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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
十話:つながろうとするRPG
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冬規の格好は、意外とラフなシャツとズボンだけのシンプルなものだった。

だけどリュックを背負って、いくつもの手提げ袋を持っていた。

そんな冬規が、怒るというより寂しそうな顔を見せていた。

何かを感じた棗は、すぐさま立ち上がって冬規を見ていた。


「冬規、違うの!」

「何が違うんだ?」

「冬規を助けたい、このままだと私たち殺し合わないといけない!」

棗の訴えも届かなく、冬規はずっと寂しい顔を見せていた。

彼は自分の部屋に堂々と入って来た。そのまま僕の方に近づいてきた。


「僕は最初会った時から、君が嫌いだったんだ」

冬規は僕に顔を向けることがなく、そのまま左のパソコンを立ちあげていた。


緊張が張り詰める冬規の家、機械音とパソコンのファンの音が響く暗い部屋。

狭いスペースにしゃがみこんで、スマホを見ながらパソコンのそばに座った。

スマホをデスクの上に置いて、掲示板を書きこんでいた。


「嫌い……か」

「ああ、君は嫌いだね。棗にとっては、昔の知り合いかもしれないけれど。

僕は君が嫌いだ……大嫌いだ!」

「ごめんね、冬規。ごめんなさい誉さん」

すかさず手を合わせて棗が僕と冬規に頭を下げた。

だけど顔をこわばらせた冬規は髪をくしゃくしゃに手で掻き乱した。

パソコンに向かうと、目つきが鋭くなっていた。


「許せるわけないだろ、僕には君しかいないんだ!」

「冬規……でもあなたを助けるためなの!このままだと」

「僕はドラゴンでもいい、一人でだって生きていける!

今までそうして生きてきた。僕はリアルに受け入れられない不適合者だ。

でもこの家にはネットがある、僕を受け入れてくれるネットがある。

僕には冷たいリアルはいらない」

冬規は鋭い目つきだけど、感情はこもっていない。

ただ集中しているだけ、言葉尻は少し不機嫌な空気を出していた。


「じゃあ、このメールはなんなのよ?」

棗が右のパソコンにあるメールを指さす。ギアス・メールの入ったスマホだ。

それでも冬規はパソコンに目をくれることはない。見なくても分かっているみたいだ。


「このメールは僕がつながっている証。僕が僕でいられる証」

冬規の言葉の後、小さな棗は抱き寄せていた。

いきなり泣き出しそうな顔で棗が胸に冬規を抱きしめていた。

それを見て、冬規がパソコンを操作するのをやめた。


「私もそう思う、リアルは……この世界はとても生きづらいから」

「やはり棗は僕の汚いリアルで唯一の存在……僕に生きる勇気を与えてくれた」

「でも……このメールは二度と開いてはダメ!」

「それはできない、僕にとって……『ドラゴンプラネット』のプレーヤーこそ敵。

それが『野高谷 誉』を殺すことがボクの使命」


そう言いながら、棗を吹き飛ばした。

放された棗を彼の体がまるでカメレオンみたいに風景に同化していく。

薄暗い部屋で、冬規の体が闇に溶けるかのようだ。

同時に僕と棗のスマホが激しく揺れていた。

それはドラゴン警報だ、目の前のヤトノカミに反応していた。


「冬規……やめて!」

「僕が『野高谷 誉』を殺すことに意味はある。棗も協力してくれないか?」

「できないよ、そんなの!」


そんな棗の腕から、するりと抜けるように冬規は消えた。

それからあっという間に、僕はブレザーの襟元を掴まれた。

掴んだ相手は、顔がはっきり確認できないがトカゲのような実体があった。

体があっという間に僕は上がった。

首が絞めつけられて苦しかった。

苦しさで喉が詰まって顔がゆがんだ僕は、つかんでいる透明な冬規を見下ろしていた。


「ならば僕一人でも君を殺す。僕にはそれができるんだ」

「させない!」

そう言いながら、僕の襟をつかんでいる手を叩いた棗。

半泣きの顔で棗の手に叩かれて、僕は足元数センチ浮き上がった体が落ちた。

落ちた先は、乱雑に置かれた漫画がクッションになってしりもちをついた。

そのまま冬規のスマホを、僕は手から離してしまう。


「棗……何をするんだ?」

「私はナイトだから。ナツナイトだから」

しゃがみこんでいる僕に、両手を広げて守ってくれ棗は冬規を睨んでいた

透明な冬規の顔が暗闇の中、ちょっとだけ見えた。

やはり悲しそうな顔で、ため息をついているようにさえ見えた。


「棗……」

「誉さん、逃げて!」

「そうか……棗もやっぱり僕を裏切るんだ。

リアルは嘘と虚無からしかできていない。最低で最悪の世界だ」

頭を抱えて、冬規が……ヤトノカミが苦しんでいるように見えた。

立ち上がった僕は、危険を感じて棗の手を引く。


「ダメだナツ、一緒に逃げよう!」

そんな棗の手を僕は無意識のうちに引いて暖簾の方に走っていた。

棗は口惜しそうな顔で、頭を抱えるヤトノカミを見ていた。

ヤトノカミになった冬規は、やはり苦しんでいるように見えたのだから。


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