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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
七話:小さな恋の話
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今年は梅雨らしくない、晴れた日が続く六月。

雨が降らないのはドラゴンのせいだと、ニュースのコメンテーターが適当なことを言っていたっけ。

朝のリビングでテレビがついていた。


やっていたのはニュースで、その音声が聞こえた。

二階から降りた僕はまだ眠かった。朝は弱い。

半そでのブレザーに着替えた僕は、目をこすりながらリビングを見た。


「おはよう、誉」

母さんの軽快な声が台所から聞こえた。

エプロン姿の母親は、包丁で野菜を切っていた。

焼けたトーストの匂いと、香ばしいバターの香りが日常的な朝を実感させた。


さっき見たのは夢だった、最近よく見るようになった悪夢。

意味がよくわからない夢を見るのが増えた。


銀波会計と、金森生徒会長が亡くなって一か月以上が流れていた。

銀波会計(アジ・ダハーカ)の死後、結衣たちの噂が少しずつ収まっていった。

それはニーズヘッグだった銀波会計の若い執事が、自殺していたことだ。

ニュース画面に出てきたときにはさすがに驚いたが。

彼は罪を抱えていた。それはネットゲーム内のお金を不正操作していた書類が出てきたからだ。

警察が容疑者として捜査している矢先に、彼は銀波会計の自宅で首をつっていたのだ。


それにより、リアルバレした結衣や弘明の情報閲覧が禁止された。

規制がかかったことにより結衣や弘明のストーカー被害は徐々に収まっていく。

たまに結衣や棗にはストーカー被害はあるものの、リアルバレ問題は収束に向かっていた。


その間に季節は梅雨を通り越してすっかり夏になっていた。

気温は朝でも二十五度を超えていた蒸し暑さ。

半そでのシャツにズボンに着替えていた僕は、食パンを食べていた。

そんな僕を見ている視線を感じた。


「兄ちゃん、もしかして寝ぼけている」

「うるさいなぁ」

「シャツ裏」

指摘されて僕は慌てて裏に着ていたシャツを着ていたのを直した。

ショートカットでやや幼さの残る顔の妹は、やはり白いシャツを着ていた。

有明高の制服より、少し薄い青のスカートを着て僕のそばで黙々とトーストを食べていた。


妹が通っているのは有明高の付属中学。制服が似ているのは当然だ。

しいて言えば色が全体的に淡い水色といったところか。

そんな僕と妹の間に、テレビのニュースが続いていた。

いかにも頭のよさそうなアナウンサーが、原稿を読んでいた。


「東京都、豊洲ショッピングセンターに通り魔予告があったと、関係者の調べで分かりました。

予告があったのは昨日深夜二時過ぎ。インターネット上で数十件もの通り魔を書き込みがありました。

警察では最近頻発する通り魔の書きこみの愉快犯対策に追われています。

書きこんだ人物の特定を急ぎ、威力業務妨害違反として立件する方針です」

淡々と語るアナウンサーに、トーストを口に加えながら見ていた妹。


「あれ?また事件?」

「最近多いのよ、ニセ通り魔。かわいい美少女が襲われちゃうかもよ」

「かわいいって、お前はそんなにかわいくないだろ。ブザーだって持っているし」

「ブザーは常識よ」

不満げに妹はトーストを食べ終えた。


アジ・ダハーカの一件以降、一か月ほどドラゴンは姿を現していない。

なので最近のテレビのニュースは、別のニュースが話題に上がっていた。


それは、ネットでほぼ毎日のように書かれた『通り魔事件の予告』。

リアルに書かれていて、時間や場所も一致している。

予告であっても、その一つが事件にはなっていないのだが。

だけどネタが少ないニュース番組は、それを面白そうにネタにしていた。

それにこの件は厄介なことを含んでいたし。


「でも、これだってどうせネタ予告だろ」

「そうね、ニュースも本当にやることがないのね」

「ああ、豊洲だから結構近いけどな」


豊洲にある大型ショッピングセンター内で、通り魔殺人をする予告。

直線距離として、この家から五キロも離れていない。

それだけに他人事とも思えない。知り合いも豊洲の学校に通っているし。


「まあ、あたしには関係ないけど」

「あれ?メールか……マジ?」

「あたしもメール」

妹も僕と同じメールが来ていた。それはどっちも学校から。


「母さん、学校が登校時間を遅らせるって」

僕は台所にいる母親に、メールの内容を言っていた。

妹もやはり同じですぐに、メールの内容を報告した。

厄介なことは学校やイベントの中止が増えた事。

近隣の学校としてはニュースになる愉快犯だけど、安全を考えては警戒するしかない。

主催者や校長などはそれによって中止したり、見送ったり、順延したりと対応しないといけない。

仮に、問題が起きてしまっては責任問題に発展する大人の事情だ。


「やった、これでゲーム……できる!」

「嬉しそうだな、お前」

「いいじゃない、新しいゲーム買ったんだから!

昨日、秋葉原にわざわざ行って並んできたのよ!」

無邪気にうれしそうな顔で妹が言うと、僕は再びスマホを見ていた。


スマホには、僕宛てにメールが届いていた。

それを見て僕はすぐに行動に移していた。


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