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異世界を数百個救った勇者の俺は駄女神学園で先生をしています  作者: 白銀天城
最終章 勇者追放指令

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特訓と閻魔様 リリカ視点

 また先生に鍛えてもらうことになって、別世界の人とも一緒に修行していたのですが。


「あちゃー……また死んじゃったか」


 雲の上に赤い絨毯が敷かれ、ずらりと並ぶ霊魂の皆様。

 その列から外れ、遠くにある大きな建物を見る。

 間違いない。あそこに閻魔様がいるのも知ってます。


「ううむ、やっぱり無茶だったかなあ」


 全員で何度もお願いして、死ぬほどきつい特訓を死ぬレベルの特訓にしてもらった。

 勇者が善人を殺す訳にはいかないって、何度も何度も拒否されました。

 最終的に閻魔様と話をつけてくると言い、それからはこうして特訓でよく死にます。


「お、いたねリリカ」


「花梨さん!」


 花梨さんもこっちに来ていたようです。

 こんな事ができるのも、先生が前に行った世界の閻魔様が担当してたかららしいです。

 よく意味がわからないのでスルーしよう。

 先生が化物で規格外なのは身に沁みたからね。


「お、また来たのかい?」


「あーどうも。また死んだみたいです」


 閻魔様と一緒に働いている鬼の人が数人こっちに来ます。

 スーツ着て通信機を付けているけど鬼らしいです。角あるし。


「気をつけてなあ。お嬢ちゃんたちまだ若いんだから」


「無理してばっかじゃ身も心も壊れちまうぜい」


「いえいえ、まだまだですよ。みなさんも体には気をつけてくださいね」


 意外とフレンドリーです。

 初めてここに訪れたわたしたちに、ゆっくり説明してくれた。

 いい人たちなのかなあ。


「嬉しい事言ってくれるねえ。寿命で死んだら天国行けるように祈ってあげるよ」


「ありがとうございます」


「この歳で死後の心配することになるとはね。人生ってのはわからにもんだよ」


「ほらまたサボってる。持ち場に戻りなさい」


 閻魔様だ。どうやら休憩時間みたい。

 鬼さんが露骨に動揺しています。


「げ、閻魔様。それじゃ、特訓頑張ってな!」


「応援してるぜー!」


 そそくさと去っていく鬼さんは、なんだかちょっとかわいい気がします。


「まったくもう……」


「あはは、なんかすみません」


「いいですよ。世界を救うためには必要なことでしょうし、勇者が決めたことです」


 男性とも女性ともとれる中性的な人で、とても綺麗な人です。

 怒ると怖いらしいと鬼さんに聞きました。


「あー……その、聞きそびれましたが、勇者とどういうご関係で? 昔世話になったって言ってましたよ?」


「ちょっと地獄と天国での反乱制圧に協力してもらったのです」


「できるんですね」


「ええ、半日で終わらせてくれました」


 やっぱり人間じゃないんじゃないかなあの人。


「そりゃそんな相手と特訓してたら死ぬわなあ……」


「正確には死んでいませんよ」


「え?」


「死ぬ直前に魂と肉体を傷つけすぎないよう、ここに飛ばしているのです。そうすることで魂を癒やし、特訓再開までを早めます。ここが休憩場になっているのですよ」


 それが先生なりの葛藤と折衷案だという。

 納得した。ものすっごい渋ってたもんね先生。


「気をつけてください。本番ではここに来られるとは思えません」


「どういうことです?」


「女神界と女神の力は、閻魔の権限と能力を遥かに凌ぎます。こちらの裁量で動かせるかどうかすら……」


「そんなに強いんだ……」


「リーゼさんやヘスティアさんも強かったし。神様って凄いんだなあ」


 改めてその強さを認識する。

 同時に先生ってどのくらい強いのだろうと思った。


「でも女神を鍛えられるくらい勇者は強いんだろ? それともトップはあの勇者より強いんですか?」


「あの勇者は最強です。力の片鱗すら神々を軽く凌駕し、永遠に追いつくことを許さないでしょう」


「私にゃ想像できないねえ」


「実際に見ないとわかりませんよあれは」


 あの絶対的な強さは、その目で見なければわからない。

 本人に強そうな雰囲気とか無いからなあ。


「リリカは見たことあるんだよね」


「はい。メテオとの決戦で助けてくれました」


「その礼も言っとかないとねえ。ううむ不思議だよ。どこからあの強さが出るんだか。もっとムキムキのおっさんとか、体が鬼みたいに赤や青とかさ、強そうなオーラがあれば納得できるんだけど」


「あの人は天敵がいないのです。全存在の頂点であり、弱点はない。なので強く見せる必要がありません。強く見せると敵が寄って来ないからつまらないとも言っていました」


 先生らしいというか……自由だなあ本当に。


「あ、いたいた。あやね、こっちに二人いるぜ!」


 龍一さんだ。あやねちゃんもこっちに走ってくる。


「遅かったね。死ぬまでが長くなってるじゃないか」


「ああ、ベストタイムだぜ。あやねのサポートが効いたな」


「リリカちゃん、どこか痛いところない?」


「へーきへーき。そっちも怪我とか無い?」


「怪我っつうか死んでるけどな」


「そりゃそうだ」


 先生の世界に来る前に共闘していたからか、かなり仲良くなりました。


「そっちの勇者みたいにアーマーで強化できりゃ、生存率も上がりそうなんだがなあ……」


「フォトンがうまく使えないんじゃあしょうがないさ」


 どうやら世界の融合が中途半端なせいか、フォトンアーマーは使えないみたい。

 けど特忍も魔女も強い。

 独特な戦法だし、分身の術や変わり身の術は生で見れて嬉しかった。


「世界を救うんだ、手段は増やせりゃいいんだがね」


「それでも、みんなで頑張ればなんとかなるって信じてます」


「世界の融合が進めば、閻魔もどうなるかわかりません。仕事が増えるのか、共同になるのか、どうか世界をお願いしますね」


 閻魔様も他人事ではないらしい。

 前代未聞過ぎて対処もできない事態なんだとか。


「そのためにも特訓だな」


「先生!」


 先生がフランさんを連れて迎えに来てくれた。


「閻魔も暇ができたら特訓してみないか?」


「結構です。仕事が山ほどありますし、あなたの特訓に付き合える実力はありません」


「そうか……こいつらと戦ってくれるといい経験になりそうだが」


「仕事がありますよ。本来ここを貸し出していることも異例なんですからね」


「はーい」


 残念そうな顔だ。雰囲気からしてへこんでいる。

 たまーに子供っぽいんだよね先生。


『師匠、聞こえるか?』


「んー? ジン? どうした?」


 わたしたちの周囲に声が聞こえる。

 昨日も聞いた。確か魔王のジンさんだ。

 別世界から来た勇者の子がお世話になった魔王さんらしい。


『戦闘中に生徒だった女神を確保した』


「戦闘?」


『世界の融合は止めるが、サファイアの確保は諦めないということだろう。襲ってきた武装女神を練習台に使っていたら、女神が加勢してきた。今代わる』


『はーい先生。お久しぶり。声だけで誰かわかるかな?』


 どこか楽しそうな大人の女性の声。

 声の端々が弾んでいる。知り合いの女神多いなあ先生。


「あー……あれだ。そう、ヘスティア」


『せいかーい。よくわかったね。最近脳トレでも始めたかい?』


「懐かしい顔によく会うおかげかな」


『他にもリーゼ、クラリス、美由希という女神がいる。ええい鬱陶しいわ! 黙っていろ駄女神ども!!』


 向こう側で自分にも話をさせろと揉めているっぽい。

 なんか女神様へのイメージが崩れていきます。


「うーむ……じゃあどうすっかな……よし、お前らの加護全部使っちまうか」


『ほう、面白そうだな。いよいよ最終調整か』


「ああ、こっちの人間チームも成長している。だが女神界と対等に渡り合うには」


『女神の加護ね!』


 また女性の声が変わった。

 とても元気で自信に満ち溢れた声だ。


『女王神はどうする? まだ確保していないぞ?』


「サファイアを渡さなきゃいい。いいかそっちにいる奴ら、女王神の問題はまだある。けれど勝つことに集中しろ。勝ったらご褒美にそのへん全部どうとでもしてやる」


『わかった。任せるわね』


 問題が何かも聞かず、即答で了承。

 それだけ先生を信頼しているのでしょう。

 それだけ世界を救い、女神の心を救ったのでしょう。


「じゃあジン。こっちの座標わかるな? とりあえず連れてこい。加護の調整したら乗り込むぜ」


『クックック、いいだろう。女神界の茶番など終わらせて、俺様のリベンジをさせてもらう! すぐに行くぞ!!』


 そして声は聞こえなくなりました。


「よっしゃ、全員あの世界に帰るぞ」


「はい!!」


「ご武運を。鬼たちと一緒に応援していますよ」


「わっかりました! がんばります!!」


 応援してくれている人たちのため。守りたい世界のため。

 絶対に負けられない。負けたくない。

 改めて覚悟と決意を固め、先生のいた世界へ戻りました。


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