理想への理解
これは"アアルの旅路"の1話から2話の間の空白の1ヵ月の物語。
これは、俺が異世界にいってから1ヵ月の間のことである。
俺は「ここに住む」といったものの、家も何もない状況でどうやって過ごすのか。馬鹿なのかな?俺は。
「マスター、まずは家でも建てますか?」
先程魔方陣から現れた少女が言う。年は14?15?まあ見た目に騙されてはいけない、だって魔方陣から現れたんだから、てか魔法とか、そんなの頭がハッピーな世界なんだろ?
「マスター、どうなさいました?」
「なぜ俺がマスターと呼ばれてるんだ?」
「私を呼び出したのですから、当然です。」
「おーい、さっきの方ー。お呼びですよー」
と、俺は呼び掛けてみるが声は聞こえない。
「マスター?さっきの方…とは?」
あー、そっか。知らないんだな。
「さっきまで声が聞こえてたんだよ、神みたいな。」
するとアアル(だったよな…?)は
「この世界に神はいらっしゃいませんよ?」
…この世界に?
「他にもいくつか世界ってあるのか?」
「マスターはもしかして、いわゆる異世界転生とか、そんなものを経験したのですか?」
「わかるんだ。てか異世界転生って言葉を知ってるのか…」
「別の世界に飛ぶことを異世界転移、とも呼ぶらしいですね。」
わお、異世界でも異世界転移とか結構わかるものなのか。
「あまり一般の人族は知りませんが…そちらは何と言う世界なのですか?」
「世界の…名前?」
「はい。世界には名前が…まさか、知らないのですか?」
「知 ら ん な」
てか、世界の名前は世界だろ。世界のこと世界って言うし。
「マスター、まさかなんの権限も無い方が異世界へと渡ったと、そういうことですか?他の世界については?…まさか、魔法や法律の無い世界?教育…はあるようですし、文化もありそうですが…」
「法律はある。だが魔法も権限も無いな。」
てか権限てなんだ。総理とか大統領か?
「本来、異世界について…転移や転生する世界についての知識がなければ転移等は行われない筈なのですが…」
そうか。なるほど。わからん。
「それじゃあアアル、一つ手伝ってくれるか?」
「あ、はい。なんでしょうかマスター。」
「とりあえず、そろそろ昼だろ?食事とか寝床の確保を」
「わかりました。少々お待ちください。」
そう言ってアアル(名前完全に覚えた。)はそこの木に向かって魔法を唱えた。
「幻刃」
アアルの唱えた魔法はそこにあった木を、瞬く間に加工し、それはすでに家の床を作っていた。なにそれおかしいだろ。
「マスター、ログハウス風でもよろしいですか?」
こっちにもログハウスあるのか。てか、つくるのか?
「作るなら俺もなんかするけど、てか魔法ってそんなピンポイントな使い道なのか?」
流石に家の床を作る魔法ってのは…
「いえ、木を薄く切って土台に張り合わせた程度のものなので、刃物として使われるこの魔法で十分かと。」
「いやいや、同じように切るのも張るのも無理だろそれ。」
「割りと簡単ですよ?マスターもやってみますか?」
無理に決まってんだろ。
「まあ、魔法の練習はしてみるかな。」
「では、まずはカマイタチを飛ばすいイメージで、刃」
そう唱えるとこんどの木は2つに切れた。横一閃である。
「なら俺も、刃」
俺の目の前の木が2つに切れた。
…縦にだが。
「マスター、驚かないのですか?」
「驚いてるけど。」
「そんな澄ました顔でおっしゃられても、説得力が…」
「これは持病だから無理だな。」
「持病…前の体のですか?」
「ああ。顔の筋肉が弱くて、表情を作れないんだよ。」
「お食事は?」
「顎は普通なんだよなあ…」
「ですが、マスターのお体は正常ですよ?」
「甘いな…人の動きは記憶から作られている。ならば動かせないのも記憶によって固定されているから、とかはどうだ?」
「な、なるほど…」
あ、適当だけど納得するんだ。
「そんで、魔法ってのは一朝一夕で覚えられるのか?」
「はい。例えば…幻創」
アアルの唱えた魔法は、先程の床を包み、そこから上がって、横に縦に広がって、
そこには一軒屋があった。西洋風で、立派ダナー
「なにこれこわい」((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
アアルはこっちを向いて、笑顔でこう言った。
「簡単ですよ?マスター。」
「…ちなみにこの魔法はどういう魔法だ?」
「イメージを形にする魔法です。」
「それっておかしくないか?もともと無かった原子が生成される、ってことになるぞ。あ、原子ってわかる?」
「原子くらいわかります。それは、魔子を使っているからですね。」
魔子?
「魔法に使われる原子、と言えばわかりやすいでしょうか?」
なるほどわかった。
「じゃあ、魔法には魔子が必要なのか。でも、そしたら原子が増えて魔子が減らないか?」
「それは大丈夫です。この世界は仕組みが他の世界より魔法よりなので、死体などが魔子として分解されます。」
なるほど。それで永久機関になるのか。
「ではマスター、入りましょうか。」
アアルは家に入るように言う。
「入るのはいいが、どうする?飯とか。」
「ここは人が栽培している植物や動物が豊富です。ですから問題ありません。」
「つまり、一狩りいくのか?」
「はい。剣は使いませんが。」
ゲームの話題も通るのか…異世界すごい
それから採集や狩り(魔法で殺すだけの簡単なお仕事)を終えて家に帰ってきた。
「ただいま…って、これはただいまなのか?」
「ここに住むのなら、ここがマスターの家となります。」
「アアルの家は?」
「マスターの住む場所が私の住む場所です。」
何故今日知った相手に気を許すのか。わかんないなあ。
「それではマスター。料理してきますので、少々お待ちください。」
そのあと食べた料理は美味しかったよ?まあ俺のが上手く作れるかなとは思ったけど。
こんな1日。これがこの世界に来ての初日。
ここに来て思ったことー
魔法こわい。