1.初めての転生
「パパー、スライムだよー!」
「よーし、パパに任せとけっ!」
転生してすぐに浴びせられたのはこの言葉だった。
真っ白な世界から転生まで十秒程度時間があり、その間にスキルの事を知った……のだが。
まあ、スキルとか言われた時点で地球に転生とかは諦めてたけどもね……。でもさ。
嘘だよな。
スライムに転生したとか嘘だよな。
確かにあらゆる生物、種族とは説明にあったけども。
前世であんなにひどい目にあったのにこの仕打ち。
流石にそれは酷くないですか。
この世界のスライムがどれだけ強いのか分からないが、今にも俺を殺してきそうな幼女とその親を見ると察することが出来る。
――スライムは弱い、と。
考えろ、俺。
弱い生物は|圧倒的強者〈幼女と親〉に襲われたらどうする。答えはひとつだよな。
逃げる。
その一手しかない。俺はゼリー状の足――のようなもの――をフル回転させ、草原を走る抜ける。
「おぉ? 背中を見せるとは剣士の恥ぃぃぃ」
速すぎだろぉぉぉ。
父親と思われる男に一瞬で回り込まれてしまった。しかし、それも当然、俺は死ぬ気で走っていたのだが、さっきいた場所から1メートルも移動できていないからだ。
――結論、スライムは弱い。
無慈悲にも、父親の剣が振りかざされる。
「悪は成敗なりぃぃぃ!」
「パパ、すごーい」
幼女の満面の笑みを最後に、俺は異世界転生から時間にして1分。最初の人生を終えた。
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再び真っ暗になった視界の中で、聞き覚えのない若い女の声が頭に響き出す。
『スキルを発動します。今回の生存時間56秒。ステータスを一部引き継ぎます』
スライムから引き継ぐ能力とかあるのだろうか。ないよりはマシと言う奴か。
『転生準備を開始します』
まあいい、何事も経験だ。
せっかくやり直せるのだから、一度くらいスライムになっても損はなかっただろう。スライムなんか二度となりたくないけどな。
『準備が完了致しました。転生します』
体に感覚が戻り始め、転生に成功したことを実感する。
今のところチートなのか、ゴミなのか分からないスキルだが、前世よりはマシな生活を遅れるだろう。
ゆっくりと目を開けた俺が見た光景は、先ほど見た景色と酷似している。
ペチャ。ペチャ。
動くたびに鳴る水の音。ヌメヌメした体の感触。かなり低い視線。
まさか……。
またスライムかよ!
――結論、このスキルゴミだ。
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