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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
十話:つながろうとするRPG
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僕と棗は走って逃げていた。

ヤトノカミは足だけは圧倒的に早い。ゲームでもリアルでもそれを僕は知っていた。

夕暮れ時の秋葉原をひたすらに走った。呼吸が苦しいが、捕まれば殺される。

秋葉原ではすでにドラゴン警報が鳴って、賑やかな町が一変してサイレンが鳴り響く。


メイド喫茶の入ったビルを駆け降りたころには、すでにヤトノカミが追いかけていた。

ドラゴンは人間より足がはるかに速い。

これが結衣の言う『ボスボス』感なのだろうか。恐怖を背中に感じていた。


秋葉原の街灯スピーカーから何度も聞こえる『ドラゴン警報』。

それまでにぎわっていた人は、避難……しているかと思えればそうでもない。

人は相変わらずショッピングに興じていた、なかなかこの町の住人は図太いな。

だけど、僕の背後から異様な熱量を感じていた。

そこにいたのがドラゴンで僕を間違いなくねらっていた。


「どいてください!」

棗と一緒に、秋葉原の細い路地を抜けて大通りに来ていた。

息を切らした棗は、くたびれた顔を見せていた。


「最悪……戦えばヤトノカミを止める事など……」

「バトルモードは戦い始めれは、ヤトノカミを止められる。

でも、あれはダメだ。バトルモードを始めたらどちらかが死ぬまで出ることができない。

それじゃあ何の意味もないんだ!」

「でもこのままだと……」

「逃げてドラゴンモードで、ヤトノカミと向き合う。そのためにもまずはシェルターを探す」

走りながら僕たちは秋葉原の大通りに来ていた。


「このあたりのシェルターは?」

「えと……私が知っているのは大型ディスカウントショップ『ド○・ホーテ』ね」

「分かったそこまで……」

だけど、嫌な声が背後から聞こえた。それはまるで獣のような鳴き声。


「ニガ……サナイ」

あっという間に、目の前に現れた透明なドラゴンヤトノカミ。

ヤトノカミの動きに僕は恐怖を感じた。


透明だけど実態を感じるヤトノカミは、それでも威圧感を放っていた。

ゲームじゃない、これはリアルだ。

牙一つで僕は食い殺され、爪一つで僕の心臓はえぐられる。

豊洲神社で見たそれと同じ。あの時と違ってそばにいるのは棗。

せめて棗は守らないといけない。棗はヤトノカミと向き合える唯一の人間だから。


「やめて、冬規!」

だけど棗の悲痛な叫びはもう届かない。

ヤトノカミはゆっくりと僕に向かってきた。

変な動きをしたらきっと素早い動きで僕達をとらえるだろう。

前に出る棗に、僕は彼女の手を握っていた。


「最悪、僕はナツだけを逃がす」

「誉……だめ!私は昔と違って強くなった、あの時の私とは違う」

「僕はもう、誰も失いたくないんだ!あんな悲劇を繰り返したくないんだ!」


晴海の時に僕は思った。失うという恐怖を、辛さを。

リアルは待ってくれない、死んだらそれで終わり。

ゲームと違ってリセットはできないことを、晴海を失ったあの時に知った。


次の瞬間、ヤトノカミは僕の方に襲い掛かった。

棗を巻き込まないために僕は、棗を押して両手をクロスさせて顔を守った。


だけど、ドラゴンの力は人間を軽く凌駕した。

吹き飛ばされた僕は、無様に地面に叩きつけられた。

背中を打って、周りの人間から悲鳴が上がった。

さっきまでの普通のショッピングが一変して、周りの殺到が逃げ出す。


押された棗は、心配そうな顔で僕を見ていた。

右腕をナイフで切られたように血が流れた。幸い顔に傷はない。


「誉さん!」

「シネ……」

すかさずヤトノカミは僕に向かって飛び込んできた。

爪を構えて、僕に飛びかかった。

唇をかみしめ、体を起こしてヤトノカミを見上げた。

だが次の瞬間、ヤトノカミが消えた。いや伸びた手が引き離されて下がっていく。


「えっ?」

透明な実体ある体は、次の瞬間には地上にあった。

僕の足元から数十センチほどで、透明な腕を伸ばしていた。

だけど必死に伸ばすヤトノカミの透明な腕が、僕の足元にすら届かない。

いくら手を伸ばしても透明な手が、僕に触れることはなかった。


「どういうこと?」

「……みんなです」

棗はスマホを見ては笑顔を見せていた。

そして確信できた、僕は助かったんだって。

僕の運命は、僕の最後はここじゃないとそう思えた。



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