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あれから二日が過ぎた、今は土曜日の夜。
相変わらずの自分の部屋でパジャマを着てパソコンに向かっていた僕。
ここ二日間はずっとパソコンであるものを調べていた。それは『ヤトノカミ』。
『ヤトノカミ』とは日本伝承の蛇神、ヘビのような頭の神様でその土地の守り神としてあがめられた。
土地を守護する蛇の神が、なぜドラゴンの名前なのかは不明だ。
(いったいこのドラゴンは、何がしたいんだろう?)
いきなり現れたヤトノカミの目的を、僕は分からない。
だけど銀波会計がアジ・ダハーカだということを僕は知ってしまったから。
そこには不安と恐怖と、なにより強い哀れみがあった。
ボスドラゴンも、人間だということを知った。
もし救える方法があるなら救いたい。
結局『真ドラプラ』は、ドラゴンと戦うゲームという表向きと違って人対人の殺し合いでしかない。
(みんなは、なんで戦うことを疑わないんだろう)
真剣な目の僕は、自分の部屋でパソコン画面からヒントを探していた。
ぼんやりとみていた僕はまた見つけた、通り魔……か。
パソコンに相変わらず書かれた通り魔予告がにぎわしていた。
通り魔とドラゴンである人間、この二つはつながっている気がしてならなかった。
(今度も……豊洲か)
あまりいい気はしない、前回同様にドラゴンが出てくるかもしれない。
あくまで通り魔予告で、ドラゴンが出て来るとは限らないが。
「お兄様、おられますの?」
そんなしおらしい声が背後から聞こえた。僕は聞こえた一声でいろんなことを察した。
「なんだ、お前か」
僕の後ろにはパジャマ姿の妹がいた。
白と水色のパジャマを着て、毛布を持っていた。
ショートカットで活発な普段の妹は、落ち着いた顔を見せていた。
シャンプーのいい香りもするし。何か僕を誘惑しているようにさえ思えた。
「お兄様、今日は寒いですわね。毛布をお持ちしましたわ」
「いや、むしろ今日は暑いぐらいだ。で、何の用だ?」
「まあ、お兄様に頼むことなど……」
「頼みごとがあるから、そんな話し方をするんだろ。くだらない演技をするな」
「バレたか」
舌をペロッと出して、すぐさま僕の方に走ってきた。
そのまま背中から僕の背中に椅子ごと抱きついてきた。
全くもって色気のない妹に、僕は呆れてきた。
「兄ちゃん、明後日暇?」
「明後日、日曜か……面倒なことを頼むんだろ」
「面倒じゃないよ、ただ並ぶだけ」
「もしかして、早朝から行くのか?」
「いいじゃん、いいじゃん。夜は美容の大敵、お肌にはペプチドが……んなのはどうでもいい。
明日これ買ってきて、お願いできる?」
そう言って見せてきた毛布に隠れて持ってきたチラシは、『男子高校生の楽園』と書かれていた。
要はBLゲームの発売日ということらしい。
嬉しそうな妹は、すでにいつも通りの話し方に戻っていた。
しおらしい妹モードは、一分ももたないらしい。
「お前、行けばいいだろ。朝十時だっけ?」
「だけど数量限定だから朝早くいかないと。秋葉原の『ソルティック』で先行発売なのよ」
「うえっ、マジ?」
「マジマジ。それに明日はあたし、行く場所があるから」
「どこに?」
「豊洲ショッピングセンター、第三モール会場」
それを聞いて単純に驚いていた。
そこって、少し前に通り魔ドラゴンが出た場所と近かったから。
「大体、この前ドラゴンが出たんだろ。危ないぞ」
「そう、ドラゴンが出たのよ。なんでこないだ急に出るのよ!」
不機嫌そうな顔の妹は、口をとがらせていた。
「ドラゴンは天災だからな」
「それでも、『吹奏楽の王子様7』の声優握手会があるのになんでよ!」
おそらく『吹奏楽の王子様7』もBLゲームの一つらしい。
男にフラれたときに、ナツ自体もこのゲームにはまっていた。あれは4か5だったと思う。
「お前は相変わらず好きだな……BL」
「もちろん、じゃあ日曜買ってきてね。お金を置いておくから」
最後に乱暴にお金を置いて、妹は去っていった。
僕はネットですぐに『ソルティック』の場所を開いた。
(しょうがない……行くか)
そんな僕は妹のお使いを頼まれることにした。
つくづく僕は損な性格だと、自分は思っていた。




