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異世界を数百個救った勇者の俺は駄女神学園で先生をしています  作者: 白銀天城
第一部

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駄女神のお部屋ローズ編

 せっかくの休日。なぜかローズに呼び出され、部屋に行ったことが運の尽き。

 全体的に白と青基調で、スッキリとした部屋。所々にマジックアイテムがあったり、別室に研究設備がある以外は、普通の女の子の部屋だ。


「さあ、服を着ていても力が出せるギリギリを調べますよ」


 今はその部屋に、いくつかの衣装がある。

 俺は運悪く、こいつの実験に付き合うこととなった。


「運のステータスだけ無限にしておくべきだったか……」


 衣装を前にうなだれるしかなかい。勇者とは時に無力である。

 まあ教師やるって言ったし、せっかく成長しようとしているんだ、ちょっとくらいは付き合ってやるかね。


「まず全裸から始めます」


「はいはい。で、お次はなんだい?」


「リアクションが薄いですね」


「ここはお前の部屋だからな。裸でも止める理由が薄い」


 自室でくらい脱がせてやろう。俺がローズの部屋にいるだけだ。

 そのへんは譲歩しよう。


「まず巫女服」


「まずで巫女服はおかしくね?」


「意外と似合っていると自負していますが?」


「うんまあ、意外だけど似合ってるよ」


 髪が青いくせに、白と赤の巫女服が似合っている。

 もとは美少女路線なためか、大抵のものは似合うだろう。

 本当に性格で損しているなこいつ。


「これが一番布面積が多く、枚数も多かったもので」


「多いやつから調べていくわけか」


「祈りでも捧げましょうか。神聖な力が増している気がしなくもないですし。式神も使えるかもしれません」


「そりゃ陰陽師で……ちょっとそのままでいろ」


 魔力の質が完全に変わった。以前も同じようなことがあったな。

 ちょっと細かく調べてみるか。


「なんです? 巫女服に欲情するタイプですか?」


「違うわ。ステータス見てんだよ。お前、マジで神聖魔法得意になってんな」


 他人のステータスを見るくらいはできる。

 ゲーム風の異世界と、VRMMOの世界とかで覚えた。

 細かく見るのはだるいので、ざっと目を通す。

 神聖魔法や白魔法なんかの能力が爆上がりしている。


「魔法は全種類使えますよ?」


「その中でも一番上になってんぞ」


「おかしいですね。そのようなことがあろうはずがございません」


「別の服を着てみてくれ」


「そうですね。厚着するストレスを軽減するためにも、薄着になりましょう」


 言っている意味はよくわからんが、まあやる気出してんならそれでいい。


「ではマイクロビキニです。清楚さを出すため、色は白」


「清楚と真逆の存在だろ。で、どうだ?」


「格闘能力は上がっていますが、普通ですね。可もなく不可もなく。先生の反応もそんなものですね」


「単純に脱ぐの見飽きてきた」


「なるほど、レアリティの損失ですか」


「どうでもいいから、次の服だ」


 服を変えると、その服に応じた特技が加わるようだ。

 才能の付与といえるかもしれない。


「お前も妙な力があるな」


「服など邪魔なものでしかありませんでしたので、まさかこんな特技があったとは」


「これからは服も着てみるんだな。素材は良いんだから」


「ええ、良質の素材で作られているのか、着ても不快感は少ないです」


「いやお前ももとは綺麗なんだから、脱ぎグセだけどうにかしろよ」


「クセというより性癖ですね」


「なおダメだろ」


 これ矯正できるのか? 俺の教師生活は、予想を遥かに超えてハードだ。


「次はチアガールです。これは応援や加護でも強くなるのですか?」


「なってるなってる。普通の人間に加護与えると、爆発して死ぬなこりゃ」


「では次、普通のワンピース」


「あんまり上がってないな」


「特別強くなったとも感じません」


 どうやら職業が曖昧なものは効果が薄いらしい。

 魔力の質や量が上がっても、結局それだけ。

 巫女服のように特別な服が必要らしいな。


「ここまでで気付いたことは?」


「服さえ着ていれば、下着は不要だと思います」


「必要だから却下だ」


 しばしファッションショーが続き。ちょっと疲れが見え始めた。


「ここらで一休みしろ。疲れてんだろ?」


「そういえば、お客にお茶も出していませんね」


「いやいいよ。おかまいなく」


「そうもいきません。お茶は何色がいいですか?」


「色!? 色で決めんの!?」


「青色と銀色がありますが」


「緑茶とかじゃねえんだ!?」


 やばい。何出てくるかわかったもんじゃないぞ。


「流石に冗談です。紅茶でいいですね」


「普通にあるんかい」


 出されたアイスティーを一口。普通だ。そして美味い。

 俺に毒とか通用しないが、それでも警戒していた。

 ちょっと反省しよう。いい感じに体が冷えて落ち着いた。


「ん、美味いな」


「ええ、そこそこいいものですよ。お望みなら、もっと危険なお茶もありますが」


「いらんいらん。毒や薬は味を落とす」


「飲んだことがあるようですね。やはり無効化するのですか?」


「ああ、全世界の毒というか、状態異常に耐性がある」


 これは必須だ。どんな世界も攻略の近道は、状態異常の無効化である。


「先生は……人なのですか?」


「当たり前だろ」


「人類は、いくら神の加護という圧倒的チートがあろうとも、それに耐えることができません。女神ですら身の丈に合わぬ加護は危険です」


「運が良かったんじゃね?」


「ふざけているのですか? ある世界では金メダルという、世界一の称号を持つもののクローンを作り、数百倍に強化して邪神が加護を与えたところ、耐えきれずに身体は爆散し、暴走した怨念は、勇者と女神に浄化されました」


「知ってる。意図的に人体改造やってた世界があるんだろ。そこも俺が潰した」


 チャンピオンのクローンを兵士として使おうと、実験とかしている世界があった。

 無論、そんな外道連中は女神の目に止まり、俺が名指しで呼ばれて潰した。


「先生は異常です。そこまで強化しても、本来女神の足元にも及びません」


「駄女神だからだろ?」


「駄女神でも神は神。サファイアの攻撃を受けて無事でいられるはずがありません。ヴァンパさんもです。あの吸血鬼、強化しましたね?」


「バレたか。ステータスを三百倍くらいに上げてやったよ」


 なぜバレた。もっと丁寧に細工すべきだったか。

 互角の相手に勝つことで、自信つけてやりたかったんだけどなあ。


「先生が選ばれた理由は、勇者だからもあるでしょうが、女神と戦っても死なないことが大きいのでしょう。私は先生より強い人を知りません」


「強いやつなんていっぱいいるさ。少なくとも、俺と同じ異世界を救う男がいるという伝説がある」


「伝説……? 女神界にも伝わる男の伝説ですか?」


「多分それだ」


 異世界を救い続けているうちに、女神に聞かされた伝説の勇者の話。

 俺のような男がいると知って、なんとなく嬉しかったのを覚えている。


「あれは異世界の犯罪抑止と、女神に発破をかけるためのおとぎ話ですよ?」


「……マジで? 週八回。六時間で異世界を救ってたって話は?」


「バイトのシフトですか。週八回って……一日二個の異世界を救っていますよね」


「マジでか……? 会ってみたかったのに……結構憧れてた時期とかあったんだぞ」


 地味にショックである。まだ勇者という言葉に憧れがあった時期。

 勇者が異世界処理業者みたいなもんだと思っていない頃。

 俺にとって目標だったのに。真似して週四回異世界を救って、過労になりかけたのに。


「夢が……サンタはいないと五歳児に突きつけるような、むごい真似を……」


「意外とピュアですね」


「やかましいわ。服の続きやるぞ。多分だが、魔術的な方がおしゃれより魔力が上がる。逆に可愛さのある服も、何かしらの効果はありそうだ」


「スリングショットやマイクロビキニも、興奮度と身体能力が上がりますね。ですが、もう服がありません。もともと少ないもので」


 それでも十着くらいはあったな。女ってもっと持っているんだろうか。

 恋人のいた事のない俺には知る由もない。


「買いに行くしかないってか」


「ええ、いい機会です。先生にも選んでもらいましょう」


「女物の知識とかないぞ」


「構いませんよ。先生によれば、私は素材がいいらしいですからね。より引き立てていただきます」


「はいはい。立派な女神にするって言ったしな。協力してやるから、街では脱ぐなよ?」


「仕方がありませんね。ギリギリのラインを模索していきましょう」


「普通に服を着ろ」


 いつになるかわからんが、まあ服を見に行くくらいならトラブルもないだろう。

 ないといいなあマジで。本当に。

 考えても無駄なことは忘れ、とりあえず休日をのんびり過ごすことにした。


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