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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
七話:小さな恋の話
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ゲーム画面・・・『チャットモード』・たまだんルーム


僕はメールに誘われるように、ドラゴンプラネットに入った。

アドレスに書かれたチャットルームへ、パスワードを入力して入室した。

ハルヒメになった僕を待っていたのは、K・シューターとナツナイト。

いつも居座っている結衣のヴァルキリアは、珍しいことに今日はいなかった。


「ハルヒメ、今日は学校遅れるみたいだな」最初に会話してきたのはK・シューター。

「そうだな、通り魔の影響らしい。ナツのところは大丈夫か?豊洲だろ」

「うん、すでに学校は時間をずらしているって。大丈夫だよ」


ナツナイトは気丈に振る舞っていた。

何を隠そう棗や太の通っている学校こそ、通り魔の予告事件が多い豊洲にあった。

最近ネットで噂が出ることで、棗達は苦労していた。

豊洲が通り魔予告になるたびに、振り回されているのは一般市民。

一人の身勝手な行動は周りに被害を及ぼす。


「豊洲って通り魔がそんなに多いの?」

「うん」K・シューターの言葉に、ナツはすぐ返事した。

「でもただのイタズラだから……」


今の棗には昔にあった小動物的雰囲気がなくなっていた。

『たまだん』にいた頃は、もう少しおどおどしていた棗。

強くなって成長していた棗を、僕は単純に羨ましかった。

きっと『真ドラプラ』の環境が影響しているに違いない。


「イタズラねえ、まあわからなくもないな」

「弘明……それでも立派な犯罪だぞ」

「分かっているって、でもきっと犯人は目立ちたがり屋なんだろ。

そういう奴は、寂しいリアルを送っているに違いない」

「まあ、臆病者って点はあっているかも」

僕と弘明の意見や見識が珍しく合った。

ナツナイトはそれを聞いて、なにかぼーっとしていた。


「どうした、ナツ?」

「ううん、太ももうすぐいなくなるから」

「太がいない?」

「三年生が修学旅行だから、明日からいないんだ。

今日は朝から買い物に……行っているの。忙しいみたい」

ナツナイトから寂しそうな口調が聞こえそうな言葉だ。


「福岡に修学旅行か。高校最後だって」

「へえ、福岡って九州だよな」

「うん、一週間だって」

「お土産楽しみだな、俺たちの学校ってどこに行くんだ?」

「えと……二年は大阪じゃなかった?」


急にリアルの話になって、僕たちは改めて学生であることを思い出した。

それは僕にとっては、もう一つのリアル。

ゲームでドラゴンと戦うだけがリアルではない、学生というリアルもあった。

学校に行って、友達と話して、恋人を作って。青春して、部活して、バイトして、僕たちの学生というリアル。

そのリアルがあるからこそ、僕はヒドイゲームの中でも人間を保っていられるのだろうか。


「その前に期末、そろそろだよな」

K・シューターの何気ない言葉に、僕は嫌なことを思い出してしまった。

リアルでカレンダーを見ると、七月の頭に期末がある。勉強は普通にやっているけど。


「誉はいいよな、そんなに苦手な教科もないし」

「弘明は苦手あるんだっけ?」

「そりゃあ、あるさ。日本史と世界史以外全部だ」

「えっ」苦笑するしかなかった。

K・シューターの弘明が、あまり変わっていなかったのでちょっとだけうれしかった。


昔から弘明って中学の時は国語と数学、英語が学年最低点を記録していた。

日本史と世界史が得意なのはゲームで『○国無双』が好きだから。

逆にクラスメイトで成績優秀な結衣に、補習を手伝ってもらったぐらいだ。

こうしてみると、弘明の方がノーキンだといえるが、本人には黙っておこう。


「弘明、大丈夫か?」

「大丈夫、俺はできる男だ」

「随分ポジティブだな」

「……試験もゲームと同じ、出たとこ勝負だ」

弘明であるK・シューターの根拠がない高笑いに、ハルヒメの僕は呆れるしかない。

それを相変わらず無言で見つめているナツナイト。


「でもやっぱり、通り魔だよな。全部アイツのせいだよ」

「弘明……逃げたな」

「通り魔が出るから、試験無くなんないかな?」

「無くならないよ、というより都合がよすぎだよ。

仮に通り魔が出ても、夏休みに授業を延長するんじゃないかな?」

「ちぇっ」

がっかりしたK・シューター。でも僕はずっと気になっていた。

浮かない顔のナツナイト、離席はしていないようだけどなんだか気になった。


喋ろうとしてなかなか言えないのがナツナイト、だけどしゃべろうとさえしていなかったから。

何かを考えて悩んでいるように見えたナツナイト。


だからナツに対して直接メッセージを、あえて僕は送った。

『ナツ、どうしたの。すごく疲れているみたいだけど?

僕でよければ相談に乗るよ、また昔みたいに困ったことがあったらメール送って』

それは何気ない小さな気遣いだった。

でもそれが後に大きな問題になるとは、その時の僕は知らなかった。


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