表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界を数百個救った勇者の俺は駄女神学園で先生をしています  作者: 白銀天城
最終章 勇者追放指令

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/110

混ざり合う異世界 龍一視点

 ここのところ妙な歪みが多く見られる。

 世界各地に現れる歪みは、調査しようとしても痕跡が残らない。

 だが確実に、今まで暮らしていた世界とは違う気がしていた。


「龍一! 直ちに現場へ急行せよ!」


「了解!」


 学園より任務を受け、現場へ直行。

 道路のド真ん中に現れた変な生き物を発見。

 どうやら周囲の人間はみんな逃げたようだな。


「なんだありゃ? スライム……じゃねえな。土遁の術か?」


 鉱石とスライムみたいなものが混ざりあって人型を成している。

 よくわかんねえが敵ってことでいいのかね。


「烈火手裏剣!!」


 とりあえず霊力を込めた手裏剣を投げてみる。

 軽く爆発し、炎が舞い上がるもダメージを受けているかは曖昧だ。


「一応体積は削れたか? リアクションねえのも困りもんだな」


「ちょっと、あんた何やってんのよ! 死にたいの!」


 なんかとんがり帽子にマント着た女がいる。

 中世の魔女みたいな服装だな。とりあえず知り合いじゃねえ。

 一般人が逃げ遅れたか。


「特忍だ! ここは任せて避難しろ!」


 オレはヒーロー。人命救助もお仕事さ。

 とりあえずこの子だけでも避難させよう。


「とくにん? よくわかんないけど、どうやって結界の中に入ったの?」


「結界? 何の話だ?」


 よくわからん。こいつがコスプレのキャラ作りなのか、特忍なのかすら曖昧だ。

 なんか今日は曖昧なことが多いな。


「ここは危ないわ。素人は引っ込んでなさい」


「いやだから特忍だって言ってんだろ。学生だけどちゃんとAクラスだよ」


 学生証であり、特忍であることの証でもある手帳を見せる。

 これで理解してくれるだろう。特忍を知らんやつなんていないはず。


「だから特忍って何よ! 男の魔女なんて聞いたことないわよ!」


「魔女ってなんだよ! コスプレ大会なら他所でやれ!」


 騒ぎすぎたのか、軟体鉱物……ってのも変だがそう呼ぶしか無いものがこちらへ迫る。


「結構早いなあいつ」


「よくわからないけれど、鬼退治なら魔女の役目よ」


「なんで魔女? 桃太郎かよ」


「いいから逃げなさい! あんた邪魔!!」


 そう言われて女の子残して逃げるかよ。

 こちとらヒーロー志望だぜ。

 敵が大きく右腕を振りかぶったのを見て、反射的に必殺技を叩き込む。


「スーパー旋風脚!!」


「ライトニングバレット!!」


 オレのキックの横を雷のビームが突っ込んでいく。

 意図せずぶっ放した合体技は、敵を跡形もなく吹っ飛ばす。


「なんだあ? やっぱお前特忍なのか?」


「何よ今の……やっぱり男の魔女?」


「よくわかんねえけど、一般人は巻き込めねえ」


「で、だったらこの状況どうしてくれるわけ?」


 完全に囲まれた。単騎駆けは得意だし、突破できる自信もある。

 問題はこの自称魔女だ。


「非常事態だ。特忍じゃねえらしいが、戦力に数えていいんだな?」


「こっちのセリフよ」


 魔女の右手に銀色の槍ができる。

 さっきの忍術といい、結構手練なのか?


「んじゃ危なくなったら言えよ? オレがなんとかするからよ」


 戦闘開始。

 意外と接近戦もできるらしく、自然とお互いの背中を守りながら戦うことになる。

 こいつ強いな。ちょっとは頼りにさせてもらおうか。


「やるじゃねえか。お前Sランクか?」


「あのねえ……これでも東の魔女トップなのよ? 裏にいるなら聞いたことあるでしょ? 東凰魔女協会。そこのトップ、御神楽吹雪よ」


「悪い、全然知らねえ。アニメの設定じゃねえのか? とりあえずオレは龍一。国立特忍学園二年生のAランク。結構前に闇忍学院との大規模な戦闘とかあったろ? 裏って言うなら知らないのか?」


「完全に聞いたこと無いけど……その強さ、嘘にしちゃ上等じゃない」


 戦況は完全にこちらが優勢だ。

 どうも雑兵っぽいな。オレの知らねえ妖怪だが。


「こいつら忍術じゃねえ。かといって今まで見てきた妖怪とも違う。魔女の知識を借りようか」


「私にもわからないわ。少なくとも、ホムンクルスや魔術の儀式で作られた存在じゃない。鬼でもない。生物かどうかも怪しいわ」


「しょうがねえ、とりあえず殲滅して……」


 敵が一箇所に集まり、大きな個体へと変貌していく。


「おいおい巨大化とかありなのかよ」


「完全に混ざっているわね。ライジングランス!」


 雷遁の術……雷の魔法か? とにかく魔法は敵に当たるも、たいしたダメージにはなっていない。


「強度も上がっちまってんな」


「削られた部分を別個体と合体して修復しているわね。どういう仕組みなのかしら」


 一歩踏み出すだけでアスファルトを砕いてやがる。

 あれはまずいな。一気に蒸発させるほどの火力でいくか。


「あいつまるごと消せる技とかあるか?」


「溜めが必要だし、消せる保証はないわよ?」


「大丈夫だ。オレも一緒にやる。それで倒せるだろ」


 そこで追加の敵がこちらへ歩いてくる。


「こいつら言葉わかるのか?」


「本能で察してる説を推すわ」


「生き物かわからんのに?」


 殴っても命が散っていく感じがしない。

 面倒だな……とりあえず目の前の敵に集中。

 吹雪を守る。


「増えてるわよ。援護に回るわ」


「いらねえよ。いいからチャージしてろ。その間、必ず守る」


 あの時のオレじゃない。眼の前の一人くらい、守ってみせるさ。

 ベルトに霊力を集中。ポーズを決めて、気合を入れて叫ぶ!


「変…………身っ!!」


 変身速度と鎧の純度を上げた霊装術だ。

 ヒーローに相応しくかっこよくなったと自負している。


「特忍学園Aランク、龍一。推して参る!!」


 この状態なら寄ってくる敵を圧倒的なスピードで潰せる。

 こいつには触れさせねえ。


「円空烈破脚!!」


 両足による回し蹴りに真空波と霊力を乗せて、円月輪のような斬撃を四方に飛ばす。ザコを散らすだけならこれで十分だ。


「凄いのねあんた……おかげでいけそうよ」


 霊力とは違うエネルギーが満ちているのがわかる。

 んじゃオレも準備しますかね。

 両足に意識を集中。決め技に入る。


「ファイナル・ライジング・ブラスター!!」


 その光は力強く、雄大で、一瞬動きを止めて見てしまうほど煌めいていた。


「やるな。オレも仕上げといきますか!」


 残党と融合し、回復しようとするボスに向けて飛ぶ。

 霊力を足に特化させ、風と火の龍を呼び覚ます。

 巨大な七つ首の龍となり、どんな敵でも噛み砕く。


「七龍旋風脚!!」


 敵は抵抗もできず、ただ灰すら残さず消える。

 これがオレの新奥義だ。


「お疲れ。魔女もやるもんだな」


「お疲れ様。あんたのおかげで助かったわ」


 まあ気を抜いていたんだろう。

 上から降ってくる残党に気づくのが遅れた。


「しまっ!?」


「激槍猛爆砕!」


 霊力とも魔力とも違う螺旋の渦が、残っていた雑魚どもを根こそぎ巻き込んで切り裂いていった。


「よかった……怪我ないねあんたら」


 そいつはモデルのような容姿で、流れる薄紫の髪と、紅く綺麗な瞳だった。

 なんだか日本人離れしているな。


「こちらはメテオ対策本部、つまり勇者だよ。あんたら見たこと無いけど、どこの支部の勇者だい?」


 オレとも吹雪とも違う格好で、アニメなんかに出てくるこう……うまく言えねえがバトルもののスーツと鎧が混じったやつで。


「勇者? お前も特忍じゃねえのか?」


「とくにんってなんだい? そっちじゃ勇者をそう呼ぶの?」


 オレが言うのもなんだが、ビル街には似合わねえやつだった。


「また変なのが来たわね……どうせ魔女のことも知らないんでしょう?」


「魔女? 二つ名ってやつ?」


 勇者ね……勇太以外にもいるんだな。

 さっきの必殺技だけでもわかる。手練れだ。

 いやまあ勇者としちゃあいつの方が上だけど、ありゃ存在が反則だからなあ。


「まあいいや。聞きたいこともあるし、事前連絡無しでフォトン使っちゃだめだろう」


「ふぉとん?」


 吹雪と同時に首を傾げる。

 誰か話の通じるやつはいねえのか。


「とぼけても無駄だよ。フォトン無しでどうやってメテオに勝てるっていうのさ」


「メテオってあの変な生き物か? 妖怪じゃねえのか」


「見たこと無いの? 世界中に残党がいるはずよ」


 残党。つまり世界規模で戦いがあって、やつらはその名残。

 なら特忍が知らないはずがない。絶対に。


「知らねえ。その感じだと、全員ああいうスライムと鉱石の中間みたいな状態で出てくるのか?」


「最近は二本角の生き物も出るみたいだけどね」


「角? 鬼が出たの?」


「鬼?」


 この勇者が戦っているのがメテオ。

 吹雪の相手が鬼ってところか。

 どちらも聞いたことがない。


「とりあえず現状把握が必要だな。オレは龍一。国立特忍学園Aランクだ」


「…………それ何の設定だい? アニメ?」


「だったらマシなんだけどね……吹雪よ。東凰魔女協会トップ、御神楽吹雪」


「…………メテオ対策本部所属の勇者、花梨だよ。詳しく事情を聞きたいね」


「同感だ。少し落ち着ける場所にでも行こうぜ」


 確実に、世界に何かが起きている。

 それでもオレはオレの信じた道を往く。

 また会うまで死なねえ。負けねえって、勇者のダチと約束したからな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ