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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
八話:自分と同じ強さへの憧れ
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ヤトノカミは、ドラゴンプラネットで戦ったときすごく足が速かった。

さすがにインしながら戦う勇気は僕にはない。

ましてや愛子もそばにいた、彼女の安全を先に考えないといけない。

ドラゴンが現れて僕は後悔していた、安易に愛子を連れてきたことを。


(なんとか愛子ちゃんを守らないと)

僕の目的は決まっていた。


パニック状態の市民たちだが、逃げる方向がバラバラだ。

まず僕は露店が倒れた方角から、背を向けて走っていた。

もちろん愛子を連れて走るしかなかった。

戸惑っているのか、いつも通り落ち着いた顔で僕を見ていた。


「どうした?」

「逃げよう!ドラゴンはとても危険だ」

だけど、愛子は興味があるのか逆に背後を見ていた。


「愛子ちゃん、行くよ!」

「野高谷、どこに逃げる?」

「こっち!」

いつの間にか手を強引に引っ張っていた。

愛子は何かを言いたそうだったけど、僕はそれを遮って手を引いて前を向いていた。

まずは、シェルターの場所を知る必要があった。

近くにあった地図は、豊洲神社から商店付近を示していた。

ここからだと……二つあった。


一つは神社、しかしそれは僕達が来た方だ。

だからもう一つの選択肢しかない、それは豊洲駅近くの地下街。

距離にして四百メートル、神社や商工会の道さえ抜ければ地下街までたどり着ける。


(なんで豊洲ショッピングセンターじゃないんだよ!)

文句を心の中で言っていた。がドラゴンは天災、どこで起きても不思議ではない。

「豊洲の地下街まで走るよ!」


僕と愛子ちゃんで歩道を激走していた。

いつの間にか、ほかの人もシェルターを目指して走っていた。

それから間もなくして、大通りに出た歩道に地下街への階段を見つけた。


「もうすぐだよ!」

だけど僕は次の瞬間、背中に強い風を感じた。

竜巻が背中で発生したようで体が浮き上がるのを感じた。

まるで空中遊泳しているかのように体が軽い。そんな僕はうっかり愛子の手を放してしまった。


「愛子ちゃん!」

地面に倒れた僕は、背中で受け身を取って立ち上がっていた。

その僕の目の前には透明な影が見えた。


その形はおぼろげだけどトカゲの形をしていた。

ネットの画像で見たそれは、人ぐらいの大きさだけど爪が生えていて、牙らしきものも見えた。

翼があって、尻尾も生えていた。間違いない。


「ドラゴン『ヤトノカミ』!」

かつて銀波会計……いやアジ・ダハーカと同じぐらいのドラゴンが僕の前に立っていた。

だけど表情をうかがうことはできない。

あくまで熱量、生物を認可することができるぐらいの透明な存在。

それがドラゴン『ヤトノカミ』の正体だ。僕の方をじっとうかがっているように見えた。


「まさか……」

嫌な予感はした、だけどヤトノカミは僕にまっすぐに向かってきた。

右手のようなものを上げて、僕に振りかざしてきた。

それはヤトノカミが紛れもなく僕を狙っていた。


「ノゴヤ……ホマレ……」

それはカタコトの言葉だ。だけど明らかに僕に対して言っていた。

狙ってきたヤトノカミは、僕に向かって右手を下ろしてきた。

間一髪判断よく後ろにのけぞった。

僕の目の前をドラゴンの鋭い爪が空を切った。

空を切った爪は、地面に大きな切りこみを作った。

地面のタイルが豆腐の様にサックリと切れていた。


「ホマレハ、ワタシヲシッテシマッタ。シヌシカナイ」

「なんで僕なんだ?」

「シネ……ホマレ……」

ヤトノカミは、僕を明らかに狙っていた。

爪を僕に突き出してきた、僕は体を後ろに引っ張った。

そのままあおむけに倒れて爪をよけていた。だけどヤトノカミは僕の背中に立っていた。


「オマエハ……キライ……ダ」

「なんだよ、それ……僕はなんで……」

僕にはドラゴンに恨みを買う理由が分からなかった。

それでもヤトノカミは、僕に頭を向けていた。完全に僕を狙っては襲ってきたドラゴン。

偶然ではない、必然だった。だから僕の顔に焦りがあった。


(ダメだ!)

最悪の事態を予測してしまった僕は諦めた。

ヤトノカミが口に真っ黒な炎を蓄えた。ブレスだ、黒い炎が見えた。

逃げ惑う人は僕を避けるように離れていく。周りの人間はそんな僕を誰も助けてはくれない。


「ホマレハ……シヌ」

だけどそんな時だった。

ヤトノカミが、何かにはじかれていた。


「野高谷を助けるぞ」

「えっ?」

あおむけに倒れた僕は、上を見上げた。

その声は、どこかで聞いたことのある凛とした声。

僕の背中にはヤトノカミに立ちふさがる愛子がいた。


「ダメ……」

僕はそれでも叫ぼうとしたが、愛子の姿を見て驚いていた。

愛子には尻尾が生えていて、翼があって、青い鱗に包まれていた。

そのドラゴンを一度だけ似たようなものを見たことがあった。


「あのドラゴンって……」

そして、愛子も口からブレスを吐いた。

ヤトノカミのブレスを相殺するような熱量を僕ははっきりと感じていた。


「私を見るな!」

そう言いながら愛子は僕をものすごい目つきで睨んでいた。

そう、愛子もまたドラゴンの姿をしていたのだから。


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