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異世界を数百個救った勇者の俺は駄女神学園で先生をしています  作者: 白銀天城
第一部

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37/110

完全ノープランだから駄女神だよ

「はい授業やるぞおおおぉぉ!!」


「うわきゃっ!? 急におっきい声出さないでよ!」


 いつもの教室。いつもの四人。今日も今日とて授業である。


「はい授業します。すんぞ。今からだ!」


「どうしたのです先生?」


「いやなんかな……最近真面目にやりすぎてないか?」


「それは素晴らしいことですわ」


 なんかマンネリしたのでテンション上げてみた。

 しんどいのでいつもの感じでいこう。


「そうなんだけどな。なんかこう教師とか真剣にやりすぎて、潤いとか無い気がしてさ。よっしゃクソゲーやろうぜ。筐体持ってきたから」


「さては今回ノープランですね」


「おうよ。たまにはいいだろ」


 最新式格ゲー筐体を出す。様々なゲームが入っている優れものさ。


「ベルスクやるわよベルスク」


「格ゲーじゃねえのかよ」


「二人プレイよ! チームワークを磨くの!」


「いいね。授業っぽいぜ!」


「先生、お気を確かに」


 そんなわけでベルトスクロールアクションをやることになりました。

 筐体を錬成でいじり、二人並んでプレイできるものに変更。


「うっし、久々に本気の俺を見せてやるぜ」


「スティック壊しそうね」


「安心しな。加減はできる」


 昔流行ったタイプのゲームで、出て来る敵をパンチやキックで倒しながら進んでいくやつ。

 縦に軸をずらしたり、飛び蹴りや投げを駆使して進む、技術介入度が高いゲームでもある。


「なんだこれ? ファイナル女神ファイターじゃないのか?」


 メジャーなやつじゃないな。女神界にしかないゲームかもしれない。

 名作によく似ている。いやよそう。似ているだけだ。


「おおらかな時代があったのよ」


「……クソゲー臭がするぜ」


 クソゲーでした。理不尽に強い敵。どこかで見た敵。自キャラが弱い。

 死に技が多いとクソ要素がふんだんに盛り込まれたゲームだった。


「いかん……台パンしそう」


「確実に壊れるわね」


 サファイアは順調に進めていく。真似して行動するも、すぐに敵キャラによって割り込まれてしまう。体力減るの早いな。


「ふっふっふ、助けてあげようじゃない」


 俺のキャラごとまとめて蹴り飛ばされる。


「味方に攻撃判定あんの!?」


「緊張感出るでしょ」


「知ってて殴んなや!」


 はい無理。二面で死にました。操作に慣れる前に死にました。

 半分くらいサファイアが悪い。


「よし、ローズ、カレン。二人でやってくれ」


「完全に面倒事をなすりつけられましたわ」


「ふむ、興味がありますね」


「お茶を入れてきますわね」


 そんなわけでローズが一人プレイ。

 とりあえずおやつ食いながら観戦でもしよう。


「なに食べてんの?」


「揚げもち。俺は塩派だ」


 揚げ餅は醤油より塩だと思う。

 ちょっとしょっぱいが、飲み物と一緒に食うとよい。


「塩分摂り過ぎはいけませんわよ」


 カレンがお茶持って戻ってきた。お礼を言ってひとつ貰う。


「わかってるよ。たまーにしか食わん」


 いざとなったら能力とかで体質改善はできる。

 そもそも体調不良ってほぼならないんだよなあ。


「スキルに頼ってはいけませんわ」


「わーってるっての。おかんか」


「意外とだらしないのね。あ、おいし。ちょっとしょっぱいけど」


 言いながら人の菓子勝手に食ってやがる。

 まあ塩分多いことは認める。

 お茶と合うので、今日は食べてしまおう。


「先生はお部屋でごろごろしていることが多いですわ。休日くらいもっと健康的に……」


「いいんだよ。先生は大変なの」


 女神界は、あまりうろちょろしていると目立つ。

 俺しか男がいないからだ。知り合いの女神に出会うと騒ぎになるし。


「カレン、協力しますよ。私にだけクソゲープレイさせるとはどういう了見ですか」


「あらあら、失礼いたしましたわ」


 頑張るなあ……俺とサファイアは完全に観戦モードだ。


「先生でもクリアできないゲームとかあるのね」


「方法はある。けれど、イカサマっぽいもんでクリアしてもつまらん」


「方法ってなによ?」


「俺自身の運のステータスを死ぬほど上げる。これでほぼどんなゲームでもクリアできる。極めたら運を上げずに実力でもできる」


「格ゲーは実力でやってたわね」


 格ゲーは運の要素もあるが、読み合いや人の癖を感じることが重要。あと知識。

 よって運だけで勝てるほど甘くはない。そこが好き。


「昔は魔王や邪神にも強敵がいたのでしょう? やっかいな敵はいましたか?」


「やっかいなやつねえ……」


 つまり単純に強いやつじゃあダメってこと。

 絡め手が得意で、凄くうざいタイプ。


「何人かいたけど……あのガキかな。正確にはガキの姿をした悪意そのもの」


「子供? 事案になるからですか?」


「それもあるけどさ。世界を悪意と陰の気で染めて滅ぼす敵がいた」


「そいつどう強いのよ?」


「それまで明るく楽しい世界だったのに、そのガキが来てから暗く、陰鬱とした世界になる。モブがどんどん黒い影に染まり、晴れの日が極端に減る」


「気持ちの悪い敵ですわ」


「最後は仲間と一緒に完全消滅させた。薄気味悪いやつだったよ。強いというより不快ってのが正しいかもな」


 それに比べれば、クソゲーもそこそこ楽しめるだけマシなのかもしれない。


「さては誰も私のプレイを見ていませんね?」


 ローズがじっとこちらを見ている。いかん忘れていた。


「悪い悪い。どうだ、いけそうか?」


「無理ですね。完全なクソゲーです」


 ちょっと疲労の色が見える。回復魔法をかけてやった。


「クリアできる裏技とか、バグでも見つけようとしましたが、クソゲーのくせにバグっぽいバグも見当たらず……」


「さらにイラッとするなそれ」


「わたしもちゃんとクリアできたことないわ」


 ちょっと触った感じでもう駄目っぽかったし。

 サファイアと俺でもガチでやんなきゃ無理なら相当クソゲーだ。


「別のゲームするぞ」


「今日はゲームでいいのですか?」


「なんかそんな気分。次の時間からは真面目にやろう。レクリエーションは大事さ」


「音ゲーはどう? 音感鍛えるトレーニングよ」


「よっしゃ授業っぽいぜ」


「先生、お気を確かに」


 プライベートならサファイアと波長が合うようだ。

 ゲーム好きだし、奔放に生きるというのは楽しい。節度は大切だけどな。


「どうせ得意なんでしょ?」


「当然だ。お前らできるのか?」


「曲に合わせて踊るだけでしょう? 私ならばこなせます」


「こういうのは初体験ですわ」


 俺とサファイアの指導により、音ゲーで反射神経と音感を磨く。

 ローズもカレンも運動できるんで、あとは音感の問題だが。


「ふふっ、こういったものも楽しいですわね」


「余裕ですね。服さえ脱いでしまえばこんなものです」


「ただのストリップだろうが。いいから服を着ろ」


 まあ脱ぐわな。絶対脱ぐと思っていたよ。

 ちゃっちゃと魔法で私服に戻す。


「はい、交代ですわ。ちょっと冷たいものでもいれてきますわね」


「すまないな」


 運動すると熱くなる。それは女神も同じこと。

 冷たいものをすぐ用意してくれるカレンは気が利くいい子だな。


「ふっふーん、余裕よ! ゲームでわたしに不可能はないわ!」


「おおー見事なもんだな」


「服が気に入りませんが……まあこの程度ならよいでしょう」


 サファイアもローズも見た目は女神だ。楽しそうに踊る二人は絵になっている。

 なっているんだけどなあ……どうしたもんだろ。


「駄女神じゃなきゃかわいいのにな」


「なあっ!? ちょっと急になによ!?」


「……………………そうですか…………かわいい……ですか」


 猛スピードでこっち向かれた。

 新鮮な反応だな。女神だし、言われ慣れていると思ったが。


「おう、そうして楽しそうに踊っていると、女神っぽくて綺麗だぞ」


 別に隠すことでもないし、感想くらい言ってもいいだろう。

 二人とも無駄に顔が赤いな。踊りはそんなに疲れるか。


「ううぅぅ……なんなのよもう! 今日なんか変よ!」


「これは……どう受け止めるべきなのでしょうか。説明を要求します」


 ローズですら顔が赤い。俯き加減から、落ち込んでいるわけではないだろう。


「意味がわからん」


「意味がわからんのはこっちよ!」


「完全にこちらの台詞ですよ先生」


 ここまで慌てる意味がわからん。

 女神の心理なんて完璧に把握しているわけじゃないしなあ。


「あら、どうしましたの?」


 カレンが全員分の麦茶を持って帰還。

 みんなでお礼を言って飲み始める。


「いやなんか妙な感じになった。謎だ」


「なぜ自覚がないのですか」


「教師としてまずい感じか?」


 理由は分からないが、俺は教師だ。不適切な発言なら直す。

 考えている間に、二人がカレンに事情を説明している。


「先生は先生ですわ。ただそれだけですの」


「えぇ……ふんわりとした答え返ってきたー」


「誰にでも可愛いとか言っていると、口説きまわる変態教師の烙印が押されますよ」


「うげ、そりゃきついな」


 なるほど、淫行教師と同レベルか。そりゃまずいわ。


「だからわたしたち以外にそういうこと言うんじゃないわよ!」


「お前らはいいんかい」


「他人からの評価、というものに興味がありますので」


「そうですわ! わたくしも含めて三人に言うならば、事情を知っているのですからセーフですわ!」


 なにやら熱く語られましたよ。

 正直そっち方面には自信がないが、これも教師の務めか。


「わかったよ。とりあえず、さっきのお前らはかわいかった。それでいいだろ」


「わたくしはどうですの!」


「カレンもだよ」


「ざっくりで済ませましたわね」


「真意が伝わっていないのは、幸か不幸か。悩みますね」


「ええいとりあえずゲームするわよ! あんたも混ざりなさい。お菓子食べてお茶飲んでるんじゃないの!」


「へいへい、わかりましたよーっと」


 よくわからんが、これも授業だ。きっちりパーフェクト取ってやろうじゃないか。

 俺の模範演技は好評で、次の授業まで四人で遊んでいたのだった。


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