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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
九話:二つの選択を打ち破る意志
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ストーリーモードのラストには、いつもボスがいる。

本物(リアル)のドラゴンに負けない僕たちのキャラが、ボスに負けることは皆無だ。

所詮は数合わせのデータにすぎず、運営側が適当に設定したものだから。

通常、ストーリーモードをクリアするとドラゴンに関係するGPSが表示されていた。

『ドラゴン・ヒューリステクス』とかいう独自のシステムで、いくつかの位置情報でドラゴンを割り出す。


元々神官(プリュースト)のハルヒメは、課金するものが少ない。

前衛でもないから、武器を買う必要もない。

盾でもないから、回復薬を買う必要もない。

だから、ハルヒメはいくつものシステムを課金していた。


それが、僕が今見ている画像。『ドラゴン視アター』だ。

弘明が見せてほしいと言っていたが……『はい』をうっかり押してしまった。


――写った画像の最初に見えたのが暖簾(のれん)だった。

そこに書かれていたのが『ボクの家・ボク以外立ち入り禁止』そう書かれていた。


暖簾をくぐると、乱雑していた四畳半の狭い部屋。窓はなくかなり薄暗い。

ぼんやりとした裸電球の明かりで、かろうじてモノが見えた。

奥にはパソコン、しかも三台。周りにはフィギュア、壁にはアニメのポスター。


視線が前に進み、パソコンの前でしゃがんだ。

近くで見ると、パソコンの起動音が三台分から聞こえてきた。


(これはドラゴンの部屋?)

視界が右隣のパソコンに映った。

右のパソコンはどこかの掲示板だろうか、すぐにキーボードをたたき始めた。

それから一分後、掲示板につけたされた一文。


『>>93マジキモ、業者だろw、酷いクソ、『サメフジ』』と書きこまれていた。

(随分汚い言葉だな。これを書いたやつはかなり性格がひねくれた奴だな)

などと思っていると、正面のパソコンに目を向けた。


正面のパソコンは、美しいSFの画面が写っていた。

木々と巨大なハイテクビル群が乱立する世界。

そこを未来の車みたいなのが走っていた。


でも映画ではない、ゲーム画面だとすぐにわかった。

なぜなら、右下に体力バーのようなものが表示されて『ベイズ』と書かれていたから。

パソコンの画面解像度がいいのか、いろんなことが分かる。

どこかで見たことがあるそのゲームに、金ぴかのド派手なスーツを着ていた背の高い男が中央にいた。

その人物はベイズというキャラクターなのだろう。


その奥から大柄の男が手を振ってやってきた。

「ベイズ、テルノに出た」下の方にあるログが動いた。

格好もスーツを着ていて、大きな銃を担いでいた。


「ああ、マンジビチ、フロア63は倒せたか?」

「ベイズいなきゃ無理だ」

「そいつは残念だ」

何を言っているかわからないが、どうやらゲーム内での会話なのだろう。


「ベイズ、フロア77のボスを一人で倒したんだろ」

「俺はクラスが天才(ジーニアス)だからな。こいつやる」


台詞にすぐさま、キーボードをたたく音がした。

そのまま金ぴかの男は、何かを渡すしぐさを見せた。モノは見えないけれど。

ウィンドウが出てきて、銃のグラフィックが出てきた。

前にいるキャラクターの男は顔文字。どうやら驚いている様子だ。


「『ガンナーC9-FX』だ、お前ならこいつ使えるだろ」

「マジで?あり」

「俺には役立たずのアイテムだ。『IRガン』あるし。

まあ、収穫は『クロスペンダント』だけだ」

「IRガン、やっぱ神性能だろ。成長するし……限定版だよな」

「ああ、β版の廃止アイテム。見た目はダサいけど、こいつ強すぎ……くる」

「ん?」

「マンジ後ろ!」

そう言うと、銃を持った男が数人取り囲み、あっという間に大柄な男を射撃していった。

吹き飛ぶ血しぶきは、ゲームであってもリアルだ。

画像越しに見ている僕も、思わず口を押えてしまった。


「業者サメフジ!」

「ルート30に隠れていたか、廃人様、お供は一人か?」

間もなくして、出てきたのが五人組。銃を持って、頭に青い頭巾とスーツ、お揃いのサメのマークが入っていた。


「こいつの持っているもんには興味ない。おまえのIR武器を奪いに来た」

「へえ、IRスーツに利くのかい」

「IR装備なら、リアルで数万の買い手がつくだろうよ。

唯一無二の絶対装備だからな、よこせよ」

そう言いながら持っていた銃で金ぴか男ベイズに狙撃を繰り返す。

だけどベイズはびくともしない、体力ゲージが全く減らない。


「火器は無駄だ」挑発をするベイズは、SFに不釣り合いで古風な火縄銃を取り出した。

どうやらこれがIRガンらしい、撃ってくる一人を火縄銃で狙撃すると、あっという間に倒れた。

上にある体力バーが一瞬にしてゼロになったのだ。


「ならばこいつは……」

そう言って銃を撃つ人の背後から、ローブを着た女が出てきた。

手には杖と、分かりやすく言えば魔法使いみたいな格好の女。

その女が、霧みたいなものをベイズの周りに発生させた。


「『石化(ストン・フォース)!』」

そう叫んだ女の霧が晴れると、ベイズはあっという間に石像になった。


「なあ、石化してもアイテムは……」

「そのために鑑定士(トレジャー)連れてきたんだからよ。後は……」

次の瞬間女の悲鳴が聞こえ、ローブを着た女が倒れた。

血しぶきを上げて、叫び声が聞こえて倒れた。


「どういう……」

「『なつき』!」

ログが流れると、背の高い男がライトセーバーの二刀流で現れた。

髪が立って目つきの鋭い筋肉質の風貌のなつきは、鋭い目つきで銃を持つ男を睨んでいた。


「俺の友を傷つけさせない」

「『万人殺しのなつき』か、全員でかかれ!ヤツの武器『エクスカリバリオン』も金になる」

あっという間に取り囲んでは、なつきに襲い掛かっていく。

いつの間にか取り囲んでいる数は二十人ほど。


だけどなつきは、次々と攻撃を華麗にかわしていく。

そして、次々と襲ってきた人間を殺していった。

上がる血しぶきは、まさに地獄だった。倒れる人がリアルだ。

それでも数が減らないで、どんどん援軍が来ていた。

なつきの体力ゲージはみるみる減っていた。


「数が多い」

「大丈夫だ。そろそろ起きよう」

キーボードが動いた。ベイズは何かアイテムを使った。

すると十字架のペンダントが画面に出てきて、石になったベイズが元に戻った。


「あっ、ベイズが!」

「くそっ、もう戻ったのか!」

だけどしゃべる間もなく火縄銃の銃声が聞こえた。

ベイズの前には、火縄銃が巨大化していた。

次々と激しく血を流して倒れていく。床も真っ赤に染まっていた。


「こりゃあ痛みを感じずに、全滅してお前たちのアイテムを奪うしかないな。業者サメフジ」

「まずい、ベイズになつきか。分が悪い、撤退!」

サメフジの人間は逃げようとしたが、次々と背中に銃弾が撃ち込まれた。


そして、なつきに背後を切りつけられていた。

それはまさに戦場。いや処刑場と化していった。

あっという間に死体の山があちこちにできて、地面が赤く濡れた。

壮絶な地獄を見て、僕は最後には気持ち悪くなって画像から目を逸らしていた――



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