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――そこは、夜の廊下が見えた。
始めから視界がくっきりと見えていた。この視界は眼鏡をかけているようだ。
病院のような暗い廊下が見えて月光が照らす中を歩いていく。
まっすぐ進んで行って開いたのが非常口。
非常口を出て非常階段を下りていくと、そこは夜の校庭だ。
だけどそこは有明高校の校舎ではないことが分かった。
有明高校の校舎は、校庭の先に体育館がないから。
月明かりが雲にかかっていて外もかなり真っ暗だ。
そのまま数歩歩くと、そこには大きく建っていた建物が見えた。
それにしても静かだ。
しんと静まり返った廊下は、足音しか聞こえない。
まるでホラー映画のような夜の学校は、何か出てきてもおかしくはない。
そんな視界は、ある建物の中へ入っていった。
建物の中で待っていた人物がいた。
それは、白いスーツを着た男。いつも出てくる若い男。
「初めまして、私はあなたの新しい執事『ニーズヘッグ』と言います。
あなたの欲望を叶えるために来ました」
そのあと、視点は執事ニーズヘッグにきれいな右手を差し出した。
「あなたはお金が好きですか?」
ニーズヘッグに言われ、視界はコクンと頷いた。
「あなたは力が必要です、一族で一番の力が必要ですよ。
そのために、あなたは手早くお金を手にしなければいけません」
若い男が何かを言うと、視点役の人物は何かを喋っているようだ。
だけど聞き取ることができない。
「そうです、あなたの夢は世界一のお金持ちになることです。
ですが、あなたの覇道を邪魔する者もまたいるのが事実。
このコインをあなたに一枚与えましょう。
このコインにあなたが願うだけで翌日には二倍に増えますよ、『お金が欲しい』と」
何度か頷いた執事は、満足そうに笑みを浮かべていた。
少し怪しさもあるけれど、目を細めて話していた。
「そしてこのコインの価値は絶対的です。
なにせどんな人間にも負けない力を手に入れるわけですから。
だから私は聡明なお嬢様に全てを賭けます。
このコインは、世界で一番お金を稼げますから」
執事は笑顔できれいに一礼した。そして丁寧にコインを一枚、視点役のお嬢様の掌に置いていった。
うけとった細くてきれいな手で見たコインは、女性の横顔があった。
「さて質問です。世界で一番お金が稼げるものは、なんだと思います?」
何秒か執事ニーズヘッグが待って、返事を待ってすぐに答えを言う。
「それは人の命に直接関わるものですよ、命も今はお金で買える時代なのです」
執事ニーズヘッグは目を開いて笑顔で答えていた――




