表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋人たちの人狼ゲーム(検索除外)  作者: naru
死が2人を分かつまで~恋人達の人狼ゲーム~
9/103

3日目昼 1

〈妖狐村〉

村人陣営……村3、占1、霊1、騎1

人狼陣営……狼2、狂1

第三陣営……狐1


〈キャラ情報〉(行が空いていない……恋人同士)


ナカジマ(男性。KY) ……0日目夜の犠牲者

ソラ(女性。主人公) ……霊媒師CO(ヒュウヤ白)


ヒュウヤ(男性。眼鏡)……1日目の処刑先

サキ(女性。気弱系) ……1日目夜の犠牲者


タカナシ(男性。ワイルド)……2日目の処刑先

シュガー(女性。強気系) ……騎士CO


スズイ(男性。丁寧)  ……占い師CO(ナカジマ白、タカナシ黒)

ウシロダ(女性。清楚系)……占い師CO(ナカジマ白、シュガー白)


タノウエ(男性。ふくよか)……

カワシタ(女性。賢い系) ……霊媒師CO(ヒュウヤ白)

 私たちはいったん自室で夜の時間を過ごすと、再び集結した。


 誰が脱落しているか、しばらく経つと否応なくわかる。


 覆面男がニヤリとしながら言う。


「恐ろしい夜が明けた。

2日目夜の犠牲者はカワシタだ。

昼の議論を始めろ」


 シュガーさんがテーブルをバンッ! と叩いた。


「なんでよ!

なんで霊媒師襲撃してるんだよ!

バカなの、死ぬの?」   


 と泣きながら言う。


 タノウエさんが赤い目をシュガーさんに向けた。


「シュガーさん、どうして――どうして、カワシタさんを守ってくれなかったんですか!

あなたが騎士だと言うなら何で……」 


 シュガーさんはタノウエさんをキッと見て、


「潜伏人狼はアンタだと思ったからよ、タノウエさん。

私は自分が白――騎士――だと知っている。

そして、もしタカナシも白だったら。

能力者COしていない中に人狼陣営がいるとしたら、それはアンタかもしれないからね。

アンタが人狼の可能性、十分ある!」


「もし仮に僕が人狼陣営だったとしても、彼女は――カワシタさんは――関係ないじゃないですか!

それがどうしてカワシタさんを護衛しない理由になるんですか!」


「関係なくない! 

カワシタさんはアンタの彼女でしょ?

だから彼女はきっとアンタの味方につく――たとえ彼女が真霊媒師であったとしてもね。

投票のときもカワシタさんはあんたには絶対に入れないでしょ?

それに議論のときだって、また2日目みたいに二人で自分たちの都合が良いようにセオリーをお並べになるつもりだったんでしょ?」


 シュガーさんは私を指差す。


「だから、あんたが人狼なら味方のカワシタさんは襲撃しないと考えて、私はソラさんを――もう1人の霊媒師COを――護衛した。

でも、どうせ人狼は私を狙うと思っていたし……。

ほんとの本音を言うと、カワシタさんにはむかついていたからね、だからかもしれない、まだむかつかない方の霊媒師COを――ソラさんを――護衛したのかもしれない……」


「あなたはもう村人陣営じゃない――リアル狂人だ。

明らかに真霊媒師っぽかった――村人陣営に有益な情報を言っていた――カワシタさんを守らず、もう1人を守るなんて」


「タノウエさん、ひどいね」


 と私は口を挟んだ。


「私が真霊媒師だよ。

だからカワシタさんは狂人だったのね」


 冷笑しながらタノウエさんを横目で見る。


「それにシュガーさんを責めるところじゃないと思うなあ。

シュガーさんは騎士COし『霊媒師を護衛する』と宣言していた。

その上で霊媒師を襲撃し成功した人狼は、ギャンブルに勝ったんだよ――運が良かったんだね。

普通この場合、いくら霊媒師に死んで欲しくても霊媒師を狙わないよ。

白を一人でも減らしたいだろうから騎士護衛されていそうな人は襲撃候補から外すからね」


「あるいはシュガーさんが人狼なのかも――騎士騙り」


 とタノウエさんは疑わしげに言った。

 シュガーさんはフフンと鼻で笑って、


「そうね?

じゃあ、騎士はあんた?

それとももう騎士は脱落したのかな?」

 

 タノウエさんはシュガーさんをにらむ。

 騎士不在をほのめかすのは村人陣営のタブーだからだ。


 タノウエさんは小さなため息で気を取り直すと、


「霊媒師に霊媒結果を聞きましょうか」


 と私を見ないで冷たい声で言った。

 どうせ偽物だろうけど、と言う調子だ。


「タカナシさんは黒。人狼でした」


 と私は一本調子で言った。


「今日はソラさん吊りですね」


 とタノウエさんは相変わらず冷たかった。

 以前の穏やかな様子は少しも感じられなくなった――カワシタさんが死んでから。


 私はそんなタノウエさんを挑発するように、わざとニッコリ微笑んで、


「私は『霊媒師の仕事は終わり』と言われて吊られる可能性もあることを覚悟しながらも、タカナシさんを黒と言った。

何故なら、私が真霊媒師だから!   

だから、ウソをつきたくなかったから!

それでも吊りですか?   

そんなのあんまりじゃない?」


「セオリーではね、ソラさん吊りです。

たとえあなたがタカナシさんを黒判定せずとも――まだ霊媒師の役割が残っていたとしても――ソラさん吊りになるでしょうね。

対抗が襲撃されたら、残ったもう一人のCOを翌日に殺す。ゲームの流れ的に正しいです。

期せずして、霊ロラと同じ状態に出来るわけです。

ねえ、シュガーさん?」


 とタノウエさんがシュガーさんへ嘲笑を向ける。

 シュガーさんが2日目に霊ロラを主張していたからだろう。

 シュガーさんはそんなタノウエさんに真っ直ぐな視線だけ返し、口は開かなかった。

 

 タノウエさんはシュガーさんから私に視線を戻すと、続けた。


「ソラさんがタカナシさんを白判定していてもソラさん吊りになっただろう。

黒判定しているのだから、なおさらそうです。


スズイさんがタカナシさんを黒と占い、ソラさんもタカナシさんを黒と霊媒したことにより、

『スズイさん――ソラさん』と言う繋がりがわかる――『タカナシさん黒判定組』です。

と言うこと派『ウシロダさん――カワシタさん』が同じ繋がり――同じ陣営――の可能性が高い。

もちろんスズイさんが占い師騙りでありながら仲間の人狼タカナシさんを黒判定した可能性などまだいくつか考えられる可能性があるから、100%そうだとは言えませんけどね。

しかし、確か、こう言う情報――占い師霊媒師の繋がり――を得たかったために、2日目昼は霊ロラを行わなかったんですよねぇ……。

こうなったら、そのまま一貫した考え方でやっていきましょうよ?

『ウシロダさん――カワシタさん組』は、1人――カワシタさんが――脱落しています。

と言うことで今日は『タカナシ黒判定組』の方の霊媒師CO吊りして、バランスを取っておきませんか?

そうすることで、明日に繋がる――人狼陣営を1人は吊ったことになる――、

いや、確実にそうだとは言えませんけど、安全策ではあるでしょう。

今日は役に立たなくなった霊媒師を――ソラさんを――吊りましょう」


「役に立たなくなった、か。

タカナシさん黒の霊媒結果、ものすごく役に立つ情報だと思うけど。

それを言った舌の根の乾かぬうちに、役に立たなくなった、と言われるとはね。

ずいぶん非情だね――村人陣営って」


 私は据わらせた目をタノウエさんに向ける。


「私がタカナシさんを黒判定することで、タノウエさんも助かったんじゃないんですか?

もし私がタカナシさんを白と言っていたら今日はタノウエさん吊りになっていたかもしれない」


「僕がグレーだからですか」


 タノウエさんはやる気無さそうに言った。


「そう言えば、まだ占い師に占い結果を聞いていませんでしたね。

僕はグレーのままかな?

聞いてみましょう。

せーのでお願いします、せーの!」


 と投げやりな調子で合図すると。


 スズイさんはシュガーさんに白のジェスチャーをした。

 ウシロダさんはタノウエさんに黒のジェスチャーをした。


「ふっ」


 とタノウエさんは息を漏らした。


「グレーじゃなくなりましたね。

黒になりましたよ」


 フフンと鼻で笑うと、


「へえ?

つまり、ウシロダさんはカワシタさんを襲撃したのは僕だと言っているんですか。

僕が自分の恋人を襲撃したと」


 ウシロダさんは目を伏せたままだった。

 シュガーさんは皮肉っぽい視線をタノウエさんに投げた。


「まあ、そうやって言えるもんね?」


「は?」


 とタノウエさんが冷たく聞き返すがシュガーさんはひるまない。


「『自分の恋人を襲撃なんかしない』

と言えると思って襲撃したのかもね?」 


 嘲笑を浮かべ、


「私はあんたが人狼だからあんたはカワシタさんを襲撃しないと踏んだけど。

あんたはその想定の斜め上を行った。

自分を恋人を失った悲劇のヒーローに見せかけるために恋人を殺した――そんなサイコパス系人狼。

どうかな?」


 タノウエさんとシュガーさんはにらみ合った。


「フン……」


 と鼻を鳴らすと、タノウエさんは肩をすくめた。


「まあね?

その可能性もあると言ったらあるでしょうね。

僕たちは初対面だからね。

お互いの本当の性格も関係性もわからないだろう……。

僕は自分の恋人を平気で切りすてることができる邪悪な存在(サイコパス)で。

彼女を少しも愛していなかったのかもしれない」


 ニヤリとする。


「でも、そんな理由で人狼だと言われて吊られたくはないですね――僕はそんな人間じゃないとこの場で証明できませんからね。

それはあなた方も同じだ――あなたたちもそれを確信できない。

それより、僕が人狼だと言うなら『人狼ゲーム』的に推理して確かな証拠を示して欲しいですね」 


「いや、人狼ゲームは推理ゲームじゃないでしょ?

心理ゲームだから。

推理ゲームの側面はあるにしても、100%確信できる証拠なんて滅多に見つからないでしょ」


 とシュガーさんは反論したあと、しばらく考えこみ眉をひそめながら、


「でも、ま、推理ゲームとして考えてみると。

占い師スズイさんはタカナシを黒判定。

霊媒師ソラさんもタカナシ黒判定。

つまり『スズイさん――ソラさん』――『タカナシ黒判定組』――を信じるならタノウエさんは白――占い師騙りと霊媒師騙り以外には1人しか人狼陣営はいないはずだから」


「『タカナシ黒判定組』――『スズイさん――ソラさん』――を信じるなら僕は白。

『ウシロダさん――カワシタさん組』の方を信じるなら僕は黒か」


 とタノウエさんは自嘲気味に笑った。


「僕は自分が白だと自分でわかっています。

だからウシロダさんは騙りだとわかる。

と言うことはウシロダさんと繋がりがあると考えられるカワシタさんは狂人だったのか……。

いや、その繋がりが間違っているのかもしれない。

占い師騙りが仲間を黒出ししたか。

あるいはソラさんは人狼だけど人狼仲間を――タカナシさんを――あえて黒判定したのかもしれない。

真占い師スズイさんを味方につけたかったとか……」


「結構危険な行為だけどね。

霊媒師は黒出しすると吊られやすくなるから。

ラストウルフ霊媒師騙りは黒判定したがらないだろうね」


 とシュガーさんは私をかばってくれた。

 かばっているつもりはなかっただろうが。


「いや、そう思われる裏をかいたのかもしれません」


 とタノウエさんが言う。

 私は肩をすくめ、


「じゃあもういいよ。

私を吊れば?」


 と返した。


「ほんとのところ、どうでもいいんだよ。

一応、真霊媒師として反論もしたけどね」 


 自分の隣の空席を見つめる。


「いいんだ――もう死んでも。

ナカジマさんも死んだ。

私も彼のとなりで眠りたい」


「私も同感よ」 


 とシュガーさんはゆっくりため息を吐いた。


「何か議論に参加しちゃったけどね。

ほんとのところ、私も別に誰吊りでもいいや」


 と疲れたように言う。


「今夜こそ私は襲撃されるだろうし。

私はどっちが勝つにせよどうせ死ぬわけよ」


「今夜襲撃されなかったら、むしろ人狼っぽいですよ、シュガーさん」


 タノウエさんの口撃に、シュガーさんは皮肉っぽい笑みを浮かべ返す。


「私、両占い師に白判定された確定白だけどね。

でも確かにね。

何で生きているんだろ、私」


 場はシンと静まり返った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ