無い。

 しかし……まぁ普通は、人生において何かに食われるなんて経験はしたくない奴が大半だ。

 だからそれも相まって、高効率でも人気が無いモンスターとなっている。


「ガァァァァァ!!」

「っ……あぶねぇな」


 もう一度、今度は先程よりも強く地面を叩きつけたキュクロプス。

 震動を跳んで回避しながら、四方八方に飛ばされた無数の巨大な石をどこからともなく(・・・・・・・・)左手に装備した盾で弾く。


 ラストエデンでは、本来ゲームにおいて絶対に存在する【アイテム】というものが一切存在しない。

 回復アイテムも無いし、着替えることも出来ない。街に存在する物を勝手に持ち出すことも出来ないし、そもそも持ち上げることが出来ない。

 しかしそんな中で、矛盾するようだが武器だけは存在する。


 ここでの武器は、自分が使うという明確な意思を持つことによって、左右の手のどちらかに自動的に装備される。

 そしてこの武器というのは、ラストエデンに初めてログインした時のプレイヤーの内面を模った物となっているらしい。



 それは例えば、現在抱く夢や、過去に抱いた夢。

 これまでに過ごしてきた日々でつちかわれた経験や願望。

 あるいは現実で抱える問題やトラウマ。

 その他様々な要素から、色や形、その武器が持つ能力などが決定づけられ、一人一人で異なり同じものは二つとない、唯一無二のオリジナル装備となっているのだとか。


 ――現状ではただ一人、俺を除けばだが。


「さっそくで悪いけど、目……もらうぜ?」


 左手の盾を消し、新たに手にした装備は弓。

 振り下ろされたキュクロプスの手の甲に着地すると、振り払われるよりも先にAGI(速力)のステータスを高めた身体で疾走する。

 コンマ数秒にで10メートル程の距離を移動し、キュクロプスの肩に辿り着く。

 この時点でほぼ勝敗は決したようなものだ。


「ゥアァ!」


 20メートル近い図体のくせに、一瞬で肩に辿り着いた俺に反応してすぐさま噛みついてこようとする巨大な顔。

 でも、お前と何度も戦っている俺にはもう読めている。だからこそ弓を選んだ。


「よっ……と」


 噛みつき攻撃を容易く跳躍して躱すと共に、空中で弦に矢をつがえて構える。

 キュクロプスの動きはかなり早い方だが、俺はあらゆるモンスターを効率よく狩る為に四つあるステータスの中からAGIを高めに配分している。


 レベルアップで貰えるステータスポイントを割り振れる先は、VIT(体力)STR(筋力)INT(知力)、そしてAGI(速力)の四種類。

 VIT、STR、INTは現実にあるゲーム同様にHPや基礎防御力が上がったり、攻撃力や魔法攻撃力が上がる。

 しかしAGI(速力)だけは、ゲームの仕様とは根本的に異なる。


 ラストエデンにおけるAGIは、身体の動作一つ一つを早めるだけではなく、プレイヤーの動体視力と反射神経、更には思考速度まで高めてくれる。

 ここではゲームのように勝手に回避出来ることは無く、自分の身体で、判断で回避しなければならない。加えてその判断力や行動の選択は全てがプレイヤー次第となる。

 その点においてAGIは、高めて上手く使いこなせれば最も効率よく敵の攻撃を無効化し、更に次の攻撃に転じることが出来るステータスと言える。

 しかしAGIを高めれば、必然的に他のステータスが劣る。


 弦を引き絞り放った一本の矢。

 狙いを定めるのはプレイヤーの力量次第だが、既に扱いに慣れている俺の放った矢は真っ直ぐに突き進み、風を切って一つ目モンスターの唯一の目へとたどり着く。

 しかし……その矢は当たっただけで勢いを失い、眼球をわずかに傷つけただけで地面へと落下した。まぁ当然だろう。


 キュクロプスの一つ目は、その姿の象徴とも言える部分。

 弱点ではあるが同時にもっとも硬い部分でもあり、STRにほぼ全てのポイントを振っている奴が同じように矢を打ったとしても、矢じりが眼球に突き刺さる程度で止まってしまう。


「ウ……ウゥゥ……ウァァァァアアアアアア!」


 俺の攻撃が失敗に終わったと感じ取ったのか、先程よりも意気揚々と雄叫びを上げるキュクロプス。

 でも――もう勝負はついている。


「アアアッ……アッ……グガァァァ!?」


 数秒前に矢が当たり、わずかに傷をつけた場所。

 その同じ場所から突如連続した破裂音が鳴り響き、巨大な眼球がみるみる内に掘り進められていく。

 何も触れていないのにひとりでに穴が開いていくその様は一見すると魔法のようだが、これは魔法ではなく俺の【スキル】の効果だ。


 全てのプレイヤーが最初に一つ持ち、30レベル上がるたびに新たに一つ獲得できる【スキル】というシステム。

 これは武器と同じく現実の自分の情報から自動的に作り出されて獲得出来るもので、名称と効果を組み合わせたもので言えばこちらもほぼほぼ唯一無二と言えるものだ。


 そして俺は現在レベル90。

 ラストエデンで獲得できるであろう四つ全てのスキルを手にしているのだが、今使用したのはつい最近獲得できたその四つ目。


 ――スキル【惰弱(だじゃく)連鎖(れんさ)】。


 惰弱という言葉どおり限りなく弱い攻撃にしか適用できないが、一度適用されれば最後。

 発動前に俺が脳内で設定した目標を達するまで延々と、しかし恐ろしいほどの効率で同じダメージを繰り返す。

 設定する目的が複雑だったり時間が掛かるものだと途中でスキルが途切れてしまうこともあるし、発動中は常に意識して集中していなければならないが、今回設定したのは眼球を貫くという一点集中の簡単な目標だけ。

 よって、


「ガァァァァァァァァァァ……!」


 発動から僅か三秒ほどで巨大な眼球に風穴を空けた。

 ダメージを与えたことで、キュクロプスの頭上に不自然に浮かんでいるHPゲージが二割ほど減少した。今の一撃で二割、実に効率的だ。

 そしてこうなればキュクロプスは俺を視認できないし、弱点である目へのダメージのせいで動きも鈍る。

 これで勝ち確だ。


「タス……ケ…………テ」


 数分後。

 同様の手順で【惰弱の連鎖】を使って風穴だらけにしたキュクロプスが、最期の言葉を残しながら灰色の砂へと変化してその場にさらさらと降り積もる。これで戦闘終了。

 大量の経験値は獲得できたが……何度やっても最期の言葉だけは慣れない。


 ラストエデンのモンスター達は言語を用いないが、何故か時折『タスケテ』という言葉だけは発する。死に際はほぼ必ずといっていい程だ。

 プレイヤーがモンスターを倒してレベルを上げる。そのシステムがある以上間違ったことはしていないと思うのだが……どうにも後味が悪い。


「……次、探すか」


 キュクロプスが相手だと図体がデカいだけあってその声もまたデカい。

 嫌でも耳に残る言葉を無理やり振り払うように独り言ちていると、



 ――唐突に悲鳴が聞こえた。



「キャァァァァァァァ! なんですかなんですかなんなんですかぁぁ!!」



 突然すぎた悲鳴にびくっと身体を震わせてしまいながらも振り返ると、少し離れた場所から一人の女の子が走ってきていた。

 その後ろには数匹のゴブリンと、人間よりもやや巨体のオークが数匹。

 この子もキュクロプスを狩りに来たのだろうか……と一瞬思ったものの、悲鳴を上げながら走る女の子はどう考えても経験値を稼ぎに来たとは思えない。

 というか、初ログイン時の俺に似ている。


「あぅっ――いた……くはないんでした」


 俺のいる場所まで辿り着くことは無く、2、30メートル先でいつかの俺と同じように、少女が脚をもつれさせて転んでしまった。

 あぁ……あれは死ぬな。

 プレイヤー同士はHPを確認することが出来ないが、昔の俺と同じくログイン初日ならHP総量は微々たるもの。

 俺はゴブリンだけでも殺されたのに、上位種に当たる巨大なオークまでいるんじゃ詰んでいる。


「ま……待ってください……」


 モンスターの群れの中からオークが一歩前へと踏み出し、150センチくらいの少女と同じくらいに巨大なこん棒を振り上げる。


「タス……ケテ」

「いやそれわたしのセリフですよね!? あぁ……あぁ! もうダメです、ヤラレます! きっとわたしはこのまま……」


 懐かしいなぁ。

 俺もはたから見ればこんな感じだったのかなぁ……あんなに喋る余裕は無かったけど。

 まぁ俺の時とは違い、今は助けてくれる奴がいる。

 良かったな、見知らぬ少女よ。

 ここは一つ、少なくともここでは美少女っぽいあの子に良いところを見せるため……


 ――……いや、ちょっと待て。


 シチュエーションとしてはあの時とほぼ同じなのに、何故か感じる強烈な違和感。

 何かが違う。確かにあの子は今にも殺されそうだが、何かが違う。

 ……顔か? 顔だな。

 あの子の顔が可愛いとかそういうのは置いておいて、気になるのは表情だ。

 俺はあの時顔面蒼白だったと思うけど、この子はなんか……恥ずかしそう?


「このまま醜くもたくましい彼らに捕まって、薄汚い洞窟に連れ込まれて、毎秒毎分毎時毎日、穴という穴を太くて凶悪な熱い棒で突かれて全身中まで真っ白に染められるんですね! あぁもう最悪です! 身も心も壊れるまで物のように扱われてボロボロにされて、そして最後はお腹が膨らんで亜人の――」

「ストォォップ!! そんなことされねぇから! 殺されるだけだから! つーかその先は生々しすぎて気持ち悪いから言うんじゃねぇー!」

「えぇ!? そんなにすぐに殺されちゃうんですかっ!? それは困りますぅ!!」


 ツッコミという名の制止を入れながらAGI全開の走力で少女の前に躍り出る。

 続けて振り下ろされたこん棒を左手に装備しなおした盾で弾き、右手に新たに装備した長剣でオークを切り伏せる。


「タス……ケテ」

「……悪いな。本来はお前らなんかを狩る予定じゃなかったんだけど」


 そのまま続けてゴブリンの群れと残りのオークも処理していく。

 本来であればもっと強力なモンスターを狩ろうと思っていた今の俺にとって、この程度の敵は敵じゃない。


「きゃぁぁぁぁ!! た、助けて、助けてくださぁぁい!」


 と思っていたものの、一匹のゴブリンが俺の隙を突いて背後の少女に飛び掛かる。

 即座に切り捨てようとする――が、俺が装備している剣は最後に斬ったオークの分厚い腹に食い込んで抜けなかった。

 装備を切り替えている時間は無い。こうなったら……。


「っ……おぉらぁぁ!」


 剣を離し、その手で力任せにゴブリンの腹部を殴り飛ばす。

 STRが低めの俺の攻撃なのでやや心配ではあったが、どうにかゴブリンのHPを削り切ったらしくその身体が砂へと変わった。 


「あっぶねぇ……」


 助けに入ったというのに死なれたんじゃ俺があまりにもかっこ悪すぎる。

 ただ少女の危機は救えたが、あまりにモンスターとの間に力量差があり過ぎるせいで、最期のタスケテという言葉が弱い者いじめをしている気分にさせる。

 だからだろうか。妙にむなしい気分になったのは。


 ――いや……違うな……。


 むなしいのはそれが理由じゃない。

 かっこよく、颯爽と現れて『女の子』を救おうと思っていたのに……実際に救ったのは『モンスター達の名誉』だったからだ……。


「……形式上聞いとくけど、大丈夫か?」

「え? あっ! そっか……そうなんですね? わたしはあなたに助けられた恩を返す為に、これから毎秒毎分毎時毎日穴という――」

「うん、大丈夫そうだな。じゃあさようなら」

「あ、ちょっと待ってくださぁい!」


 俺までモンスター同様に名誉を傷つけられては敵わないと撤退しようとしたものの、背を向けるとすぐさま後ろから声をかけられた。

 振り返れば、立ち上がって尻に着いた砂を払う少女。続けて行儀よく居住まいを整えて、こちらを見据えてくる。

 なんだ、今のは冗談か。どうやらちゃんとお礼を言うつもりらしい。

 なら今度こそ颯爽と、気にするなとかっこよく決めて立ち去ろう。


「本当にヤラないんですか?」

「やらねぇ! ……よ」

「言葉に詰まりましたね!? 言い切れるわけではないんですね!?」


 その指摘に反論できず声を詰まらせる俺に対して、糾弾するような言い方をしつつも何故か笑顔で瞳を輝かせている少女。

 なんか……変な子と関わりを持ってしまった気がする。

 ただ、外見は完璧なんだよなぁ。


 身長はここでの俺(・・・・・)より30センチほど低そうなので、150センチほどだろう。歳は十七の俺より一つか二つ下くらいに見える。

 服は清楚かつ爽やかさを感じさせる水色と白で構成された、可愛らしいミニ丈のフリル付きドレス。防御力は低そうな格好だな。

 しかしその清楚風な服装に対して、胸元は上半分、つまり上乳(かなりデカい)が大胆に露出している。

 肌が露出しているので防御力が低そうだが、ある意味では攻撃力の方に強化(バフ)が入っていそうだ。ちなみに座り込んでいる時にちらっと見えた下着は水色。


 髪色も服とその他に合わせてなのか、薄っすらと水色が入っているように見える銀色という特殊な色合い。

 背中に流したロングヘアーと共に、左右のこめかみからぴょこんと垂れている細い二本の尻尾で構成されたツーサイドアップが可愛らしさの演出に一役買っている。


 そして肝心のお顔の方は、一切穢れが無いかのように思える透き通るような白い肌。

 まつ毛は長く目はぱっちりとしていて、鼻は適度に高く、小さな唇は桜色。

 奇抜な髪色でも全く気にならない。むしろそれも相まって、まるでこの世には存在しない理想の美少女を一から作り出したかのような圧倒的可愛さ。

 とまぁ、ここまでくれば男としてヤらない理由など無いと言ってもいいくらいだ。現に俺は完全に色々な意味で目を奪われまくっている。

 でも…、


 ――本当に作り出したものなんだよなぁ。


「その見た目でやりたくない男なんていないだろ」

「え? そうなんですか? ふむふむ……それは私が好みだということでしょうか。それともなんか普段と色々違う気がするので、もしかして私の顔が変わっていたり?」

「いや、俺に聞かれても現実の顔は知らないからな」

「やっぱり! やっぱりここ、現実じゃないんですね!? じゃあ夢ですか? 夢ですよね? あ、夢なら喪失しませんね」

「……なんで思考が全部そっち系にいくんだよ」

「あららぁ~? 何を喪失すると思ったんですかぁ~?」

「くぅっ……!」


 唐突ににやにやし始めた少女が少し低い位置から俺の顔を覗き込んでくる。

 くそっ……今のはひっかけだったか……。


「と、とにかく、もうちょっと他に気になる事とかないのかよ」

「ありますっ! 教えてくれませんか? お礼は身体で払いましょうか!?」

「…………とりあえず教えるのは教える」



 お礼に関してはまぁ……保留で。

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