5.仲間
『狩りの時間じゃ。神殿に集合するように』
グラスの話を聞いてると、メルクの声が聞こえてきた。『狩り』とは魔石を取り行くやつか。
「あぁ、もうそんな時間か。リスト行くぞ」
「あれ? 俺も行くんですか」
「あったりまえよ。シンボル貰った奴はすでに一人前だからな」
「そうですか……。狩りって具体的にはどんなことをするのですか」
「まあ、歩きながら話そうぜ」
グラス家をでて、住宅街を歩く。
グラスと今まで話してわかった人物像……スライム像は正義感の強い兄貴、恋愛ゲームの恋を助けてくれる親友のような感じだ。
「狩りっつうのはな。俺達でも倒せるゴブリンやナーガの子供を襲って、魔石を取る仕事だな」
ゴブリンが、スライムの次に弱いっていうのは世界共通らしい。
ナーガは蛇の魔物か?
スマホゲームの『あれ』しか思いつかないがどうなのだろうか。
「――子供を襲う……」
「おいおい、そんな目で見るなって。しょうがないだろ、スライムなんだから」
ですよねー。少しでも生存率を上げることは弱者の定め、言い換えれば努力を怠るのは馬鹿のすることだろう。
俺も前世ではかなり努力したほうだしな……。
まあ、意味なかったんだけどな……ははは。
――笑えねぇ。
「――――よし、皆集まったの。これから、狩りの準備を始めるぞ」
集会と同様にメルクの言葉で始まる。場には自分含めて10体のスライム、分かっているのはメルク、グラス、俺、以上。
結構人見知りするタイプだから、きついなー。せめて名前だけでも知りたいなぁ。
「今日はリストが仲間に加わった記念日じゃ。いつも通り、今日の収穫は全部リストに渡すように。パーティもいつも通りじゃ」
話が終わると一体、二体とスライムが居なくなっていく。
俺のパーティーはどこだろうか。特になんの説明も無かったが……。
「リスト! 何やってる教育係の俺と違うパーティーのわけがないだろー」
神殿の出口からお呼びの声がかかる。どうやらグラスとは同じパーティーらしい。
「初耳ですよ?」
「そうか? 悪いな言ってなかったか」
「それ……グラスの悪い癖…………直すべき」
黒いスライムがグラスを指摘する。彼も俺のパーティーメンバーだろう。
黒い体に赤いマフラーがとても印象的であるが、どうやら口数が多いタイプではないらしい。
「あぁ悪い悪い。そ・れ・よ・り・も! 自己紹介しようぜ。リストは俺以外誰も知らないからな!」
「あ、俺からもよろしくお願いします」
「俺は……ブラス。シンボル………マフラー……以上」
俺は体を動かしてお辞儀らしきものをする。それを見て、数秒間固まっていたが、意味が理解できたらしく、お辞儀を返してくれた。
思っていた以上に口数は少ないが、悪いやつでは無さそうだ。
「おいおい、もっとないよかよ。好きな食べ物とか好きなメスとか!」
「…………見ての通り……グラスは馬鹿……」
「なっ!! 失礼なやつだな。まあ、いいだろう。何がいいのか自分でもさっぱりだが。実はもう1体、メスのメンバーが居るんだが、今日は留守番につきいないからな」
うん。人間の俺からするとスライムにメスとか、オスとかの概念があることにまず驚いたが、今日は1体少ないってことだな。
「よろしくお願いします。グラス、ブラスさん!」
「…………敬語いらない」
「だよな! リスト、敬語はいらん」
敬語使わないのはどうなのだろうか、とも思ったが相手がいらないと言っているのだから、あえてつける必要もない。
「う……うーん。じゃあ、よろしく。リストとブラス」
「おう!」
「……よろしく」
敬語というのはどこの世界でも便利なものだが、ときに親友となる弊害になることもある。そんな言葉をどこかの本で読んだのを思い出す。
今日、本格的なスライムライフが始まる、そう、俺は確信した。
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