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ドラゴンプラネット  作者: 葉月 優奈
六話:お金で買えないモノ
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あのブレスの一撃で、戦況が再び変わっていた。

減っていた体力が一気に半分近くまで回復していた、アジ・ダハーカ。


そのまま僕のハルヒメに、まっすぐに向かっきた漆黒のドラゴン。

だけど、間一髪で割り込んだナツナイト。

アジ・ダハーカの攻撃は、僕の前で止まった。

素早く入り込んで、ナツナイトが攻撃を加えるとアジ・ダハーカが攻撃相手を変えた。


だけどナツナイトの体力もかなり減っていた。

体力ゲージは残り5%にも満たない。

下手をすれば固いナツナイトも二、三発で死んでしまう。


「ナツ?どうして?」

「私はハルヒメを守る、私は昔より強くなったから」

「でも……」

「ハルヒメに何度と助けてもらった、今度は私が助ける番」


瀕死のナツナイトは、それでも金ぴかの鎧でおののく僕のハルヒメを守ってくれた。

薬を飲みながら、必死に体力を維持していた。

だけどアジ・ダハーカの攻撃は容赦なく続く。


次の瞬間、アジ・ダハーカが後ろを振り向いた。

「僕に任せてください」

そう言いながら背後から攻撃したのはジャイアント・キリングだ。

ナツナイトの攻撃力の低さで、すぐにアジ・ダハーカを振り向かせていた。

攻撃力の相性は悪いものの体力がほとんど減っていないジャイアント・キリングは壁となった。


「助かりましたよ『ガーディアン』」

「なんとか、間に合いましたよ!」

「さすがナツね、見事よ」

ヴァルキリア、ジャイアント・キリングがナツナイトを称賛していた。

離れたナツナイトは薬で回復を続けていた。

再びK・シューターが攻撃を加えていた。


だけど僕はそれがなんなのか分からない。

分からないけれど僕に近づこうとするアジ・ダハーカの進撃を防ぐジャイアント・キリングが戦っていた。


「『ガーディアン』?」

「そう、ナツナイトは見事だ。あの必殺技はあまりにもリスキーだ」


ブレスを吐かれた瞬間、ナツナイトは必殺技を使っていた。

それはパーティが受けるダメージを身代りする技『ガーディアン』。

必殺技に対抗して、ダメージを自分に集中させる技。

この必殺技だと、防御力やブレス耐性が一時的に強化されてダメージも抑えられる。


だけど一歩間違えれば、自分が死んでしまう技らしい。

それをナツナイトは使った、使ってナツナイトは体力が5%にも満たない。

でもパーティメンバーはダメージをあまり受けない。

「あれを直撃していたら間違いなくハルヒメは死んでいたからな」

「ほんとに?」

「攻撃力とブレスのダメージはある程度直結しているからな。

このクラスだと、ハルヒメは自分にブレス防御スキルを使っていたしな」

K・シューターは、冷静に分析していた。

だけどスキルは使えない、封じられていた……いや使えないエリアに変わっていたから。

再びナツナイトはアジ・ダハーカに攻撃を仕掛ける。

盾として戦い続けていた。


「でも僕はハルヒメ、晴ねえじゃ……」

「誉さんは仲間です、だから私が守るんです」

そう言いながら薬を飲みながら、ナツナイトが半分の体力ゲージを維持していた。

アジ・ダハーカの強い攻撃は、ナツナイトの体力をどんどん奪っていく。


薬での回復はやはり少ない。

スキルより回復は早いけど、そもそも他人に使うことはできない。


「それにしてもあいつ、なんで体力ゲージが回復しているんだ?」悪態つくK・シューター。

「分かんないわよ、それになんか堅くなっていない?」

「堅いってK・シューター言っていなかった?」

「むうっ、知らないわよ!」

ヴァルキリアは、つっこまれて不機嫌に言っていた。

だけどすぐにジャイアント・キリングが向かっていく。


「無駄に近づくな、今はナツに任せろ!」

「おうっ!」

回復薬を飲みながら、ジャイアント・キリングは立ち止まった。

少し前にはアジ・ダハーカが、ナツナイトに阻まれながら僕たちを見ていた。

ナツナイトがぎりぎりの戦いをしていた。


彼女が破られれば、一目散に僕に襲い掛かってくるだろう。

それにしてもなぜ僕を襲ってくるんだろうか、アジ・ダハーカは。

スキルが使えない神官は役に立たないはずなのに。


(そういえば、『戦争は情報戦だ。相手の情報をいかに知っているかが、勝敗を分ける」

前の戦いでアジ・ダハーカが言っていた。

もし僕を、スキルが使えないハルヒメを狙う理由があるのならば……)


ナツナイトを避けようとする、アジ・ダハーカ。

それをナツナイトが盾の役目でしっかりガード。

アジ・ダハーカはナツナイトを攻撃するしかない。


(じゃあ何かあるはずだ……僕には、ハルヒメには。

アジ・ダハーカが僕を無意識に狙うならば、きっとハルヒメには何か特殊な力があるんだ)

そう思った瞬間、ふとハルヒメのステータスを見ていた。


「手を止めるな」

「もっと僕がちゃんと役に立っていれば……」

「なら、攻撃しろ」

K・シューターは前を向いて攻撃していた。

それでもアジ・ダハーカはK・シューターに向かうことはない。

そんな中、僕はステータス画面で一個の結論に達した。


「これだ!」

「どうしました?」僕に声をかけてきたのがジャイアント・キリング。

「僕の必殺技は……もうちょいか」

「それより、必殺技ゲージのたまりが速い」

ナツナイトが悲壮な声で叫んだ。


「そうだな、またさっきの必殺技が来たら……」

みんなの中に恐怖があった、僕はそれでも覚悟できていた。

恐怖は大きな声、叫びとなって混乱を生む。

ましてや命がかかった戦い、逃げることもできない戦い。


「何しているのよ?これじゃあ必殺技が全然たまんないんじゃない」

「ヴァルキリア……ノーキン。そんなことよりハルヒメ」

「ん?」遠隔攻撃をしながら僕はアジ・ダハーカを狙っていた。

「ハルヒメは攻撃を止めよう。ダメージはないし、鈍足になりにくいし。

おまけに相手の必殺技ゲージが溜まる、いいことはない……」

「僕は戦うよ!」

そういいながら弓を引いた。必殺技ゲージは95%以上たまっていた。

攻撃が当たれば一回の攻撃で5%以上たまる。


「なんでだよ?」

「もう少しで必殺技ゲージがたまるから」

「馬鹿、相手も必殺技がたまることもあるんだぞ!」


攻撃を受ける、攻撃を与えることで必殺技ゲージが溜まる仕組みだ。

当然僕のダメージの少ない攻撃でも、相手の必殺技が溜まることもある。

だからK・シューターが僕を制しようとした。


「でもK・シューターは、この状況を変える方法があるのか?」

「ううっ、それは……」

僕はK・シューターの痛いところをついた。

このままでは負ける、負けなくても犠牲が出る。

それにアジ・ダハーカがいつも僕を狙ってくる。攻撃が無くなれば、僕に向かってくるのは変だ。

上手く説明できないけれど、僕の必殺技ならばそれも可能かもしれない。

ただし使えるかどうか分からないけれど。


「弘明、誉にかけてみない?」賛同したのはヴァルキリアだ。

「うん、ボクもそう思うよ」ジャイアント・キリングもヴァルキリアも僕に同調した。

K・シューターはそれから無言になっていた。

僕は彼なりの賛同が得られらと思った。


そして、間もなく必殺技ゲージがたまった。

「誉、何をするの?」

「僕は間違っていたんだ……始めから。

必殺技は使えないと思っていたんだ。でも……」

「どういうこと?」

「僕にはこの力がある『完全解除パーフェクトキャンセル』!」

それは僕の必殺技だった。相手は強くなったんじゃない。


相手の体力を見て、僕は気になった。増え方がおかしかったんだ。

それとみんなが言う固くなったようにも見えた。

それは相対的に体力が増えたから、ダメージが減ったように見えた。

でも違う、強化によって体力の最大値が上がっていたんだ。

アジ・ダハーカが使ったあの必殺技は、回復技ではなかったから。


そして、それは僕の思惑通りだった。

アジ・ダハーカはこの必殺技を受けて、体力の最大値が減っていく。

あっという間に体力ゲージも減ってゼロになった。


「そうか……見破られたか……」

彼女の初めての声が、聞こえた。それは銀波会計の声だった。

それが最後のセリフになった。


倒れたアジ・ダハーカを見て、僕はゲーム内での自分の判断が正しいと分かった。

そう、僕たちは勝ったんだ。

だけど、それは勝者の歓喜はない。僕はリアルの判断が間違っていた。

僕たちは一人の少女の命を奪ったのだから。


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