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僕たちの戦いは続いていた。
それは初めて試みる戦い。ヤトノカミである彼を殺さないための戦い。
二人に会って、愛子はある指示を棗に出した。
短い時間で、棗は同意をして愛子に従う。
作戦通り、ナツナイトは戦線から離脱していた。
シェルターにいた愛子と一緒に冬規のいたビルへと向かっていく。
竜器を手に入れてヤトノカミを説得する、二つの役目が棗に課せられていた。
現在もゲーム内でK・シューターの『蔦の術』が効果を発揮していた。
ヴァルキリアは、ダメージがあるので木刀で殴るのもやめていた。
必殺技ゲージもマックスになったし、何よりヤトノカミの体力がかなり減っていたから。
「ヤトノカミはやっぱりボスボス感がないわ。やわらかすぎる」
「やわらかいって」
「木刀で殴っただけでも体力半分まで減ったのよ」
ヴァルキリアはさも不満そうだ。
当然ダメージを喰らわないので、ハルヒメとしては基本的にやることがない。
スマホを見ながら僕はシェルターで、さっきヤトノカミに切られた右腕を包帯で止血していた。
そんな時、K・シューターが一言。
「バインドが解けた!」
ヤトノカミの周りに絡みついていたつたが消えた。
つたが消えると、ヤトノカミは離れて逃げ出そうとしていた。
「逃がさないわよ」
「いいや、逃がしていい」
僕はヴァルキリアを制した。リアルで不機嫌そうな結衣の顔が隣で見えた。
同じシェルターにいる僕と結衣だから当然か。
「ねえ、弘明はどこにいるの?」
「俺か?俺は豊洲駅。電車が発車しない」
「まだ秋葉原に来ていないの?」
「ドラゴン警報中だからな」
秋葉原はそのヤトノカミが現れた。
ドラゴン警報の秋葉原は、被害こそ出ていないものの交通機関は動かないのは仕方ない。
そのヤトノカミはまもなくして、上の方に逃げて消えた。
そしてドラゴン警報が解除された。サイレンが無くなって静かになった。
「あとはナツの方だ」
「ナツなら大丈夫よ、ナツは随分強くなったと思うから」
ヴァルキリアが棗のことを高く評価していた。
「強くなった?」
「うん、ナツは成長しているの。きっとドラプラのおかげね」
「どういう……」
「当然だ、守ろうとするものができれば人は強くなれる」
K・シューターの言葉に、僕は思い当たる節があった。
今の僕にとってそれは晴海だった。
晴海の彼氏になった僕は、積極的になれた。僕は強くなれたんだ。
でもその晴海は、この世界にもういない。ドラゴンに理不尽に奪われた。
ならば僕は何のために戦っているのだろうか。
などと自分のことを考えていると、僕に一通のメールが届いた。
差出人は……愛子。いやエキドナだった。
「エキドナからだ、チャットルームに行こう。ルームのパスワードは……」
僕はそう言いながら二人にメールの内容を話した。




