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異世界を数百個救った勇者の俺は駄女神学園で先生をしています  作者: 白銀天城
第三部

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真理も料理も駄女神だよ

 授業のちょっと前。珍しく早く来ていたサファイアと暇潰しタイム。


「みずかがみ!」


「みみ」


「みとみつくに!」


「にがみ」


「またみ!?」


 なんかしりとり勝負を挑まれたよ。

 ちなみに八回連続『み』にしてやった。

 意外と語彙力あるのねえサファイア。


「あーもうなんでそんな強いのよ!」


「俺にしりとりで勝てるわけ無いだろ」


「なんでよ!」


「世界の真理から引っ張ってきてるから」


 異世界攻略の折、面倒だったり、できる限り早く救わないと危険だと使う奥の手だ。


「どういうことよ?」


「その世界が誕生してからの歴史というか、記録みたいなのがあるだろ?」


「……そういったものを世界の真理、真理に到達すると言ったりするやつよね?」


「そうそう、それぱぱっと読破して、そっから単語引っ張ってきてる。だから全世界の言葉を知っている前提じゃないと対等にならない」


「うーわ、きったないわね……真理なんて女神ですら発狂しかねない量のはずよ」


「勇者だからな」


「どこまでも卑怯ね先生……」


 なんか呆れ顔半分、ふてくされ半分だな。

 ちょっと大人気ないか。でもこいつに知力勝負で負けるとダメージでかそうだし。


「っていうか読むの面白いの? 複数の世界でやってるでしょそれ」


「どうしてもやることなくて暇な時間に読んだりするんだけどさ。意外と面白いぜ」


 ぼーっと世界の成り立ちとか、エネルギーの仕組みとか見るの嫌いじゃない。


「しりとりにしか使えないじゃない」


「んなことないさ。薬の調合法とか」


「回復魔法あるでしょ?」


「敵の弱点探したりとか」


「殴れば倒せるくせに」


「俺は……脳筋なのか……?」


 あれえ……味方には回復魔法でいいし。敵は殴れば死ぬし。

 ひょっとして実戦で活かせていないのかな。


「いやあれだよ。超反則技とかできるし」


「先生が言うほどって興味あるわね」


「真理に、新しい単語書き込むんだよ。常識ですよーって追記して」


「意味わかんない」


「まったく新しいワードをなぜか常識として認識する。だからしりとりで無限に続けられるぞ」


「結局しりとりじゃない。結構遊びに夢中になるわよね先生」


 遊びにしか使えない能力みたいに言われた。

 なんだろう……凄いことですよね? 真理に到達して読破できて改ざんできるの。

 自信無くなってきた。誰か教えてくれ。


「女神界の真理も読めるの?」


「読めるぞ。でもやらない」


「なんで?」


「プライバシー覗くみたいで気に入らん。女神界は秘密も多いみたいだし、真理へのロックもかなり厳重でな」


 面白半分でロックを開けるのはなんか微妙。

 誰だって秘密くらいあるだろうし、勇者っぽくないだろ。


「じゃあわたしの昨日のおやつとかわかるの? やってみせてよ」


「面倒な……芋ようかんだな」


 まあ本人の了解取れりゃいいか。

 ささっと調べて答えを出す。こんなん数秒あればできる。


「へー」


「わかんねえのにクイズ出すなや」


「そんな細かいこと、いちいち覚えているわけないじゃない」


 なぜ胸を張る。こいつのアホさ加減は治らんなあ。


「何を話しているのですか?」


 ローズとカレンが入ってきた。

 俺たちが先に来ている状況が珍しかったのだろう。

 不思議そうな顔と、多少の好奇心が見て取れる。


「世界の真理についてよ!」


「哲学ですの?」


「いや、そのまんまの意味だ」


 経緯を軽く説明してやる。

 みるみる呆れ顔になっていきますよ。


「そんなことをしたら勝てるわけがないでしょう」


「いやいや、昔の仲間とやったんだけどな、この勝負が熱いんだよ。どっちが早く書き換えて、それっぽく設定作るか。さらに相手の作った言葉に『ん』を書き込めるかっていう攻防が……」


「化物の共演について話されても困ります」


 なにゆえ不評ですか。やってみると楽しいのに。


「他に楽しみはなかったのですか?」


「他ねえ……んー……料理かな」


「家でも結構作ってるわよね」


「家庭的な勇者というのも、また不思議ですね」


「俺にとって料理は空腹を満たすものじゃない。その世界を楽しむスパイスだ」


 冒険で自炊の必要があった。

 そして睡眠も食事も必要なくなった。

 そうすると、食事は純粋な娯楽になる。

 数が減っていく娯楽の中で、料理が残った。


「よし、今回は料理をします!」


 お手頃で清潔なキッチンを召喚。調理実習いってみよう。


「前に授業で餃子作ったわね」


「今日は応用編だ。包丁を多めに使う」


 そして野菜炒めと玉子焼きを作らせる。

 全員分の野菜をちゃんと切らせて、包丁の練度を上げよう。


「雑にやるなよー。これも授業だ」


「野菜が多いわ……お肉ないのお肉」


「肉か。最近ちゃんと食ってないな」


「お魚もないですわ」


 なんか一人暮らしが長くなると、魚って食べなくなるんだよなあ。

 別に骨とか魔法で消せばいいんだけど、なんか避けがち。

 そのへんまだまだ俺も人間なんだよ。


「んじゃそっちは俺がやるか」


 アイテム欄からマグロ登場。まな板に乗り切っていない。


「なんで丸ごと一匹なのよ」


「刺し身とか焼き魚とか色々やる」


「解体ショーということですか。ここにそんな器具はありませんよ?」


「包丁でいけるぞ」


 手を洗い直し、キッチンの包丁で軽く切っていく。


「いやいやマグロってそうやるもんじゃないでしょ!?」


「俺ならクジラでもこれでいけるぞ」


 昔行った世界で、クジラ丸ごと捌いて出せっていう勝負あったからな。


「刺し身作ってやるよ。食えるか?」


「好き嫌いはないわ」


「数少ない長所ですわね」


「もっといっぱいあるわよ!」


 いつも通りの会話を聞きながら、淡々と調理続行。

 さっと皿に乗せて出す。久々にやると面白いな。


「ほれ、野菜切り終わったやつからそれ食ってろ」


「やった! 遠慮なくいただくわ!」


 今まで料理を手伝わせていた効果が出ているのか、それなりに早いな。

 雑にやっているわけでもないし、基本は身についてきたか。


「おいしい!」


「質が良いのは理解できます。ですが、どうやってただの刺し身でここまで……」


「まるで細胞単位で切る場所が理解できているかのようですわね」


「それくらいできないと、料理バトルでは勝てないんだよ」


 こんなのできて当然。そのうえで極上の料理をお届けするのさ。


「ごく普通の包丁一本で、あんな料理ができるとは」


「料理はやればやるほど面白いぜ」


「確かに、地味な成長を感じます」


 よしよし、料理にプラスのイメージが付いたな。

 意欲を上げていこう。先生っぽいじゃないか。


「はいじゃあ焦げないように野菜炒めができたな。あとは玉子焼きだ。これができれば初級卒業な」


 それぞれ作ったものを試食しながら指示を出す。

 今回はだし巻き卵です。難しいから頑張るのだぞ。


「ん、美味いな。野菜炒めくらいならもう心配ないか」


 サファイアのは味濃いめ。男の料理っぽい。

 ローズのはきっちり分量測っての王道の美味しさ。

 カレンの味付けはさっぱりめ。女の子の料理っぽい。


「全部食べるんじゃないわよ?」


「わかってるって」


「できましたわ!」


「よし食ってみろ」


 まずカレンのやつからだ。

 箸を入れると、きちんと焼けていないため、液状に出てくる。


「あらら」


「中まで焼けてなかったみたいだな」


「難しいですわ」


「よし、できた!」


 続いてサファイア。火力が強すぎたのか、少し焦げているしちょっと硬い。


「うーむ……焼きすぎだな」


「ではこちらをどうぞ」


 ローズ作の玉子焼きはちゃんと焼けているし、焦げてもいない。

 ちょっと形が悪いが、それでも食える。


「ん、いい感じだな」


「形が整いませんね」


「そこは練習だな」


 形はカレンが一番整っている。

 そこから全員で四苦八苦しながら数回繰り返し、なんとか全員完成した。


「きっつ……料理しんどいわね」


「これを毎日やるのは疲れますね」


「簡単なものを作るにとどめたいですわ」


 何度もやっていると疲れが出る。

 そりゃそうだ。火を使うのは意外と体力消耗するもんだ。


「よし、よくやった。じゃあ野菜炒めと玉子焼き食って終わるぞ」


「もう冷めてるんじゃないの?」


「俺が料理の時間止めておいた。さ、食うぞ」


 そんなわけで調理実習は無事終了。

 熱心に取り組んでくれたし、ちょこちょここういう授業を入れていこうと思いました。


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