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作者の想像世界

ある日の朝食

作者: パーミテンション

目が覚めた。


隣を見てみると、彼女はまだすやすやと寝息を立てて寝ていた。


「……」


二度寝でもしようかと思ったが、彼女の可愛らしい寝顔を見るとその気は失せた。


いつも僕よりも先に起きているので、寝顔を見れるということは少ない。


寝顔を堪能してからベッドから出る。


時間を確認するといつもならすでに彼女が起きている時間だった。どうやら僕が早起きなんじゃなくて、彼女が単にいつもよりも起きるのが遅いだけのようだ。


昨日帰りが遅かったから、疲れているのだろう。そっとしておこう。


顔を洗って意識を覚ます。鏡に映っている自分はいつもの顔だった。


おはよう、と自分にそう言った。


さて、何をしようか。


いつも起きたら彼女がすでに朝食を作っているため、予想外にできてしまったこの空白をどう埋めるかは悩みどころだった。


「たまには朝食でも作ってあげよう」


作るのは彼女で、片付けるのは僕だった。たまには両方やってあげるのもいいだろう。


しかし、どうしてそういう分担になったのかを思い出す。それは僕が料理を全くできないからだった。


僕の得意料理は、卵かけご飯。


まあそんなことはどうでもいいとして、冷蔵庫を覗く。


肉やベーコン、千切りにされたキャベツなどがそこにあった。そして、卵。


よし、腕によりをかけて卵かけご飯でも作ってあげよう。


卵を二つ取り出したところで、目をこすりながら彼女がやってきた。


「うー、おはよう」


彼女の方を見ると、まだ眠そうな顔をしていた。


「おはよう。今ご飯作るところだから、顔でも洗ってきなよ」


それを聞いた彼女は驚きで目を見開き、さっきまでの眠たそうな顔は何処へやら、嬉しそうな顔へと変化したが、僕に握られている二個の卵を見た途端、少し顔をしかめた。


「まさかとは思うけど、卵かけご飯だけなわけないよね?」


「え? そうだけど?」


はあ、と彼女はため息をついた。


「彼女のために作る料理がそんなのだったら、彼女に嫌われるよ」


「嫌われた?」


「ううん、好き」


顔洗ってくるから少し待ってて、と言い残して彼女は洗面所へと姿を消した。


少しして彼女が戻ってくると、僕と同じように冷蔵庫を覗く。


「お味噌汁くらい作ろうよ、材料あるんだし」


「僕に見えたのは肉とキャベツと卵だけだ」


「じゃあ今からお味噌汁も作るから待ってて。卵かけご飯って言って、どこぞの料理漫画みたいなやつじゃないんでしょう?」


「それができてれば役割が逆転してるよ」


それもそうね、と彼女は言った。


「まあ、せっかくだから少し手の込んだ卵かけご飯を作ってあげるよ」


「じゃあ、楽しみにしてる」


そう言って、お互いはお互いの料理に取りかかる。料理といっても、僕はただ卵を割って混ぜるだけだが。


この前テレビで言っていた、『美味しい卵かけご飯』なるものを作る。


たった一手間でこんなに美味しく、がテーマだったのに、その一手間が大きすぎて作る気が失せたが、今日はその手間をかけよう。


ボウルを取り出してその中に卵白のみを二個分入れる。あとは泡立て器でメレンゲ状になるまで混ぜる。その混ぜたものをご飯にかけて、最後に卵黄を落とす。それだけ。


単純だが面倒だ。これのどこが一手間なのか知りたいくらいだ。


ひたすらにかき混ぜている横で、彼女は味噌汁を着々と作っていく。


「味噌汁くらい作れる彼氏になってよ」


別に覚えなくてもいいだろ、と言おうかと思ったが、料理を作ると言った時の彼女の顔を思い出すと、覚えておくのも悪くないと思った。


「今度教えてくれて」


「じゃあお昼ね」


彼女とちょっとした約束をしたところで、僕の方は出来上がった。ふわふわだ。


「僕の方はできたぞ」


「おー、ふわふわじゃない。私のはあと少しでできるから、ご飯の用意とかして待ってて」


わかった、と返事をして言われた通りの準備をする。


ご飯を二人分よそい、それに大体均等になるくらいメレンゲ状になった卵白をのせ、卵黄を乗せた。あとは醤油を適量かけて、


「完成」


我ながらよく頑張った。


「お待たせ。お味噌汁もできたよ」


彼女も二人分の味噌汁をよそった茶碗を持ってやってきた。


「準備完了。ご飯とお味噌汁しかないけど、まあ気にしないでおきましょう。さ、食べよ?」


そうだな、と僕は言う。


「「いただきます」」

今回書きたかったのはほのぼの系。

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