合体ロボットでも駄女神だよ
さてせっかくの合体ロボなので、合体してもらおう。
「よーし、いくわよみんな! 女神合体!」
「了解ですわ!」
「合体モードに移行します」
サファイア機を一番上とし、ローズ、カレンの機体が下から変形しつつ重なっていく。
「うわわわわわ!? 揺れる!?」
「合体はオートでもできるが、ちゃんと精密作業としても慣れろ。今回はその中間。レベル普通だ」
「し、姿勢制御を……」
がったがた揺れだし、合体失敗でがしゃーんと分離。
「うきゃあぁぁ!?」
「うぅ……不覚を取りました」
「難しいですわ……」
衝撃吸収機能があっても揺れる。俺がそうしたから。
そうやって少しずつ慣れていって欲しい。
「慎重にな」
「わかってるわよ! もう一回行くわよ!」
「今度は私が頭になります」
そこから試行錯誤を繰り返し、ついに巨大なスーパーロボットが誕生した。
「ふははははは!! どうよ! これが女神の力よ!」
「科学の力じゃね?」
黒いボディに赤いライン。どシンプルだがそれがいい。
そんなロボットに仕上げてみましたよ。
足りなかったのでビームを防ぐマントと、頭にツノをこっそり追加しました。
「胸部分に全員の操縦席が来るのですね」
「足や腕にあると危ないだろ。ロケットパンチで人まで飛ぶし」
「それは危険ですわね」
そこは親切設計ですよ。胸を貫かれると大ピンチって欠点もあるがな。
胸パーツを丈夫に作ればよし。腕よかマシだろ。
「また木人の群れ出すから、それ倒してみな」
大きな木人形召喚。今回は多体一を想定。頑張れ駄女神。
「いくわよ! メガミビイイイイイム!!」
額の宝玉を通して、眩いビームが敵を薙ぎ払い宇宙を照らす。
「あれ? 胸から出るんじゃないの?」
「それ女神ブラスター」
「では武装を試しましょう。メガミスパイラルボンバー、発射」
両腕が回転しながら光速で相手を貫いていく。
やはりロケットパンチは必要だよな。
「強いわねえこれ……」
「普通の異世界なら、銀河の数百ぶっ壊せるからな」
「なぜ加減というものを知らないのですか」
「それくらいのパワーが必要だからだよ」
でなきゃ通常の兵器で対処できちゃうだろ。
そうじゃない化物軍団用なの。
「これなら楽勝ね」
「じゃあボス出そうか」
『クハハハハハハ!! 我輩は暗黒大帝!』
どす黒いオーラを放つ、悪魔のような顔で、背中にロケットブースター。
上半身が熊のようで、下半身が龍だ。
手にはこれまた黒い大剣と盾を装備。
「うえぇ……何こいつ」
「いかにもなキメラですね」
「暗黒大帝の宇宙戦仕様だ。量産型に改良を加えて、宇宙での継戦能力をアップさせたバランス型だな」
「大帝量産されてんの!?」
「しかも生身ですわ……どこが宇宙船仕様なんですの?」
「背中のブースターと、内蔵された酸素ボンベかな」
あとなんか機能があったけど、弱かったので覚えていない。
「印象に残らない敵でなあ」
「先生が倒したんですの?」
「おう、別世界のボスだった」
序盤の敵としては最適だと判断した。強敵はしんどいだろう。
『女神どもよ、絶望をくれてやろう』
「そんなよくわかんないボスに負けてたまるもんですか!」
「いきますわ! メガミトマホーク!」
巨大なトマホークを腕から射出。片手でブンブン振り回す。
『フハハハハハハ!! ぬるいぬるい!』
盾と剣で防がれ、さらに反撃を加えてくる暗黒大帝。
見た目に反してストロングスタイルだな。
「斬撃ではダメですか。パワーで押しましょう。サファイア」
「任せなさい! メガミゴッドハンマー!!」
トマホークを巨大なハンマーへと変形。
全力で振り下ろす。
『ヌウウウウウ! やりおるわ!』
これには剣と盾を持ってしても厳しいのか、ジリジリと押し負ける。
『暗黒ブレス!』
ここで大帝が口から黒い炎を撒き散らす。
まあ化物だし、このくらいはできていいよな。
『死ねい!』
「分離!」
大帝の剣が振り下ろされる直前、なんとか分離して脱出成功。
やるね。とっさの判断は戦闘経験を積ませたおかげかな。
「わたくしが上になりますわ! 合体!」
今度は頭をカレンが担当。青を基調とした近接戦闘に特化した機体だ。
「まずはその盾を破壊します! 無効化アンドふりかけタイフーン!」
『小癪なあぁぁ!!』
ふりかけをふんだんに含んだ竜巻が、大帝の動きを止める。
拘束されたことを確認し、電撃を纏った必殺キックを決めていく。
「必殺! 女神流星脚!」
『グハアアァァァ!?』
これで装備を破壊完了。もう少しだ。頑張れよ。
「畳み掛けます。メインを私に」
ローズ機は白基調で魔力の伝達率が高い。
少し細身で、機動力と一撃離脱の火力をメインにした機体だ。
「太陽の炎よ、翼となりて、悪しき力を討ち滅ぼすのです」
ローズの魔力を機体に伝え、真っ赤な炎の翼を展開。
すれ違いざまに何度も大帝を切り裂いていく。
「今です、サファイア」
「任せなさい! 再合体!」
黒い機体に合体完了。胸に圧倒的なエネルギーが集まっていく。
「メ・ガ・ミイイイィィィブラスタアアァァァ!!」
『我輩が……敗れるとはああぁぁぁ!!』
燃え盛り、体が崩壊を始めていく暗黒大帝。
今回は女神の順応性の高さによる勝利だ。
『だが覚えておけ……我輩を倒しても、第二第三の暗黒よりの使者が現れるだろう。クックック、ハーッハッハッハ!!』
お約束の高笑いを残し、悪は滅びた。
「やるね。無事撃破だ」
「いよーし! やればできるのよ!」
「ミッションコンプリートです」
「やりましたわ!」
喜びもつかの間。女神たちの背後より、聞き慣れた声がする。
『クックック、よくぞ第一の我輩を倒した』
そこには元気な暗黒大帝さんの姿が。
今回は黒から金にグレードアップ。
「生きてる!?」
「確実に倒したはずです」
「第二第三の帝王が出るって言っただろ」
「早すぎるでしょうが!?」
「俺も倒した時にそう思ったよ」
まったく同じリアクションだったよ。
どんだけ出たがりなんだ暗黒大帝。
『暗黒大帝ゴールドが相手になろう!』
「これどうすんの?」
「頑張れ」
「仕方がありませんね」
「やってやりますわ!」
そしてなんとかかんとか撃破。
全員疲れてはいるが、怪我はない。
『よくぞ第二の我輩を倒した。褒めてやろう』
「また出た!?」
『この宇宙の暗黒帝王・季節の野菜ピューレ添えが天誅を下す』
「名前が料理っぽいですわ!?」
『さあ料理で勝負だ!』
「とうとうロボ関係なくなりましたね」
俺もここから料理とか神経衰弱とかやらされたなあ。
最終的に面倒になって殴り飛ばしたけど。
『今回のテーマは宇宙フグの刺し身だ!』
「未知の食材が来ましたわよ」
「私に考えがあります」
ロボットに乗ったままでも使える大きなキッチンで料理が始まる。
「精密作業ならお任せを」
「任せるわよローズ」
『ヌハハハハハ! 負けん! 負けんのだ!』
で、どうなったかというと。
『グッフアアァァ!?』
実食で毒を抜かずに出された料理食って死にました。大帝が。
「毒っぽい部分を重点的に刺し身にしました」
『料理人の風上にもおけぬ……グフウ……』
「悪は滅びたわ!」
どっちが悪かわからんなこれ。
『ならば暗黒大帝リサイクル・エコが相手だ!』
「なんて……環境に優しそうな名前ですの……」
今度は緑で目に優しい暗黒大帝さんです。
『どちらが宇宙のゴミを片付けられるかで勝負といこう!』
「つまりあんたを消せばいいのね。メガミブラスター!!」
『ヌアアアァァァ!? ゴミの分別は丁寧にいいいぃぃぃ!!』
似合わんこと言いながら爆散する大帝。さらばだ。
『ここはタイピングめっちゃうまい暗黒大帝が相手をしようぞ!』
「名前が雑ですわ!?」
『このタイピングソフトで勝負だ!』
「いつまで続くのこれ!」
「頑張れ。多分もうちょっとだから」
そしてさらに三回ほどアホな勝負をしたところで授業は終わり。
次はもうちょっと飽きない工夫と、手短に終わらせる必要性を感じた。
後半完全に飽きたからな。改めて授業を作る難しさを痛感したよ。




