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異世界を数百個救った勇者の俺は駄女神学園で先生をしています  作者: 白銀天城
第三部

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86/110

ビルでの戦闘訓練でも駄女神だよ

 いつものメンバーで、巨大VRルームへ。

 そして十階建てのビルを出す。

 一階入り口で説明開始だ。


「今回は三人で競争してもらう」


 そう言って空中に立体映像の見取り図を出す。

 このビルの構造と、ちょっとした試練ポイントも書いておいた。


「おおー、なんか面白そう!」


「競争と言っても潰し合いじゃない。最初に最上階、屋上じゃなくてな。最上階までたどり着いたやつの勝ち。直接的な妨害は禁止」


「アスレチックのようなものですか」


「近いな。俺が作ったNPCもいるから倒して進め」


「了解!」


 そしてビルの一階からスタート。

 自動ドアを通って開幕ダッシュする駄女神。


「こういう時は最短で広いルートよ!」


「非常口から行きましょう」


「ではお供いたしますわ」


 近場の階段にダッシュするサファイア。

 非常口からそっと侵入を試みるローズとカレン。


「ふっふっふ……必殺女神ショートカットオオオォォォ!!」


 天井に向けて攻撃魔法ぶっ放してやがる。

 だが甘い。そんなことは想定済みさ。


「うっそ!?」


「防御魔法で固めてある。天井と床は壊れないぜ」


 丁寧にスピーカーからアナウンスしてやる。

 俺は最上階にいるだけで暇だからな。


「ええいやってやろうじゃないの!!」


「がんばれー。そこから銃撃来るぞー」


「見切った!!」


 マシンガンタレットによる銃撃をかわし、魔法で破壊しながら進む。


「やるね。死角に配置しているはずだが」


「なんとなくわかる!」


 勘の良さが上がっているのね。

 加護を使いこなしているようで何より。

 んじゃローズたちを見てみるか。


「これははずれでしたか」


「明らかに警備が厳重ですわ」


 非常階段は外についている。

 そこには鉤爪装備の黒服集団が待っているのだ。


「狭い場所での戦闘は不利ですね」


「相手の数がわかりませんものね」


 階段の踊り場で戦闘中か。

 爪は足場の少ない環境で、引っ掛けてぶら下がる事もできて便利なのだ。


「室内に行くしかありませんわ。ええい!!」


 近場の鉤爪を超能力で浮かせ、外側に張り付いているやつを落下させている。


「さて、NPCにどこまで通用するか知りませんが、階段は熱しておきましょう」


 高温の炎にて階段を炙り、二人揃って室内へ。

 意外と戦闘法がえぐいぞ。


「さあそのエリアはしんどいぞ」


 来た道に隔壁が降り、背後からどんどん壁が増えていく。


「閉じ込められますね」


「走るしかありませんわ!」


 猛ダッシュで抜けていく二人。

 上への階段を抜けた先は、赤外線センサーの網である。


「これはまた……」


「どのみちこれでは抜けられませんね。試してみましょうか」


 そう言って透明になるローズ。

 体温とか諸々まで消えるので、実はそれで突破できる。


「素晴らしいですわ」


「行けそうですね。装置はこれですか」


 無事赤外線装置の元を破壊完了。

 こいつらは中々順調だな。

 続いてサファイアを見てみよう。


「いいこと思いついたわ!」


 そしてやって来たのはエレベーター前。

 だがそれは当然罠だ。さあどうする。


「ふっふっふ。わたしを舐めるんじゃないわよ」


 エレベーター内部のボタンを押し、何故か外に出る。

 そもそも一階のボタン押してやがるぞ。


「いってらっしゃーい」


 普通に見送りやがった。こいつの意図がわからん。


「はいせーの!!」


 突然閉まった扉をぶち破りだした。


「せい!!」


 そして箱を吊っているワイヤーを切断。

 でっかい音を出しながら、エレベーターさんが一階に落ちてぶっ壊れました。


「何やってんだこいつ?」


「女神跳躍! アンド飛行!!」


 空洞となったエレベーターの通り道を、上に向かってまっすぐ飛行していく。


「ふっふーん。ここに罠とか仕掛けらんないでしょ!!」


「うーわきったねえこいつ!!」


 エレベータートラップは、各階に行くと自動で扉が開き、敵が現れるというもの。

 つまりこんな力技というか、外道技で進むことを想定した作りじゃない。


「ここが最上階ね! 女神雷砲!!」


 内側から扉をぶっ壊し、最上階の通路へ躍り出る。

 こいつずるいわ。どんな起点のきかせ方よ。

 女神の所業じゃねえな。


「だがこの通路はしんどいぜ」


 警備ロボットが控えている。

 そして床が後ろに下がる移動床。

 そこへ銃撃がどんどん押し寄せるのだ。


「わっわっ、あっぶない!」


「さあどう出る?」


「むうう……まずロボを倒す! 圧縮女神砲!!」


 とりあえず敵を倒す方向だな。

 まあそれはいい。だが奥の召喚魔法陣を壊さないとロボは止まらないぞ。


「なんで増えるのよ!」


 女神ってのは飛べるやつが多い。

 だから対策としてロボ弾幕がある。

 銃撃を捌いて先へ行かないといけない。


「ブリューナクボンバー!!」


 そして起こる大爆発。だが通路は壊れない。

 ここは最終関門。ちょっと頑丈なのさ。


「インフェルノブラスター!」


 炎の螺旋がロボと魔法陣にかけた結界を壊す。


「今です、カレン」


「お任せですわ!」


 魔法陣を引き寄せ、無効化能力で消している。

 凄いな。魔力の塊を超能力で引っ張ったのか。


「あんたらいつの間に……」


 ローズとカレン到着。

 気づいていなかったようだが、実はサファイアの戦闘は観察されていたのだ。


「戦闘は見せてもらいました」


「おかげで対策も練れましたわ」


「なんかずるい……」


 一番ずるかったのはお前だぞ。

 そして全関門を突破し、俺のいる部屋へとやって来た。


「おめでとう。クリアだ。っていうか三人同時かい」


「まあわたしにかかれば楽勝よ!」


「女神の成長速度を甘く見ないことです」


「でも疲れましたわ」


「んじゃ飯食いながら反省会だ」


 食事は作ってある。

 戦闘は録画したので、大画面で見ながら話す。


「各自能力の使い方に上達が見られる。工夫もできている」


「相変わらず料理の腕が凄まじいわね先生」


「肉のおかわりを希望します」


「ちゃんと聞けって」


 飯に集中してやがる。

 先に食い物を与えたのは失敗だったかも。


「途中のトラップは発想力の問題だ。力技以外での突破を考えるように。あとサファイア、お前ほぼ反則だからな」


「なんでよ?」


「こんなん無茶だろ」


 エレベーターぶっ壊すシーンを流す。


「これはないと思いますわ……」


「効率的ではありますが……」


 二人とも引き気味である。

 別に裏技禁止ってわけじゃない。

 最初から抜け道を覚えると、自力が育たないのだ。


「こういうのはもっと育ってからやること。今は基礎能力を高めなさい」


「はーい」


「ま、成長していることは認める。個々の判断はできているようだし、戦闘面じゃあ勇者の邪魔にはならないだろう」


「これでもまだクリアには足りないということですか?」


「初心者勇者とかならアドバイスもできるだろうけれど……魔王討伐までは不安だな」


 最終目的は世界を救うこと。

 だが複雑な世界は担当するべきではないだろう。

 したがって魔王倒せばいい世界へと飛ばすのだ。


「魔王ねえ……そんなに魔王って強いの?」


「んなもんそいつによるだろ」


「ならば一番強い魔王とはどういうものですか?」


 言われて少々考える。

 まず強い魔王という存在を覚えていない。

 遠い遠い昔にいた気もするが、もう記憶の彼方だし。


「うううむ……ああ、いたいた」


 たった一人だけ、なんとか思い出した。

 そういやまだ死んでいない魔王がいたな。


「昔たった一人だけ、魔王を弟子にしたことがある」


「何やってんのよ……」


「多分だけど、今でもそいつが一番強いよ」


「今でも? 生きているのですか?」


「ああ、もう悪事はしてないってかできないよ。善行積めば、どっかの世界で会ったらリベンジさせてやるって約束もしたし」


 そうそう思い出してきた。

 なんか見込みがあって、変わったやつだったからな。

 弟子にしたらめっちゃ強くなったんだ。


「忘れっぱなしですか」


「異世界で偶然出会うってことも無いよな。よく考えたら」


「こうして女神のことも忘れていくのですね」


「人聞き悪いぞ。別に忘れてないって」


 ちゃんと思い出せるよ。うむ、大丈夫だ。

 まだまだボケる歳じゃない。きっと。


「美由希のことは忘れていましたね?」


「あれは成長しまくってたからだよ。中学生が成人女性みたいになってたらわかんねえの」


「まあ……それはわかるわ。人間とか凄いスピードで老けるわよねえ」


「女神は不死のやつばっかりだからなあ」


「やはり先生のような超人こそ女神といるべきですね」


「駄女神だけは勘弁してくれ」


 最近ずっと駄女神だったぞ。

 駄女神がいるからピンチな世界なのか、ピンチな世界は駄女神じゃどうにもできないのか。

 あまり考えないようにしよう


「はい、飯食ったら帰るぞ。次の授業までにスキルは磨いておくように」


「はーい」


 今はこいつらを鍛えるのみ。

 次の授業内容を考えながら、ぼんやり今までの女神との旅を思い返し、なんだかちょっと懐かしくなった。

 ちゃんとこいつらも立派な女神にしてやろう。


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