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ゲーム画面・・・『ドラゴンモード』豊洲エリア・豊洲ショッピングセンター
コンビニでドラゴン警報を受けて、一か月ぶりに僕は『ドラゴンモード』に入った。
ハルヒメで戦うのは久しぶりだ。と言ってもいつもストーリーモードでレベル上げしていたけど。
隣の弘明もまた、K・シューターとしてドラゴンプラネットに参加した。
場所は豊洲エリア。背景に豊洲の巨大ショッピングセンターが見えた。
ドラゴンプラネットにはすでに先客がいた、結衣のヴァルキリアだ。
なんだかうれしそうに腕を回していた。
「久しぶりの戦闘よ、腕が鳴るわ」
「相変わらずノーキンぶりを披露しているな。ヴァルキリアは」
「なによ!K・シューターだって狙撃しか能がないくせに」
ヴァルキリアとK・シューターのいつもの会話。
そんな僕達の前にはやはりドラゴンがいた。
名前は『ヤトノカミ』。
レベル???のドラゴンが、画面左奥から画面右奥に移動していた。
だけど、こっちに向かってくる様子はない。戦う意志もないみたいだ。
「あれね……へんなのよ」
「でも襲ってくる気配がないな」
「なんか知らねえがとにかく攻撃加えるぞ」
K・シューターは射撃モーションに入った。
不思議な動きをする僕はじっと敵を見ていた。
まるで逃げているかのようなその動きは、ドラゴンは背景に溶け込んでいるかのようだった。
なんというか存在感がない。いや消しているようにさえ見えた。
「何よ、逃げる気?」
「待って!様子がおかしい」
「罠だっていうんでしょ、ハルヒメ!」
僕の制止に、ヴァルキリアは動くのをやめた。
「でも、あたしは決まっているわ。潰しに行くに決まっているじゃない!」
「さすがはノーキン。でも俺も同感」
K・シューターは銃を構えていた。
結衣のヴァルキリアは、まっすぐヤトノカミに向かっていく。
このゲームは負けると死ぬ。
だけどドラゴンが襲ってこないのならば、戦う意味がない。
ヤトノカミは、戦意を見せずに画面端に逃げて行こうとしているだけに見えたから。
それにしても動きも意外と速かった。
「クソっ、タゲれない!ヴァルキリア、ハルヒメ!」
「何よ」反応したのはヴァルキリア。
「二人で回れるか?」
「回れないことはないけど……襲ってこないなら」
「行くわよ、追い詰めましょ。ハルヒメ!」
やる気のヴァルキリアに、僕はあまり気が進まなかった。
それでも、ドラゴンに接触しない限りダメージを与えることはできない。
渋々ながらで僕はハルヒメを動かすことにした。
「これってボスドラゴンだろ。レベルが分からないし」
「そう、でも倒さないといけない。相手はドラゴンだから」
「だって、負けたら死ぬんだろ!」
「そうよ……でもドラゴンを生かしたらリアルであたしたちは殺されるかもしれない。
だったら戦って、勝って、生きることを選ぶわ」
ヴァルキリアは昔の勇者のような考え方だった。
正義の味方、ヒーロー像をゲームに求めることもある。
それが、ゲーム内の主人公や勇者ではなく自分であるとしたら。
僕はそれが嫌でたまらなかった。
ヒーローになるより、僕はきっと凡人の道を選ぶ。
偽善で世界を救えるなら、今の世の中は天災ドラゴンが出回ったりしない。
「晴ねえの時は……それを感じて怖かった。不安だった」
「結衣……」
ヤトノカミを追いかけながら、ヴァルキリアは話していた。
結衣はどこかでこのゲームをしていて、どんな顔をしているのだろうか。
弘明が好きな結衣は、ヴァルキリアになってヤトノカミを淡々と追いかけていく。
「だけど、やっぱりみんなと繋がっているのが嬉しいのよ」
「結衣……」
僕とヴァルキリアが、ヤトノカミを追いかけたそんな時だった。
上の画面端に来ていたヤトノカミは、急に立ち止まった。
「観念したようね」
だけどヴァルキリアが、追いかけて行こうとするがヤトノカミが次の瞬間いなくなった。
「消えた……」
「逃げたのよ!」
ヴァルキリアが言った通り、ヤトノカミはそのあと出てこなくなった。
間もなくして、スマホ内のドラゴン警報は解除されたのだ。




