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恋人たちの人狼ゲーム(検索除外)  作者: naru
死が2人を分かつまで~恋人達の人狼ゲーム~
8/103

2日目昼 

〈妖狐村〉

村人陣営……村3、占1、霊1、騎1

人狼陣営……狼2、狂1

第三陣営……狐1


〈キャラ情報〉(行が空いていない……恋人同士)


ナカジマ(男性。KY) ……0日目夜の犠牲者

ソラ(女性。主人公) ……霊媒師CO


ヒュウヤ(男性。眼鏡)……1日目の処刑先

サキ(女性。気弱系) ……


タカナシ(男性。ワイルド)……

シュガー(女性。強気系) ……


スズイ(男性。丁寧)  ……占い師CO(ナカジマ白)

ウシロダ(女性。清楚系)……占い師CO(ナカジマ白)


タノウエ(男性。ふくよか)……

カワシタ(女性。賢い系) ……霊媒師CO

 『人狼ゲーム会場』へ戻りしばらく経つと覆面男が2日目の開始を告げる。


「恐ろしい朝が明けた。

1日目夜の犠牲者はサキだ。

昼の議論を始めろ」


 タカナシさんが頭を抱えて言う。

 

「何で騎士は、サキさんを護衛してやらなかったんだ? 

人狼に襲撃して欲しいと言っていて危なっかしかっただろ?」


 サキさん襲撃にショックを受けているようだ。

 その後自嘲気味な笑みを浮かべて、


「いや、騎士を責めるのは筋違いだな……。

『能力者護衛』を指示したのはおれだ。

『能力者護衛』すると人狼に思わせておいて、騎士にはそのウラをかいて欲しかったなんて言うのは、虫が良すぎるよな」


 シュガーさんが彼氏の腕に優しく手を触れた。


「サキさんはプロポーズ直後に死んだ。

女の幸せの絶頂だよ。

ヒュウヤさんと引き裂かれて辛かっただろうけど。

彼の愛を一番感じた直後に死ねたんだよ……」


「何言ってるんだよ。

死んじゃ駄目なんだよ!」


 とタカナシさんは苦しげに言った。


「おれならお前に死んで欲しくない」


「ユウヤ……」


 タカナシさんとシュガーさんは見つめ合った。


「霊媒結果言ってもいい?」


 と私は二人の世界を邪魔したくて言った。


「そうですね、霊媒師には霊媒結果を同時に言ってもらいましょう。

『せーの』でお願いします。せーの!」


 タノウエさんの合図で、


「「白!」」


 と霊媒師CO――カワシタさんと私――は同時に言った。


「両霊媒師COから白判定。

ヒュウヤさんは確定白です」


 とタノウエさんは悔しそうにつぶやいた。


 ヒュウヤさんは確定白。

 サキさんも襲撃されたから白。

 二人は同じ陣営だった。

 同じ陣営になっても引き裂かれてしまうんだ。

 カードを配られた時点では一緒に勝つ道もあったかもしれない。

 配られたカードはラッキーだったのに。

 少しの失言で簡単に無に帰す程度の幸運(ラッキー)


「残り7人中2人、人狼です」


 タノウエさんは場を見渡し、


「占い師に占い結果を聞きましょう。

前日と同じジェスチャーで。

せーのでお願いします。せーの!」


 スズイさんがタカナシさんへ黒のジェスチャーをした。

 ウシロダさんがシュガーさんへ白のジェスチャーをした。


「片黒だな。

おれ吊りか?」


 とタカナシさんが口の端を上げた。


「簡単にあきらめないでよ」

 

 とシュガーさんが切羽詰まった声を出す。


「今日は間違えられない。

今日1人人狼陣営を吊らないと、騎士GJがないかぎり明日パワープレイになる可能性――人狼陣営3人に対して村人陣営2人になる可能性――があります。

ヒュウヤさんサキさんが狂人じゃなかったら」


 とタノウエさんは真剣な顔で皆の顔を見ていく。


「片黒吊りか、霊ロラか。どちらかでしょうね?

両霊媒師COの霊媒結果は同じです。

つまり霊媒師を吊るとしたらカンに頼ることになります。

半分の確率で、真霊媒師を吊ってしまいますね」


「タカナシさんを吊り、明日霊媒結果を見る。

霊媒結果が白と出たらタカナシさんを黒判定したスズイさんは偽物とわかる。

霊ロラは明日の霊媒結果を見てからでもいいと思う。

私が霊媒師だからそう言うわけじゃないけど」


 とカワシタさんは淡々と言った。

 彼女はこんな状況でも冷静さを保っている。


「ヒュウヤさんサキさんが狂人じゃない限り。

残り7人中3人、人狼陣営。

占い師CO2人中1人、人狼陣営。

霊媒師CO2人中1人、人狼陣営。

能力者CO以外3人中1人、人狼陣営。


2分の1の確率で能力者を吊るのと、3分の1の確率で無能力者を吊るのと。

私は後者の方がいいと思う。

ちょうど片黒もいる」


 カワシタさんの冷静な視線を受け、


「おれは人狼じゃない」


 とタカナシさんは言った。


「だから。

能力者COしていない中に1人いると言うなら、タノウエさんか。

あるいは」


 と言ってタカナシさんは自分の彼女を見つめた。

 シュガーさんは首を横に振る。


 タカナシさんはタノウエさんに目を移した。


「僕じゃないですよ」


「おれたち3人の中に確実に1人はいるはずだ。

いや、ヒュウヤさんサキさんが狂人だったらわからないか。

ってことはやっぱり霊ロラがいいんじゃないか?」


「片黒――タカナシさん――を今日吊ったら明日霊媒結果を見ることでどちらの占い師が偽物かわかる。

もし3人の中に人狼がいなくても、『人狼ゲーム』的には正しい吊りだと思う」


 とカワシタさんが淡々と言った。


「タカナシさん、あなたの吊りは無駄にはならない。

たとえ村人であっても。

もし受け入れてくれたら……」


「イヤだよ」


 とタカナシさんはシニカルな笑みを浮かべ、


「受け入れるわけないだろ?

死ぬんだぜ?

彼女のためなら」


 シュガーさんを親指で指す。


「コイツのためなら。まあいいさ、死ねるよ、おれも。

でも何で赤の他人のために死ななきゃならないんだ」


「私もそう思う。

ユウヤ……タカナシは死ぬことない」


 シュガーさんはカワシタさんをにらみ、


「『リアル人狼ゲーム』をしている、こんな状況で。

冷静にセオリー――『正しい吊り』――の話なんかしているあんたの方がおかしい。

まあ霊ロラを避けたくて言っているんだろうけどね、霊媒師COさん」


「何故セオリーの話をするか。

それは少しでも罪悪感を減らしたいからです。

ただのカンや好き嫌いで選んだ誰かを殺すことになったら一生罪悪感に苦しむでしょう。

でもセオリーに乗っ取り考えた結果なら、一生苦しむのは変わらないにしても、少なくともこう思えるわけです――でも、意味なく選んだ訳じゃない、って」


「そうね」


 と頷くとシュガーさんはニヤリと笑う。


「じゃあ今日は霊ロラしましょうよ。

霊媒師には人狼がいる確率が高い――『人狼ゲーム』でよく言われていることでしょ?

今日霊媒師を1人吊って、明日残りの1人も吊る。

あなたの今日の死は無駄にはならないよ、カワシタさん。

絶対明日も霊媒師を吊ると――霊媒師CO2人とも吊ると――約束する。

だからカワシタさん、今日私たちのために死んで。

それもまたセオリー通りじゃない?」


 その後真顔になり、


「あんたはタカナシに同じようなことを言っているけど。

どう思った?」


「ごめんなさい」


 とカワシタさんは初めて顔をゆがませ、つらそうに言った。


「そうです、シュガーさんの言うとおりです。

私は……」


「でも片黒吊りは正しい選択ですよ」


 とタノウエさんが彼女をかばうように口を挟む。


「シュガーさんの言うとおり霊ロラをしたら確かに人狼を1人殺せるかもしれません。

でも今日から霊ロラではどちらの占い師が偽物かはわからない。

もし片黒を吊って霊媒結果を見たら、それがわかるかもしれません」


「確かに真占い師がわかり、どちらの占い結果が信用できるか知ることができるのは有益だよ。

でもどちらが真占い師か確実にわかることなんて、『人狼ゲーム』で滅多にないことなんじゃないの?

占い師騙りは狂人が多いと言うし――まあセオリー通りならね。

狂人による騙りなら、パワープレイにさえ用心していたら、放っておいてもいいんじゃない?

狂人も貴重な白だし。  

占い師のどちらが本物かどうか知るためにタカナシを吊るより、

霊ロラで確実に人狼を1人吊る方がいい!

霊媒師の方が人狼がいる可能性が高いと言うんだから!

霊ロラよ!」


「あなたも、カワシタさんのことを責められない。

彼氏を助けるために霊ロラに持っていこうとしているだけ」


 と私はシュガーさんを見つめた。


「片黒吊り。

今晩、騎士は『霊媒師』を護衛。

明日の霊媒結果で占い師騙りを見破る。

もし両霊媒師の結果が分かれるとしても、人狼陣営同士のつながりが見えるかもしれない。

黒判定占い師――黒判定霊媒師、みたいにね。

大事な情報だよ」


「そして、結局霊媒師吊りになるんでしょ?

だから今日から吊ろうと言っているの。

今日から吊れば明日で2人とも吊れる、確実に1人消える。

霊ロラの方が正しいの!」


 とシュガーさんが刺すような声で言った後。


「投票の時間だ」


 と覆面男がニヤリと言った。


 投票後、しばらく経つとスマホに投票結果が表示された。



 ソラ   ……タカナシ

 タカナシ ……スズイ

 シュガー ……カワシタ

 スズイ  ……タカナシ

 ウシロダ ……タカナシ

 タノウエ ……タカナシ

 カワシタ ……タカナシ

  


「タカナシが処刑される。

タカナシ、立て」

 

 タカナシさんはシュガーさんに笑いかけた。


「おれも指輪、用意しておくんだったよ」


 それから寂しげに目を細める。


「いや、ない方がいいか……。

指輪なんかあったら、おれのこと忘れにくいか。

今から死ぬ奴のことなんか忘れた方がいいんだから」


「なんでそんなこと……。

忘れないよ」


「とりあえず生き残れ。

そして忘れろ」


 と言った後、自嘲気味に笑いながら、


「いやこう言う場合はむしろ『忘れろ』と言われた方が忘れにくいのかな。

もしそうなら……『おれのこと忘れないでくれ』。

『幸せになるな』。

『生き残れ』」


「……バカ」


 タカナシさんはシュガーさんに優しく微笑むと覆面男に連れられドアの向こうへ去っていった。


 私は同情なんてしないよ、私にはお別れの時間すらなかったんだから。


 タカナシさんが消えたドアをしばらく見つめた後、シュガーさんは手を挙げた。


「私、騎士なの」


 覆面男へ嘲笑を向ける。


「不要な役職カミングアウトはやめろ、って言っていたよね。

でも騎士カミングアウトは今必要だと思ったんだよ――村人陣営にとってね。

霊媒師を2人、確実に明日に生き残らせるために。

騎士が誰かわかれば、人狼は確実に騎士を狙うでしょ?

そう言うものでしょう? セオリー通りならね!」


 ヘラヘラ笑いながら、


「人狼、今日、私を襲撃していいよ。

ってそんなこと言うとむしろ警戒して襲撃しないかな?

今日は霊媒師を殺しておきたいだろうし。

でも、私は今日霊媒師を護衛する――だから霊媒師は50%の確率で護衛成功が起きるわけね。

霊媒師を襲撃しちゃダメよ。

襲撃するのは、()()()

騎士の私を襲撃するの」


「シュガーさんが騎士かどうかはわかりませんが、今夜は騎士は霊媒師護衛お願いします」


 とタノウエさんはシュガーさんを牽制するように、ことさら冷静な調子で言った。


「いいのよ、タノウエさん。

騎士が誰か、ぼかすような言い方を今更する必要ない。

もう騎士は脱落しまーす!」


 シュガーさんは立ち上がると、ひらひら私たちに手を振りながらドアへ向かった。


「タカナシを殺した奴らと一緒に生き残りたくないからね」

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