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誤解を解いた後は、生徒会がいつも通り続いていた。
生徒会室には続々とクラスの役員が集まっていた。
さっき誤解を解いた落ち着いた顔の会長は、ホワイトボードに向き合いながら話をしていた。
二年で一番成績優秀な副会長の結衣は会長の隣だ。
「えー次の議題は、体力測定会についてです」
生徒会室は、中央にいくつもの机を並べて議場が出来上がっていた。
一般である僕はいつも通り生真面目に参加していた。
各学年十二組いるクラスの代表が二名ずつ出ていたが、空席もいくつかあった。
そんな中で、中央で話をしていたのが生徒会長。
ブレザーを着て、長髪の生徒会長は周りを見ながらゆっくり話していた。
彼の名は『金森 神井』三年。有明高の理事長の息子でもある生徒会長だ。
「今年は、新しい体育館もできたということで体力測定会の会場が増えます。
グラウンド、体育館、第二体育館、第三体育館、室内プール、武道場。
この六か所が候補になっている。いかがかな?」
「異存はありません」
そう言って金森生徒会長の二つ隣にいる眼鏡で、猫背の女が言ってきた。
彼女の名は『銀波 六花』二年。某有名銀行の頭取の娘で、会計をしていた。
「今回は一日で終わらせろよ。チンタラしているのはショウにあわん」
けだるそうに言う大きな男。この生徒会でも一番大きな男だ。
銀波会計の隣にいて、あくびしていた男は結衣と同じ副会長。
彼の名は、『銅林 順平』二年。やはり有名建築会社の息子だ。
「すばらしき あくびするかな どうばやし」
なぜか短歌を読み上げた男は、結衣の隣にいた狐のような顔の男。
目が細く、痩せていたけど座高が一番高い彼の前には書記の肩書。
彼の名は『銭戸 星影夢』一年、可哀そうな名前の書記だ。
彼の家は、有名チェーン店ゼニトグループの経営者一族の子供。
それと金森会長の左隣にいる副会長の結衣、この五人は有明高校の生徒会幹部たち。
この五人がほとんど決めて、クラスごとに出ている役員が賛同し行動する仕組み。
それ故に生徒会役員の欠席が多い。あまり声が届かない組織はそういうものだ。
「さて、それで班分けだけどクラスごとがいいかな?」
金森会長が周りを見回して言ってきた。
「クラスごとでいいと思います」
「測定会の機器は増設するのですか?」
同意した結衣副会長と、質問をしてきた銀波会計。
「うん、握力計、背筋測定器、前屈測定器を購入する予定になっている。
これに関しては学校の方で購入が決まっていて、生徒会費は出さない」
「そうですか」
銀波会計はそばにあった電卓をたたいていた。
「測定員 生徒会では 出すのかな?」と短歌調で言ってきた銭戸書記。
「今回もそうなるだろう。教師陣はこの日は、研修とかで大半いないから」
「左様かな 了解したぞ 会長殿」と銭戸書記は議事録を書いていた。
「大体、体育測定会を生徒会に丸投げなんだよ、学校側は」
「それは面目ない」
クレームをつけた銅林副会長に、理事長の息子でもある金森会長が謝っていた。
「生徒会は便利屋集団じゃないっつうの!」
「言っていることはよくわかります。ですが今回は学校のために協力をお願いします」
「ふん!」などと銅林副会長は腕を組んで不満げだ。
(相変わらずクレーマーだな)と、一連の流れを見ていた僕のスマホが急に揺れた。
机の下から晴海のスマホを覗き込むと、メールが来ていた。
差出人は……金森会長の隣に座る結衣だ。
『誉、いきなりだけど今日は宿題を出すわ』
結衣は会長の隣でメールを打っていた。
一瞬目を疑ったが、何食わぬ顔で会議には参加していた副会長結衣。
『宿題?』メールを何とか打ち返すと、すぐに結衣がメールを返す。
『誉は『真ドラプラ』のことを知らないといけないわ。
『ストーリーモード』で『5・5ドラゴン』のストーリーを進めなさい』
メールがそう書かれていて、僕は一瞬首をひねった。
すると、金森会長が僕を指さした。
「どうしました?野高谷君?よそ見でもして、蓼沼さんかな?」
「えっ……あっ、すいません」
僕はなぜか顔を赤くした。
金森会長の隣の結衣はそっぽを向いて、不機嫌な顔を見せていた。
いつの間にか彼女の机の下にはスマホが消えていた。




