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いきなり画像が切り替わって着信が来ていた。
スマホの電話を見ると、着信主『ゆいちゃん』と書かれていた。分かりやすいなぁ。
(ごめん、晴ねえ)と心の中で思いながら僕はスマホを耳に当てた。
「もしもし」
「あっ、はる……誉」
「なんだ結衣か」
弾んだ結衣の声がスマホから聞こえてきた。
「うん、あの……誉は宿題している?」
「ああ、宿題っていうかストーリーモードを進めればいいんだろ」
「そうそう、いい心がけだわ」
「なんだよ、やけに機嫌よさそうだな」
「えと……誉と電話で話すのが久しぶりだなって」
「そうか?生徒会でいつも会うだろ」
「……そうだけど……ゴメン」
結衣の声が途端に沈んだ気がした。
「結衣?」
「誉を巻き込んでごめんね。『真ドラプラ』はあたしたちのゲーム。
誉は関係がないもの逃げてもいいの。ログインさえしなければ……」
「いや僕にはあるよ、関係も理由も」
僕は正直に決意を固めていた。
「晴海が殺された、ドラゴンという天災に。
天災だから諦めたところがあった。
だけど、もし僕にドラゴンと戦う権利が与えられるのならば、力が与えられたのならば。
戦いたい、晴海の仇を打ちたい」
電話越しに僕は想いを語った。結衣は黙って聞いてくれた。
「誉……うん分かった。じゃああたしたちと戦いましょ。
それでね、宿題の期日だけど……」
「期限あるんだ、まあ終わったけど」
「終わったって随分早いじゃない、GPS出てきた?」
「えと……GPS?なんだそれ」
「ほら、ストーリーモードクリアしたんでしょ。GPSが出たんじゃないの?」
「えっ、なんだよ?わからないけど」
「あれ……おかしいわね。まあいいか」
電話先で結衣が勝手に納得したようだ。
「ねえ、誉。土曜日空けといて!生徒会もないし、用事もないでしょ」
「えっ、いいけど……土曜日に何かするの?」
「誉に会わせたい人がいるから、懐かしい人」
「僕に会わせたい人、まさか……」
僕の脳裏で、ある二人の人物が浮かび上がった。
結衣と僕の共通の知り合いは限られていた。
だけどわざわざ結衣が会わせたい人という人間は、すぐにわかった。
それは、嬉しさと同時に不安もあった。状況が状況だから当然でもあるが。
「ええ……でもそれって、まさか……」
「『たまだん』メンバーで分かるわよね。彼らも『真ドラプラ』のプレーヤーよ」
その言葉を聞いて、僕はやはり複雑だった。
「そっか……なあ結衣」
「なに?」
「結衣、このゲームってプレーヤー何人いるんだ?」
「五人よ」きっぱり言い放った結衣。
「ご、五人……まさか」
「そう、真ドラプラは五人だけ。あたしたち『たまだん』メンバーだけよ」
「そんな……五人だけでドラゴンに勝てるのか?」
「今まで勝ってきたんだし大丈夫よ。
たまに強いドラゴンが出て来るけれど、あたしたちには奥の手もあるから。
薬とか、強力な武器とかも手に入るからね。
そういえば誉のところで、ストーリーモードで何か戦利品拾った?」
結衣の質問に、僕はスマホの画面を別ウィンドウで開いた。
戦利品……あった。
「『長剣シュツェルビッツ+3』なんか舌をかみそうな名前の剣、拾った」
「シュツェルビッツ?いいじゃない、めちゃくちゃ強いわよ。
ねえ、あたしにそれ譲って。ハルヒメはどうせ装備できないでしょ!」
「譲るってどうやるの?」
「あっ……後で教えるわね、うふふっ」
「なんか楽しそうだな」
「楽しくないわ。本当はあたしだって純粋にゲームをしたいだけだもの。
でもドラゴンに唯一対抗できる、人類最後の希望だから」
結衣の言葉に僕は難しい顔を見せていた。
「まあ、とりあえず土曜日に会いましょ。そこでいろいろ説明してあげるわ」
「ああ……そうだな」
それは僕と結衣の間で共有された記憶。
それを思い起こしただけで、僕は結衣と繋がっている気がした。




